妖精が好きな女の子
『リズー。絵本を読んでいる時に悪いんだけど、おつかいを頼めないかしら?』
『いいよ!』
『ありがとう。それじゃあ、いつもの露店で買って来てねー』
『うん!行って来ます!』
リズは絵本が大好きでさっき読んでいたのは、
ママが私の誕生日にプレゼントをしてくれた妖精さんが出てくる絵本です。
実際には妖精さんを見た事がないので逢ってみたいなー。
リズはいつもの露店で、頼まれたニンジンを買いました。
『よう!リズちゃん!今日もおつかいかい?これはサービスだ、やるよ』
『ありがとう、おじさん!』
おじさんは林檎を一つおまけにくれました。
おつかいを済ましてお家に帰ろうとした時でした。
綺麗なお姉さん達が妖精さんと一緒に、
楽しそうにお話をしていました。
『珍しいハーブの茶葉を手に入れたから、宿屋に帰って早く飲みたいなー』
『あんなに沢山の種類が置いてある露店なんて珍しいよね』
『私も早く飲んでみたいのー』
私達は話をしながら、泊まっている宿屋に入ろうとした時でした。
目の前にいた女の子がこちらに駆け寄って来て、
女の子はフワリを見ると目を輝かせて言いました。
『本物のようせいさんだ!こんにちは!』
『え、えと、こんにちは』
フワリは突然声を掛けられたので少しだけ戸惑っていましたが、
女の子に挨拶を返しました。
『お姉さん達はようせいさんとお友達なの?』
フワリの次に私達の方を見て、
目をキラキラと輝かせていました。
『うんっ、そうだよ!』
『ああ、君は妖精を見たのが初めてなのかい?』
スフィアが女の子に質問をすると、元気良く答えていました。
『うん! 初めて! ようせいさんに逢ってみたかったの!!』
女の子はとても嬉しそうにお話をしていたので、その姿が可愛かったです。
私もこの子くらいの時に妖精を見たら、大喜びするだろうなと思いました。
すると、女の子の後ろから30代ほどの女性が近づいて来て、
女の子の名前を呼んでいました。
『リズー。遅いから心配したじゃないの、お姉さん達とお話をしていたのね』
『ママ! お姉さん達が凄いの! ようせいさんとお友達なんだって!』
『えっ? 妖精さん?』
女の子の母親がフワリの方を見ると、とても驚いていました。
『あら、本当に妖精さんだわ。可愛いわね』
『エヘヘー、可愛いなんて照れるのー!』
フワリは可愛いと言われて上機嫌になっていました。
母親がお姉さん達の迷惑になるからそろそろ帰るわよと言っても、
女の子はまだフワリと話したくて帰りたくない様子でした。
『リズ、ワガママ言わないの。お姉さん達が困っているでしょう?』
『いやー、まだ帰りたくないー』
このままだと女の子が母親に怒られそうです。
その前に私は尋ねてみました。
『あのー、良ければですけど。
私達は明日の昼過ぎに次の町に向かう為に旅に出ますが、
朝方に待ち合わせをして何処かで会えませんか?』
母親が疑問に思ってどうしてですか?と返されました。
確かにいきなり言われたら不信になってしまいますよね。
私は女の子が妖精ともう少しお話をしたかったら、
会ってあげたいという事を説明すると、納得してくれました。
『ママ!リズは明日もようせいさんに会いたい!だめ?』
女の子の母親は迷っていましたが了承をしてくれて、
集合場所を決めてお別れをしました。
明日の集合場所と時間は、公園にある噴水付近に9時に待ち合わせです。
スフィアは多分起きれませんので、
私とフワリの二人で行こうと思います。
今日は明日に備えて早めに寝る事にしました。
○
翌朝になり、私とフワリは8時頃に目を覚ましました。
いちよスフィアを起こす努力はしましたが
やっぱり起きてこないので、フワリと二人で行きます。
宿屋を出て歩いてから数十分くらいで公園に着きました。
宿屋の近くで良かったのと、
この町には公園が一つしかありませんので分かりやすかったです。
ちゃんと噴水もありました。
確認をしましたら噴水の前にリズちゃんと母親がいて、
私達に気がつくと手を振ってから挨拶をしました。
『今日は娘の為にありがとうございます』
『いえ、良いですよー気にしないでください』
母親は深々とお辞儀をしていましたが、
リズちゃんはこちらに駆け寄り、
フワリを見ると目をキラキラと輝かせていました。
『ようせいさん!おはよう!』
『おはようなの!』
リズちゃんは母親に注意をされていましたが、
私は気にしてませんので良いですよーと答えました。
リズちゃんの目的は妖精のフワリであって、
私はおまけみたいなものですからね。
挨拶が終わると、私達は公園のベンチに座り、
リズちゃんの母親が買って来てくれた、
瓶に入っているサイダーを飲みながら色んなお話をしてあげました。
私達の旅の話、フワリとの出会い、
フワリに作ってあげたお洋服の話などをすると、
リズちゃんはとても楽しそうにしていたので、
待ち合わせをした甲斐がありました。
帰り際になるとリズちゃんは、
小さなポシェットから飴玉を出して3つ私達にくれました。
どうやら、スフィアの分も用意してくれたみたいです。
なんて優しい女の子でしょうか。
私達は親子とお別れをすると、宿屋に帰りました。
部屋のドアを開くとスフィアはまだ寝ていました。
ただいまの時刻10時すぎ、私達はスフィアを全力で起きさせました。




