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昆虫の世界

 気がつくと、3人は見たことの無い森の中にいた。不思議な事にセミの鳴き声と鈴虫の鳴き声が聴こえる。空はシャボン玉のようにキラキラ輝いていた。太陽や月は無く、彼らの立っている地面には影は出来ていない「ここはどこだ」全員がそう思っていると、小さなこどもの形をした影が地面に映った。


 「やぁ、ボクはチーター。ちょっと遊ぼうよ」


 突然のことで流亜が小さな悲鳴を上げると「失礼だなぁ」と影は腕を組んで説明を始めた。ここは季節を問わず様々な虫が生息する〔昆虫の世界〕らしい。その中から、一匹しかいない大きなアゲハチョウを見つけて捕まえろというものだ。


 「まるで俺たち異世界に飛ばされたみたいだな」

 「ラノベみたいな世界だね。僕たち夢でも見てるのかな」

 「冗談はよしてよ」


 3人が立ち話をしていると、影は「ははっ」と笑って「頑張ってね」と言うと、スッと地面から消えていった。置いてけぼりになった彼らは、とにかくあたりを散策することにした。


 握りこぶしほどの大きさの蜘蛛が巣を張っていたり、青虫が葉っぱをちまちまかじっていたりしている。かとおもえばミツバチがブンブン音を鳴らしながら8の字を描いてダンスをしている。虫が苦手な流亜は、それらを見るたびに声を殺して気配を消していた。そこに一匹のカブトムシがやってきて、信平の頬にとまった「僕のこと気に入ったのかな」という彼に勇気は意地悪そうに「お前の顔の面積がでかいからじゃねぇの」と言った。その言葉に虫嫌いの流亜も思わず笑ってしまった。


 その時、森の木々を揺らす大きな音がした。そこから鮮やかな模様をしたキラキラ光るアゲハチョウが現れた。ちょうど155cmという小柄な流亜の背丈と同じぐらいの大きさである。小さくて動きの速い虫は気味が悪いが、大きくて煌びやかな模様の虫はこうも美しいものか。


 「あれがチーターって奴の言ってた虫だな。追いかけようぜ」

 「でもどうやって捕まえるのさ」

 「石でも投げたらどっかに落ちるだろ」

 

 勇気と信平がそう話していると再び地面に影が現れて「変わってないね」と溜息をつきながら首を横に振る。ちょっと馬鹿にされたように感じた勇気は少し機嫌が悪くなった。


 「昔、同じことをしたでしょ。大人になったんだからもうちょっと賢くなろうよ」


 影の腕が、ひときわ大きな花の方向へと伸びていく。そして「蝶のごはんは何」と問いかけた。それに全員が「あ」と声を漏らした。何も無理やり捕らえなくてもいい。蝶が餌を求めて止まる花をかごと考えればよいのだ。それで捕まえたことになる。3人は急いで花のほうへと走っていった。


 花の所へたどり着くと、予想通り大きなアゲハチョウが蜜を吸っていた。勇気が走り出そうとするのを流亜が止めて「ゆっくり近づかなきゃ」と楽しそうに言う「お前、虫嫌いじゃなかったっけ」勇気がそう言うと、彼女は「昔は触れたの。気がついたら苦手になってたわ。でも今は大丈夫」と答えた。信平は緊張したように二人に「どうする」と尋ねた。


 「三方向から同時にタッチしようぜ」

 「名付けて、トライアングルアゲハね」

 「二人ともノリノリだね……」


 信平が頭をかきながら、童心に帰った彼らを見やる。まるで少年と少女の目だ。それは目の前のアゲハチョウと同じぐらいキラキラしている。信平は「慎重にね」とだけ言って、作戦通りに動いた。


 3人が同時に花へ手をやると、アゲハチョウは金色の粉粒となって花へと吸収された。そして、そこからポップコーンのように大量の花びらと一つの丸い石が出てきたのである。形はタイプカプセルのものと同じであった。


 「また何か書いてあるわ。えーと……『で』」


 記されていたのはそれだけだった。流亜はポケットに入れている石を取り出して、二人に「どういう意味かしら」と問いかける。


 「チーターより。で……わけわかんねぇな」

 「”出口”の頭文字かもしれないよ」


 悩んでいる3人のもとへ、また影が現れた。そして「はずれ」と言うと、虹色の空は深い青に染まり、森全体が水で満たされた。大量の花びらや木々、虫たちは魚や海草などになる。何故か3人はその中で自由に動けた。もちろん呼吸も出来ている。


 「さあ、今度は〔お魚の世界〕だよ」


 そう言うと、影は虹色のくらげの姿となって、彼らのもとから離れていった――

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