リリーとフワリの日常
ゼリアに帰って来てから、毎日時間が過ぎるのが遅い気がします。
前まではスフィアとフワリの三人で旅をしていたからなー・・・。
城の中みたいに豪華な部屋のふかふかなソファで小説を読みながら思っていると、
フワリが飛んできました。
『リリー、何処かに出掛けたいのー』
私は読んでいるページに栞を挟め、読むのを辞めて立ちました。
『良し、お買い物をしましょうか』
『やったなのー!!』
私はタンスの中にある白いカシュクールドレープドレスに着替えて外に出ました。
フワリは私がオーダーメイドで購入した緑色のレースワンピースに着替えなおしていました。
最近、お出掛けをする時はこの服を着る事が多いフワリです。
よっぽど気に入ってるんでしょうね。オーダーメイドをした甲斐がありましたね。
ちなみに、お値段は金貨2枚です。安いでしょう?
いえ、普通の町ならいくら質が良くても買う人なんてそうそういません。
しかしこのゼリアという町では10代くらいの女の子でも買う値段なんです。
それだけこの町はお金持ちが多いのよ。
まぁ、この話は置いといて、何処に行きましょうか。
フワリと町を歩きながら相談し、まずはデザート専門店に行くことにしました。
どうやら小腹が空いたみたい。
私の家から歩いて数十分ほどで着く「シャンペリア」というお店に入りました。
相変わらず無駄に豪華な建物ですね。
建物がガラス張りになっていて外の見通しが良く、テラス席もあります。
中に入って天井を見上げるとシャンデリアとかもあります。
まあ、この町ならシャンデリアなんて何処の家庭でもあるので珍しくないんですけどね。
私達は店員に案内されて窓際の見晴らしがいい席に座り、
執事みたいな格好をしている男性店員がテーブルクロスの上にグラスを置き、
ボトルに入っている葡萄ジュースが注がれました。
ん、注文はしてませんよ?これはサービス、無料なんです。
メニューに載ってあるケーキやパフェで元は取れるのよ。
フワリが真剣にメニュー表を見ていると、
眉を寄せて困っている表情をしていました。
『やっぱり高いのー・・・銅貨10枚・・・』
『慣れだわ』
私はバナナパフェを注文し、フワリがレアチーズケーキに決めて頼みました。
数分ほどフワリと葡萄ジュースを飲みながら話していると、
聴きなれている声が客席から聞こえてきました。
『んーバナナパフェをたべよっかなー?』
『えー?あんた、昨日も食べてたじゃん』
『美味しいから毎日食べても飽きないよー』
一つ先にある席で話している二人の女性を見てみると、
ポニーテールのピンク髪の女性と紫髪のショートカットの女性がいました。
ピンク髪の女性は首元にキラキラしているネックレスをし、
手首にもキラキラしているブレスレットをしていました。
一方、紫髪の女性は舞踏会で着そうな派手な紫色のドレスを着ていて、
もう一人が着ている可愛いらしいワンピースと対象的でした。
何でこんなに見ているかというと、私の友達だからです。
私が手を小さく振っていると、二人が気がついてくれました。
『あー!リリーじゃん!』
『あら、偶然ねー!』
二人がメニュー表を置いて私の元に来てくれました。
『久し振りね、ルビア!レイア!』
『久し振りー!フワリちゃんも元気にしてたー?』
『元気なのー!』
『あん!フワリちゃんはいつ見ても可愛いー!』
『ありがとなのー!』
四人で話しているとルビアが『一緒に座っていい?』
と言ったので勿論『良いわよ』と答えました。
皆で食べた方が美味しいですからね。
◯
『フワリちゃん、ブルーベリー食べる?はい、あーん』
『ぱくっ・・・美味しいのー!』
『あん!何でこんな可愛いの!持ち帰りたい!!』
『レイアは本当にフワリちゃんの事が好きねー』
『だって、こんなに可愛いもの!』
レイアは相変わらずフワリに熱中していて、
ルビアいつものように隣で微笑んで見ていた。
フワリが私の友達に好かれ、この町に溶け込んでいるから自分の事のように嬉しいなー。
そんなことをふと思い、バナナパフェをスプーンですくって口の中に入れました。
うん、美味しいわね。
話が盛り上がっている時、ルビアが私に話題を振ってきました。
『ねー、リリー』
『ん、なぁに?』
『リリーが旅をしていた時の話をまた聴きたいなー』
隣で聴いているレイアがルビアに続き、
『あ!私も聴きたい!リリーの旅の話って凄い面白いんだよねー』と、食い付いていました。
私は小さく咳払いをしてから話をしました。
『では、私がフェンリルの可愛い女の子に出逢ったお話をしましょう』
こうして楽しいひと時の時間が過ぎ、
デザートを食べ終わっても直ぐにその場からは離れようとしませんでした。
とてもお話が盛り上がりましたからね。
ですが、だんだんと人が混み始めて待っている人が出てきましたのでお会計を済まし、
お店を出る事にしました。
『リリー達はこれからどうするー?
