可哀想な母親【蒼】
今回から蒼視点の話になります(`・ω・´)
「あの子可哀想にねぇ。やりたいこともいっぱいあるだろうに」
可哀想、って言われるのは嫌いだ。
僕は可哀想なんかじゃない。人よりできないことが多いは決して可哀想なんかじゃない。
可哀想、って思えるのは相手に対して優越感を感じているから。自分の方が優れている、って誰が決めたの?
「あんたなんて可哀想なんかじゃないわ!こんなガキの世話させられてる私の方が可哀想じゃない!」
お母さんはいつもそう言う。可哀想なのはお母さん?そうかもしれない。
通院の為に病院の近くに高級住宅街に引っ越した。隣の家は空き家。二軒隣には同い年の少女が住んでいた。名前は三日後に知ったのだが紅音ちゃん、と言っていた。
周りの人みんなから呪文のように「可哀想」と言われ続けた僕だったが、紅音ちゃんはそれを言わない人だった。自分のことを可哀想、とは言っていたが。
お母さんの為に何もできない自分が嫌いだった。生きてるからには誰かの力になりたい。
無力な僕は家の中じゃ嫌われ者で、よく遊びにきた親戚の菜美ちゃんはよく可愛がられていた。
お酒の入ったお母さんは親戚に菜美ちゃんと僕を交換してくれと頼んでいた。
父さんはストレスを溜め込むお母さんの為に僕を施設に預けることを考えていた。しかしそれはどこかの偉い人が良しとしないと入れることはできないらしく、父さんも腹を立てていた。
お母さんは何度も僕を殺す事を試したが、父さんは毎回止めていた。
「こんな奴のために手を汚すな」
通院初日。僕は六歳だった。
僕の余命宣告を受けた時、両親は嘘泣きしていたが、家では大笑いしてお酒を飲んでいた。
でもお母さんは笑っていなかった。
「あと十年もかかるのね」
「十年なんてあっという間だ。一緒に耐えよう、成美」
出てくるな、と言われて部屋に閉じこもっていた僕は、密かに喜んでいた。僕のことでお母さんが笑っている。幼い僕には、何を喜ばれているのかなんて理解できなかったんだ。
翌朝、僕は寝相が悪くベッドから落ちて立ち上がれなくなってしまった。ベッド脇で座り込んでいるとお母さんが入ってきた。
「早くしてよ!私だって自由時間が欲しいのよ!」
思いっきり引っ叩かれた。歩かなきゃ、と思うのだが膝が痛くて這っていくことしかできない。
「興味が引きたいの?ウザいんだけど」
そんなんじゃない。打ち所が悪くて痛いだけなんだ。
「あんただけ被害者ぶらないでよ!こっちが一番な被害者なのよ!」
だから違うって。ぶつけただけなんだって。なんとか膝に力が入るようになり立ち上がった。その瞬間に思いっきり頭を殴られた。
「十年なんて待てない!早く死ねよ!」
せっかく立てたのに。視界が歪んでしまい立つことはできるものの歩き出せなくなってしまった。
「なんで他の子と同じようにできないの!病気が何?少しは私の役に立ってよ!」
ごめんね。だから少し待ってよ。早くご飯食べるから。
「寿命が短いから何?!もっと短ければいいのに!早く死んでよ!お前なんか!」
そんなこと言わないでよ。
そんな思いも伝わらずに何度も何度も殴られた。暫く経つとお母さんは部屋を出て行った。その後家のドアが閉まる音もしたし家を出て行ったのだろう。
軽率に可哀想なんて言っちゃダメですよw
人の死を喜ぶなんて最低ですね