“ソレ”のやって来た日
AI、人工知能と呼ばれる“モノ”と同席するとは思ってもなかった。
西暦2027年4月、“ソレ”はやってきた。
人工知能。
私が入社したころに、いつか人の代わりに仕事をする、そう言われていた“モノ”。
“ソレ”が入った物体が今目の前に来ている。
社長から、「君が人工知能の管理に最適らしいからよろしく。」そう言われている。
その根拠は、“ソレ”のメーカーの人工知能がそう判断したから、だそうで。ひどい理由だ。
ところでこの物体はいつまで箱に入っているのだろう。
というか、メーカーの担当さんが来ない。
「設置や設定、操作説明などはどうなっていますか?」
仕方ないからメールで問い合わせてみ「設置してネットワーク接続まではお客様での作業になります。」
・・・ものすごい早さで返事が来た。
大手はさすがだなぁと感心しながら開梱。
外観は普通のパソコン。
画面とマイクとカメラと本体。
マニュアル操作用のマウスとキーボードが一応付いていた。
とりあえずネットワークに・・・今時ケーブルで接続するタイプとは、珍しい。
起動して自分のパソコンからメーカーにメールを・・・打っている途中で「人工知能“Holmes”の接続が確認できました。現在初期設定、同期作業中です。完了致しましたら“Holmes”より通知がございます。」
というメールが。
待つこと数分、“ソレ”が喋り出した。
「この度はユンテル社製人工知能“Holmes”をご購入いただき誠にありがとうございます。
初期設定、同期完了致しました。今後もユンテル社製品を宜しくお願い致します。」
第一声がメーカーの宣伝。できた人工知能だ。
そうして私は“ソレ”と同じ席で仕事をすることになった。




