もう誰にも奪わせない【雪乃】
雪乃ちゃん視点は今回で終了。
「冷めたとかそういうわけじゃ……」
「そうですか」
「ちょっとした出来心で……」
先輩は目を泳がせた。嘘つきだなぁ。
「本当のことを話してください」
先輩は大きく溜息を吐いた。
「騙されてくれねーのな」
「どういう意味ですか、それ」
「ダチと彼女が何人できるか勝負してたんだよ。まあ、お前一人減ったところであと十八もいるし余裕で勝てるけど」
あぁ、そういうことか。
「そうでしたか」
「怒らねーの?」
「怒ってますよ。騙されてきた自分に腹が立ちます」
「……?」
「私は、全部妹に奪われてきました。私は自分から物を捨てたことはありませんが、初めて何かを捨てようって思えました」
「どういう意味だ……それ……?」
私は先輩の机の上のカッターを握った。
「さようなら、先輩」
ぐちゃぐちゃになった死体の隣で、私は泣いていた。
先輩の前では平静を装ったが本当に悲しかった。あんなに愛していたのに。冷めてしまった自分にも、最初から好きなんかじゃなかった先輩にもショックだった。
幸せだった日常を返してください、先輩。
私はその場で服を脱いでゴミ袋に詰めた。
先輩の服なんて穢らわしくて着られない。先輩のお母さんの服でも借りるとしよう。
私は先輩の家を出て、何食わぬ顔で自分の家まで帰った。
翌日、家に遊びに行った凛音が、先輩の死体を発見した。
若干トラウマにもなったようだ。しばらく妹は引きこもりがちになった。ざまぁみろとしか言いようがない。
まぁ、すぐ出てきた訳だが。
あれから二年。私は高校生になった。
私は社交的な性格じゃないために、友達を作ることができなかった。
そんな私に、彼女は声をかけてくれた。
「夏河さんだよね。よろしくね」
私の席の後ろに座る彼女は、仁科紅音と名乗った。
「よろしくね!紅音ちゃん!」
やっと、私にも、友達ができる。私もやっと幸せになれる。
彼女とはたくさん話をしたが、彼女には既に彼氏がいた。彼氏の存在を羨ましいとは思わなかった。私が欲しいのは彼氏じゃない。私物だ。
他愛もない話をたくさんした。その時間が私の全てだった。
わたしが飼育委員になってからというもの、彼女はよくウサギ小屋の掃除を手伝ってくれた。
彼女はウサギ好きでどのウサギも可愛がっていた。
彼氏君は名を蒼君と言って、紅音ちゃんとは幼馴染らしい。彼もウサギ好きらしく、雑種っぽいと嫌われていたモカを一番可愛がっていた。
普段は無愛想な紅音ちゃんだが、ウサギの前では心からの笑顔だった。
「可愛いなぁ……」
紅音ちゃんが虐めにあっていた。私は必死に考えた。どうやってこいつらを潰そうか。
ぐちゃぐちゃにしてやりたい。あの日の先輩みたいに。
彼女を傷つける奴は許さない。誹謗中傷は受け付けない。
蒼君は助けられずに亡くなってしまった。私がその思いを……引き継ぐのだ。
血に染まった腕を見ながら、私は思った。
「こんな汚い手で何を守れるの……?」
気付いた時にはもう遅かった。私が彼女に抱いたのは、友情なんで綺麗なものじゃなかったんだ。汚くて醜い……独占欲だった。
時間ぶっ飛んでない?!って方、大丈夫です。
これは回想なのでちゃんと次回から日付戻ります。
幼少期の子供の教育って大事ですよね。ちゃんと愛してあげないと作者や雪乃ちゃんのように腐ります。
紅音と蒼は例外です。あの二人はお互いを補い合う仲ですので、ちゃんといい子に育ちました。
時々私の年齢がよくわからないと友達に言われますが、大人になれない子供ですね。
愛する、を意味する言葉にはいろいろありますが、愛欲とか情欲とかは好きになれません。
私の愛し方は心酔、紅音は情愛、蒼は慈愛、雪乃は陶酔、そんな気がします
参考:http://hyogen.info/groupw/list/5475
みなさんはどれですか?