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無色透明  作者: 夜桜菫
追憶篇
20/41

存在意義【蒼】

あの日あの時蒼は何を思っていたのか


みたいな煽り文書いてみたい

(あおい)!蒼!」

 お母さんかなぁ。まだ怒ってるだろうなぁ。

「お母さん……?」

 部屋から顔を出す。そこにいたのは……

「あっ……紅音(あかね)ちゃん……」

 この間無神経な事を言って嫌われちゃった紅音ちゃん。まだ怒ってるかな……。

 紅音ちゃんは暫く何かを考え込んで金属バットを握った。あ、やっぱり怒ってたんだ。金属バットを持ち上げようとしたが重くて持ち上がらないらしい。

「紅音ちゃん……?」

 何をするの……?それで……。

 この間無神経な事を言ったのはごめんなさい。知らないくせに知った口を聞いてごめんなさい。だから……だから……殴られるのは痛いから……それだけはやめて……。

「一緒に帰ろう、蒼」

 僕の家は此処だよ……。

「此処に居ても痛いだけだよ」

 紅音ちゃんが手を差しのべる。僕はその手を取ることも振り払うこともしなかった。

「僕が悪いんだ。僕がみんなと同じことできないから……僕も何かできればいいんだけど何もできなくて」

「蒼は私のお話聞いてくれる。お母さんのことも大事にしてる。蒼はみんなにできないことができてるんだよ!」

 そんな事を言ってくれる人は初めてだった。哀れむ人はいても認めてくれる人はいなかったから。

 紅音ちゃんは僕の手を取った。

「一緒にお出かけしよう」



「私のことは紅音って呼んで!」

 靴を履いていたら紅音ちゃんはそう言った。

「紅音………ちゃん」

 付けたくなる。いきなり呼び捨てなんてハードルが高い。

「ちゃんはだめ!」

「紅音…………」

「そうそう!」

 紅音は上機嫌だ。


 暫く歩いて行った先に銀杏の並木道があった。

 そこに入って紅音と話をしていたら眠くなってしまい、僕は紅音より先に寝てしまった。


 叩き起こされて手を引かれるまま僕は歩き出した。

「帰りたくない!」

 紅音の大声で目が覚めた。紅音はさらに強く手を引いた。僕は少しペースを上げて歩いた。

「紅音……大丈夫……?」

 涙目の紅音に僕は声をかけたが何も返ってこない。

「待ちなさい君たち!」

 さっきのおじさんが小走りで追いかけてくる。警察の人……?なんで……?

 そんな事を考えているうちに捕まってしまった。

「みんな心配するよ。お電話すればきてくれるから帰ろう」

 おじさんが半ば強引に僕の手を引いた。

「痛いもん!帰ったら痛いだけだもん!お父さんがあるんだもん!あんな家帰りたくない!ほんとなら私だって帰りたい!こんな寒いところいたくない!でも痛いんだもん……」

 紅音が泣き出してしまった。

「泣かないで……紅音……」

 拭くものがないため僕は自分の服の袖で紅音の涙を拭いた。

「わかったから……ね?おいで。帰ろう」

 紅音はおじさんを睨んで叫んだ。

「痛いのは嫌だ!」

 紅音は僕の手を引いて走り出す。

蒼君みたいな献身的な彼氏ってかっこいい!

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