私達は服を買いに行こうと思っているんだけどー?』
『良かったら一緒に買い物をしない?』
ルビアとレイアに誘われ、断る理由がありませんので私達は四人で行動する事にしました。
それに、フワリがレイアに『何でも買ってあげるよ!』と必死に誘っていたからです。
レイアは本当にフワリの事が好きみたいですね。町の中を歩いている途中に
『リリーお願いがあるんだけど、フワリちゃんを譲ってくれないかしら?』
とレイアに言われたので即答しました。
『それは無理よ』
いつものように笑顔で答えました。
レイアはがっかりしていますが、
目的地の衣類屋に着いたらテンションを上げて真っ先に店内に入って行きました。
『さあ張り切って行きますよ!!』
レイアは服が大好きですので、このようにテンションが上がる友達なんです。
私達はゆっくりと後を追って(クランディ)という衣類屋に入りました。
店内は相変わらずドレスのような服ばかりが置かれ、
ガラスケース越しにジュエリーも沢山ありますね。
ルビアは宝石が好きで、レイアはドレスが好きなので二人はこのお店に来るとそわそわしています。
私は父親に『身だしなみの為に高価な物を着なさい』
と言われているので仕方がなく着ていますが、
こういうのには興味が余りありませんね。
一番好きな事は本を読むことですから。
でも、二人の楽しそうにしている表情を見るのは好きですね。
フワリも楽しそうにしてますのでいい事です。
『この指輪、凄いキラキラしているのー!』
『これはダイヤモンドよ、買ってあげようかしら?』
『ほしーのー!でも、高くないのー?』
『そうでもないよ。この大きさなら金貨10枚くらいよ』
『充分高いのー!?』
うん、とても楽しそうにしていますね。
フワリは遠慮して断っていましたが、
レイアが『どうしても買ってあげたい!』とお願いをしていたので話し合いをし、
一番安い指輪を買って貰う事にしました。
それでも金貨1枚はするんですけどね。
『ありがとうね、レイア』
『ありがとなのー!』
『どういたしまして、本当はもっと良いのを買ってあげたかったのだけど・・・ところで・・・』
レイアが隣にいるルビアを見て口を開きました。
『あなた・・・そんなに指輪を付けていたかしら?』
『ううん、今買ったのを付けた』
さっきまで一つしか付けていなかったのに、右手に三つも指輪がありました。
ルビアは対抗してレイアにツッコミを入れていました。
『いや、そういうレイアだってドレスを二着も買ったじゃん』
『まー・・・そうね』
正論を言われて反論が出来ないレイアが面白くて笑ってしまいました。
その後も四人で買い物をし、外が暗くなったので今日はこの辺で解散をする事にしました。
『じゃあねーリリー!フワリー!』
『またなのー!』
『また遊びましょうよ』
『うん、またね!』
私達は見送ってから家に帰りました。
夜は家族とステーキを食べ、シャワーを浴びてから自分の部屋に戻りました。
私はベッドで横になりながら本を読み、
フワリは買って貰った指輪を眺めて喜んでいました。
しばらくすると、フワリが眠たそうにしていましたので私も本を閉じて寝る事にしました。
『おやすみ、フワリ』
『おやすみなのー』
フワリは私が手作りしたフワリ用のベッドで布団に潜り、
私はいつものベッドで布団を被って横になりました。
このように楽しく生活はしてますが、
寝る前になるとスフィアの事を思い出して少しだけ寂しくなってしまいます。
『スフィアは元気にしているかな・・・』
早く逢いたいな・・・おやすみ、スフィア・・・。




