吸血鬼のローザ
今までと雰囲気が違う話になります。
先程までは天気は快晴でしたが、突然怪しい雲が現れて、
大雨と雷が降るほど天候が荒れています。
『寒いのー!』
『何処かで雨宿り出来る場所はないかしら』
『あっちの方に建物があるぞ、行ってみよう!』
スフィアは何かの建物があるのに気がついて、
私達は建物がある方向に行きました。
近付いてみると凄く立派な屋敷でした。
貴族が住んでいそうな屋敷なので、
入り辛いのですが雨宿りをしたくて入ってみました。
『お邪魔しまーす・・・』
大きな扉を開けると建物だけでなく室内も大変立派でした。
真ん中に大きな階段があり、赤いカーペットが引かれています。
左右には高そうな絵画もあり、
天井を見上げると沢山のシャンデリアがありました。
『この無礼者!勝手に我の屋敷に侵入するとは何者じゃ!』
階段から降りてきて、激怒していたのは女性でした。
特徴は赤いゴシックな衣装をしており、とても派手です。
『勝手に入ってしまってすいません。
私の名前はリリーです、こちらがスフィア、そして妖精のフワリです』
私に続いてスフィアが口を開きました。
『私達怪しい者ではありません、雨宿りをしたくて入りました。
少しだけでもいいので、ここに居させて貰えないでしょうか?』
女の子が険しい顔をしていたが、
雨宿りくらいならいいだろうと許してくれました。
『我の名はローズだ、まぁ少しの間なら寛いでも良いぞ。
客室に案内してやるから来るが良い』
彼女に付いて行き、
階段を登りながら優しい方で良かったねと小声でお話をすると、
スフィアは何かを疑っていました。
人間にしては悍ましい雰囲気があると。
『気のせいなのー』
『気にし過ぎだよ、スフィア』
『だと、いいのだが・・・』
部屋に案内をされると、タオルも用意をしてくれました。
私は凄く出来る女性だなと感心しました。
『お主よ、リリーと言ったか。
体を拭き終わったら右側にある1番奥の部屋まで来てくれ、
紅茶とお菓子を運ぶから手伝ってくれんかのう?』
『はい、手伝います!』
『では、後で来るのじゃ、その間に用意を済ましておこう』
ローズさんは先に部屋を出て、ゆっくりとドアを閉めて行きました。
体を拭き終えて着替えを済ました私は、
運ぶのを手伝いに行こうとすると、スフィアに止められました。
『待って、リリー!何か嫌な予感がするんだ、私も付いて行くよ』
『大丈夫だよ、スフィア。悪い人には見えないし、とても親切な人よ』
スフィアが心配をしてくれましたが、
私は断って部屋を出て行ってしまいました。
『えーと、1番奥の部屋だからここかな?』
ドアを叩き確認をすると、
ローズさんの声が聴こえたので入りました。
『失礼しまーす』
部屋に入ると、白くて大きなテーブルにティーセットと、
お菓子が入ったバケットがありました。
周りを見渡すとアンティークな家具が沢山並べられており、
とてもおしゃれな部屋です。
『お主よ、こっちのティーセットを運んでくれんかの』
『はい、分かりました!』
私がティーセットを運ぼうとした時でした。
背後から強く抱きつかれ、首元を強く噛まれて血を吸われた。
『お主は阿呆だのー』
『いたいっ!!あなたはもしかして・・・』
このままでは危ないと思い私は振り払おうとしましたが、
女性の力とは思えないほど強くて振り払えなかった。
数秒ほど血を吸われると、
心臓が燃えるように熱くて痛くてとても苦しくなった。
『あっ・・・な、なにこれ・・・!?』
『ククク、お主はこれで我の奴隷じゃ・・・』
○
リリーには断られたが、
やはり心配なので様子を見に行く事にした。
『スフィア、槍を持って何処に行くの?』
『フワリ、念の為にこの部屋から出ないでね、
少し様子を見てくる・・・』
部屋を出てドアを閉め、リリーの元に向かおうと思ったら、
廊下からリリーがこちらに向かってくるのを見つけた。
『どうしたの、スフィア?槍なんて持って・・・』
『リリー!何事を無くて良かったよ。
やっぱり私の考え過ぎだったかな・・・』
私は違和感に気が付いた・・・。
そう、紅茶とお菓子を運ぶと行って出たのに何も持っていなかったのだ。
それに後ろに何かを隠しているような気がした。
『リリー、紅茶とお菓子は・・・?』
『それよりも、先にやる事があるの・・・
あなたを殺さないといけないの!!!』
後ろに隠し持っていたダガーナイフを、
私の首元を狙い振りかざしたのだ。
辛うじて後ろに下がったが、
頬にナイフが擦り血がたらりと流れた。
余りにも突然の出来事に動揺してしまった。
『あーあ、避けられてしまったわ』
『リリー・・・何で・・・』
