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無色透明  作者: 夜桜菫
追憶篇
10/41

廣瀬蒼という少年

今日から過去編突入です。

主に蒼と紅音の話。

蒼ってどっちかって?やだなぁ、同一人物ですよ

 私の父と母は、普通に出会って普通に結婚したはずだった。

 父は母と違い要領のいい方ではなく、会社では叱られてばかりだったそうだ。会社内でのいじめが始まったのは父が勤め始めて二年が過ぎた頃だった。

 初めは父の酒癖が悪くなっただけだった。母も「働けば多少のストレスは溜まるだろうし、仕方のないことだ」と軽く考えていたらしい。

 母は外務省で働く公務員だった。外交官の秘書として仕事をしているらしく家にいることは少なかった。

 五歳になった頃、母が家にいない際に父が私に暴言を振るうになった。我に返るといつも泣いて謝ってきていたが、幼い私には苦痛でしかなかった。



 そんなある日、二軒隣の家にとある家族が引っ越してきた。美人で優しいお母さんとモデルのように格好いいお父さんと色白で痩せ細った少年の、三人の家族だった。

 私とその少年は同い年だそうで、よく話すようになった。

 少年は名を(あおい)と言った。

 蒼の話はどれも退屈なものだった。食事制限がなくなったら色々なものを食べてみたいこと、幼稚園に毎日通って友達を作りたいこと、どれも私には当たり前のことだったからだ。

 蒼は病気だったのだ。どうも生まれつきの病気らしく、その通院のために引っ越してきたそうだ。

 そんな蒼だったが、私の話を聞いてくれるのは有り難かった。父の暴力が痛いことを話した時に蒼は慰めてくれた。でも、同情して欲しいわけじゃなかった私は

「わかったようなこと言わないでよ」

 と怒った。蒼はそれに対し

「ごめんね」

 と謝った。もう話してあげない!と吐き捨てて私は帰った。

 「あげない」だなんて、私は何様だったのだろう。



 その後日。蒼の家から怒鳴り声と大きな音がして私は蒼の家の前に行った。

「なんで他の子と同じようにできないの!病気が何?少しは私の役に立ってよ!」

 あのお母さんの声だった。さらに声は責め立てる。

「寿命が短いから何?!もっと短ければいいのに!早く死んでよ!お前なんか!」

 そのあとはもう聞き取れない奇声だった。大きな音が何回も響いていた。私は怖くてその音が収まるのを待つことしかできなかった。

 暫くして母親が家を出てきた。

 蒼に何かあったのだろうか、と私は家の中に入った。家に入ると床に置かれた血の付いた金属バットが目についた。

「蒼!蒼!」

「お母さん……?」

 蒼の声がした。目の前の部屋から頭から血を流した蒼が顔を出す。

「あっ……紅音(あかね)ちゃん……」

 何をどうしたら血が出るのだろう、と幼い頭で必死に考えた。血は転んだら出るもの。私の中ではその程度の認識だったが、父に殴られた時に唇から血が出たことを思い出した。

 私は金属バットを握ってみた。重い、重すぎる。こんな重いものが頭にぶつかったら痛いだろうな。それこそ血が出るくらいに。

「紅音ちゃん……?」

 ただでさえ弱々しい蒼の声が余計に弱く聞こえた。

 私は家には居たくない。居たらお父さんに殴られる。蒼もきっと同じだ、と考えた。

「一緒に帰ろう、蒼」

蒼って病気で死んだの?え?というわけで次回に続きます。


今日4日?!今日中に2話更新できるように頑張ります

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