表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色透明  作者: 夜桜菫
Xデー篇
36/41

迷惑クラッシュ【蒼】

日本語と英語を繋ぎ合わせたタイトルっていいですね。


この話は4月10日の話です。

「おはよー」

 僕は若干大袈裟にドアを開けて言った。

「おはよ……」

 祐樹(ゆうき)君が返してくれた。昨日なんか会釈して終わっちゃったのに。

 なんだか嬉しいな。

「おはようございます、廣瀬(ひろせ)君」

 昨日の相澤(あいざわ)さんはどこ行ったんですか!ってくらいにはっきり聞こえた声だった。

「普通級にもう友達がいるなんてすごいです」

 紅音(あかね)のことか。

「あの子は幼馴染だよ」

「そうでしたか」

 ぶっきらぼうな喋り方をする人なんだな、と僕は思った。

 その時、チャイムが鳴った。



「おはよう!三人とも来てるー?別の人混ざってないー?」

「やだなぁ、先生。いるわけないじゃ……」

(あおい)、よく見て。教室の端にいるじゃない」

「あ」

 髪を金髪に染めた……上履きが青だからこの学年の生徒であろう少女が教室の隅に座り込んでいた。

「見つかっちゃったー」

「誰……あの人……?」

 祐樹君が蚊の鳴くような声で言う。

 見知らぬ人というのは変にストレスを与えるものなのかもしれない。

 確か三組にいたな。この鼻に抜けるような喋り方をするのは滝川(たきがわ)……何さんだっけ。

「うちのクラスの人だと思う」

「そうなんだ……」

 少し落ち着いたようだ。

「誰でもいいから早く出て」

「蒼君に会いに来たんだよー」

 するとドアがガタンと音を出した。

真利奈(まりな)、行くぞ。こんなとこにいたら俺らも病人になっちまうだろ」

 そう言われるのが、一番嫌い。

「……ふざけんな」

 自分でも驚くくらい低い声が出た。

「蒼、落ち着け」

 先生の声がする。

「病人になる前にこの金髪連れて出て行け」

「言われなくてもそうするし」

「っていうか亮太郎(りょうたろう)!病人って言葉は取り消して」

 滝川さんが言った。意外だった。

「違うのかよ」

「謝ってよ」

「悪かったな。これで満足か」

「本当なら土下座して欲しいけど長居する方が迷惑だし帰ろ」

 亮太郎と呼ばれた大男は、舌打ちして出て行った。

「あの人たちなんだろ……?」

 祐樹君が僕に聞いた。

「ゴミだよ」



「二度と来んな!」

 先生はそう言ってドアを力任せに閉めた。

 空気が悪い。頭から湯気が出るほど怒りを露わにした先生と、無口で俯いている相澤さんと、会話を聞き取れなかった祐樹君と。三人に挟まれている僕が雰囲気を明るくしなきゃ。

「なんの恨みがあってあんなこと言われなくちゃいけないんだろ……」

 相澤さんは泣き出してしまった。

 僕は彼女にハンカチを渡した。

「僕のでよければ使って」

「ありがと………」

 そうだ。雰囲気変えるんだった。

「先生!なんか決めることあるんでしょ。この時期って」

「そうだった。ごめん蒼。ありがと…」

「いいえ!」

「蒼君は凄いね……」

 隣で相澤さんが言う。凄いことじゃないよ。

「色眼鏡を使われるのが嫌いなだけ。バカにされるのが嫌なだけだよ。同じホモ・サピエンスなのに何が違うんだろうね」

 僕が言うと、相澤さんが笑った。

マリネは割といいやつ。



*彼に残された時間、あと101日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