誰の幸せを願うのか
今日は3話更新なので次の話まで読めますよ。
この調子で毎日オールすれば間に合いそうです笑
長い長い校長の話を真面目に聞いていたのは蒼くらいだろう。
小学校の時は体調崩しやすかったために朝礼は全部欠席した上、卒業式も出席できていない蒼には校長の長い話は新鮮なのかもしれない。
「校長先生がすごく面白い話してたよ」
蒼は教室に到着するなり私に言った。
校長の話など全く聞いてなかった私はへぇ、とだけ返した。
担任から軽く話しがあり、今日は解散だ。
「ねぇ君名前聞いてもいい?」
また女子が話しかけてきた。
「廣瀬……です」
蒼、そういう時は下の名前も言うんだよ。
「廣瀬……何君?」
「蒼です」
蒼は「助けてー」と視線を向けてくるが私にはどうしようもないのだ。
「何組?」
「ええっと……三組です」
「私は四組の苗木真由美!よろしくね!」
「ヨロシクオネガイシマス……」
大丈夫か、蒼よ。
蒼の周りに人だかりができ始めたので私は勇気を振り絞って蒼の名前を叫んだ。
「蒼!早くして!」
自分でもこれはなかったと思う。
「待って〜」
蒼が追いかけてきた。
「あの人に間違えて三組って言っちゃった……どうしよう……」
「テンパりすぎなんだよ、蒼は」
「そういう時は助けてよ〜」
「無理」
「え〜」
私のコミュ力が高ければ助けるけど残念ながら皆無に等しいのだ。
翌日。蒼の靴箱には大量のファンレターやラブレターが詰め込まれていた。
「やっぱり三組って言っちゃったの怒ってるのかなぁ……」
初日、蒼はそんなことを零した。違うんだ、蒼。それはラブレターだ。別の意味の果たし状だ。
「嫌われちゃったなぁ……」
「蒼、それラブレター。蒼のことを好きな人たちが好きですって言ってるの」
「嫌われてなくてよかった……」
いや、良くない。って……それは私だけか。
「これは……どうすればいいかなぁ」
「捨てたきゃ捨てればいいし読みたきゃ読めばいいんじゃない?」
「なるほど!じゃあ家でゆっくり読もうかな」
蒼は落ちた手紙を全て拾って鞄に詰めた。
それ以来、毎日のようにそれは詰め込まれていた。
放課後、ラブレターを読んでいた蒼が呟いた。
「放課後で屋上、ってなんか怖いな」
いやそれ、告白だろ。
「紅音、怖いけど頑張って行ってくるよ」
蒼はそう言ってぎこちなく笑った。
「行ってらっしゃい!」
私は笑った。ちゃんと笑えたかな。
本当は嫌だ、なんて。行かないで、なんて。私が言える立場じゃないだろ。
「行ってきます」
そんな絶望的な顔をするな、蒼。
机の上のラブレターの差出人を見てみる。可愛いって噂のあの子か。そんな可愛い彼女ができたら、私となんて喋ってくれないのかな……。寂しいなぁ。
紅音、お前早う告れ。
私?
親友には一切好意抱いてませんよ。