明らかに様子が可笑しくなっていた、
もしかして操られているのか・・・。
『次は逃さないよ!』
私に向けてナイフで突き刺そうと突進をして来た。
リリーには申し訳ないけど、1度気絶させるしか方法がないと思い、
首元を狙い腕を振り落とした。
『うっ!』
倒れる前にリリーを支えて、ゆっくりと廊下に置いた。
一体何があったのだろうか・・・。
『気絶をさせるとはお主は戦いに慣れているのー、
どちらかが殺されるのも楽しみに観戦していたのに・・・』
声が聴こえた方向に振り向くと、不気味な鎌を持った女性がいた。
そう、ローザという女性だった。
『貴様っ!リリーに何をした!!』
『我が小娘の血を吸って、奴隷にしただけじゃ』
『血を吸ってだと・・・まさか、吸血鬼か』
『そうじゃ、吸血鬼じゃ!』
吸血鬼は不気味に笑っていた。
『リリーを元に戻せ!さもないと、容赦はしないぞ・・・』
私は怒りが爆発しそうになり、殺意が込み上がった。
『ヒヒッ!怖いのー、元に戻す方法は我を殺すしかない。
果たしてお主に出来るかな・・・?』
『絶対にリリーを取り戻してやるよ』
槍を構えて、戦闘態勢に入った。
『殺せるもんならやってみるのじゃ。人間が吸血鬼に勝てる訳がなかろう!』
その瞬間、吸血鬼の姿が目の前で消えて、姿をなくしたのだ。
『な・・・消えた!?いや、上か』
吸血鬼は真上から鎌を振り下ろして斬りかかってきたが、
攻撃がよめたのでかわす事が出来た。
『お主やるのー、では、これならどうじゃ!』
再び姿を消し、今度は真横に姿を現して、鎌を大きく振ってきた。
私はしゃがんで攻撃をかわし、槍を相手に向けて突き出した。
『はぁっ!』
又もや姿を消されて、距離を置かれてしまった。
『おっと、今のは危なかったのー』
私は吸血鬼に聴きたい事があり、言葉を交わした。
『なんでリリーを狙ったんだ』
吸血鬼は不思議そうに首を傾げて、口を開いて言った。
『我好みの小娘だったから、奴隷にしただけじゃ』
『そんな理由でリリーをこんな目に合わせやがって、許さないよ・・・』
『お主は我好みではないから殺してやる。
あの妖精はどうしたものか、人形にしてやろうかな?』
『貴様あぁ!!!』
『さて、話は終わりじゃ!そろそろ死ぬが良い!!』
再び姿を消して攻撃を仕掛けに来た。
今度こそ相手を貫いてやろうと思い神経を集中させた。
『死ねえええい!』
吸血鬼は目の前に現れ、鎌を降りかざした。
私は槍を盾にして攻撃を防ぎ、右脚で相手の腹部を蹴り上げた。
『グッ!良くもやっ・・・!!!』
私は攻撃を休めることなく、
槍を相手の心臓を狙って突き刺した。
それから完全に仕留める為に、
槍を思いっきり上にすくい上げ、胸郭から肩までを切った。
『ゴフッ・・・!!』
大量の血が廊下で流れる中、まだ吸血鬼は息をしていた。
『これで終わりだ・・・』
私は吸血鬼の首を槍で切り離した。
その後、私はリリー抱きかかえて部屋に戻り、
フワリに事情を話して屋敷を出る事にした。
廊下には見せられないほど残酷な光景があるので、
フワリにリリーの上に乗ってもらい、
目隠しをする為にタオルを包んでもらった。
屋敷から出るとさっきまでの大雨が嘘のように晴れていた。
この周辺は気味が悪いので、
離れてからリリーを草原にゆっくりと置いて眼が覚めるのを待った。
『リリーは大丈夫なの?』
『ああ、吸血鬼を殺したから元に戻るとは思うけど・・・ 』
しかし、数十分以上の時間が過ぎてもリリーは目覚めなかったのだ。
『リリー、そろそろ目を覚まして。旅の続きをしよう』
不安に感じた私は、涙が込み上げて溢れてしまった。
『ねぇ、リリー。お願いだから起きて・・・。
リリーがこのまま目を覚めなかったら、私・・・私は・・・』
大粒の涙を零してリリーの頬に涙が落ちると、
目を開き意識を取り戻してくれた。
『リリー!!元に戻ったかい!?』
『え・・・スフィア?なんで泣いているの?』
『目が覚めたのー!』
『ちょっ、2人ともどうしたの?』
気が付いたら2人とも大粒の涙を流して泣いていました。
何があったのか分からず困惑しました。
それよりも、なんで私はこんな所で寝ていたのかしら?
スフィア達に理由を尋ねると、
どうやら私は吸血鬼に操られてしまい意識を失っていたみたいです。
そしてスフィアがここまで運んでくれたと。
『助けてくれてありがとう、スフィア・・・。ごめんね、心配掛けて』
『いいよ、リリーが無事なら良いさ』
スフィアが私に手を差し伸べてくれました。
『立てるかい?』
『ええ、大丈夫よ』
私達はこうして旅を再開しました。
次の町に着いたら、少しの間ゆっくりと休息をしましょうか。




