懐かしのウサギトーク
もふもふ回(仮)
目を覚ましたら枕が濡れていた。
でもどんな夢を見ていたかは覚えてない。でも懐かしい夢だった気がする。
早く起きよう。
担任から学校に来るよう催促の電話まで来てしまった。学校へ行かなきゃ。
『紅音……大丈夫?』
「え?なんで?」
『だって夢見ながら泣いてたよ?』
恥ずかしい。
「なんか懐かしい夢を見ただけだよ」
『それならいいんだけど……』
私は笑って部屋を出た。
支度は取り敢えず終え、学校に向かう。
『そういえばさ、ずっと思ってたことがあるんだ』
「え?何?」
何それ聞きたい。
『いや、あの……無理して答えなくてもいいんだけど……』
「早よ言え」
『三ヶ月間一度も名前呼んでくれなかったからどうしてかなぁ……って思って』
あぁ、それね。それは……
「トラウマなんだ。どうしても名前呼ぶたびに蘇ってきちゃって」
『そっか。嫌われたのかと思ってた』
「そんなわけないでしょ」
私から告白したんだから。
「まただってよ……」
「嫌だ……気持ち悪い……」
何だろう。みんな何を騒いでいるのだろうか。
マリネの母親が来た後しばらく不登校だったが、その間に何が起きたんだろうか。
『紅音、兎小屋の前で変死体が見つかったみたいだよ』
耳が早いな。
「気持ち悪っ」
兎小屋といえば、よく飼育委員の連中がサボるもんで、うちのクラスの飼育委員を二人で手伝ったなぁ。懐かしいなぁ。
もうすぐスキー教室だっていうのに面倒ごとが起きてしまってるわけか。
放課後。
「雪乃ちゃん!久しぶり!」
「あ、紅音ちゃん!」
クラスで唯一私と話してくれる女子。
「変死体だってね……大変だよね……」
「うん。私も怖いけどこの子達寂しいと死んじゃうんだって」
寂しくて死ぬ動物があるか!
『モカは元気かなぁ』
「モカは元気?」
「うん!モカはほんと元気だよ!」
モカは白地に茶色の斑点があり、名前を募集した時に「雑種っぽい」と忌み嫌われたウサギだ。蒼がよく可愛がっていた。
『モカー!久しぶり〜!』
蒼はモカの頭を撫でた。再会を喜んでいる。
「チョコはー?」
「チョコは子供産まれたばっかりでちょっと元気ないかなぁ」
「赤ちゃんの名前ってもう決まったの?」
「ううん。今募集中」
赤ちゃんの写真を見ると、お母さんそっくりの茶色のウサギだった。
「ココアとかいいんじゃない?」
「あ!いい名前!投票用紙に書いとく!」
よろしく。
「ソラは?」
ソラはモカのお父さんだ。真っ白の毛のウサギだ。モカのお母さんであるパールは今年の四月に死んでしまったらしい。
「あ……ソラは……死んじゃったんだ……」
寿命か……。時間って残酷だなぁ。
雪乃ちゃんが蒼の話題に触れないのは気を遣ってのことです。