ウンディーネのお怒り
今私達は、この町の住人なら誰でも知っていると言われている、
有名な湖がある場所に向かい、本屋で買った地図を見ながら歩いています。
町を出てから20分ようやく湖がある場所に来ました。
『おー、ここが有名な湖か!』
『やっと着いたねー』
有名と言われているから物凄く神秘的な所かと思いましたが、意外と普通の湖でした。
周りには岩があったり、花や草が生えている場所があったり、
湖が透き通るほど綺麗以外では至って普通でした。
この湖が有名な理由は、そのまま湖の水を飲んでも平気みたいなんです。
しかも、物凄く美味しいみたい。
確かに透き通るほど綺麗で美味しそうですが、いざ飲むとなると勇気が必要です。
スフィアが先に湖に両手を入れて、水をすくい、顔を近づけて試しに飲んでいました。
『本当に大丈夫なの・・・?』
『・・・うん、本当に飲める。しかも美味しい』
スフィアが再び水をすくって飲んでいたので、私も真似をして飲んでみました。
『あっ、本当に美味しい!』
『だろ?そのまま飲める湖なんて凄いよな』
『凄いよね!美味しいから、水筒に水を入れて持って帰ろう!』
念のためにと二人分の水筒を持ってきて正解でした。
せっかく来たので、少しだけこの辺りでゆっくりしようと思った矢先の事でした。
突然、湖の一部から不自然に大きな波が押し寄せてきて、
私達に容赦なく水が降り掛かりました。
服がびしょ濡れになってしまいました。
『リリー、大丈夫!?』
『冷たい!!突然何で!?』
すると、誰かの怒鳴り声が聴こえてきて、私達に対して怒っていた。
『この湖は私の住処だ!勝手入って水を飲むな!!』
怒鳴り声が聴こえた方向を見てみると、女性が湖の中から立っていました。
見た目は青色のドレスみたいなのを着ており、髪の色は水色で、目が赤く、
とても綺麗な女性だったが私達は唖然するしかありませんでした。
色々と訳が分からなかったのです。
さっきまで誰もいなかったのに、突然女性が現れたこと。
そして、不自然に波が押し寄せてきたこと。
そんな状況でも私はある事を思い出して、女性に話し掛けました。
『もしかして、あなたはウンディーネですか?』
女性は腕を組んで頷きました。
『そうだ、私はウンディーネのナミネだ。
悪いがここは私の住処だ、出て行ってくれ』
私達はウンディーネに謝って、町に帰る事にしました。
それにしても、ウンディーネがあの湖にいるなんて驚きました。
私の住処だと言っていましたからこれからは、
あの湖に誰も近付けなくなってしまいましたね。
私達が泊まっている宿屋に戻ると、宿泊している女性に声を掛けられました。
『あら?びしょ濡れじゃない、どうしたの?』
『実は先程、この町で有名な湖に行ったら、
ウンディーネが現れて水を掛けられてしまって・・・』
『凄く怒っていたよね・・・』
私達がそう伝えると、彼女は苦笑いをしていた。
『あー・・・ウンディーネがいる、あの湖に行ったのね・・・。
あそこは男性に人気がある所だから、女性が行く所ではないよ』
『えっ、なんで男性に人気が?
それよりも、ウンディーネが住んでいることを知っているのですか?』
『この町の人ならみんな知っているわよ。
それと、何で男性に人気があるかと言うと・・・』
私は彼女の言葉に耳を疑いました。
『水を掛けられたくて、怒られたい男性が行くのよ』
『それってただの・・・』
『まぁ、そういう事よ』
この町にいる男性は少し変わっているようです。
多分私達は、二度と行かないでしょうね。




