ギルドで依頼
『あれが今回討伐をする、スライム?』
『ああ、物凄く弱いから、リリーもダガーナイフを投げて攻撃をしても大丈夫だよ』
『えー、本当?』
『もし何かにあったら私が守るから安心して』
『う、うん・・・』
私達はあるきっかけでギルドの依頼を受けています。
それは本当に些細なきっかけでした、およそ数時間前の話をしましょう。
いつも通り仲良くお出掛けをしている時でした。
『スフィアー、次は何処に行く?』
『・・・・・』
『スフィア?』
隣を見るとさっきまで一緒にいたのにスフィアの姿がなかった。
後ろを振り向くと、スフィアが何かの建物をじっと見ていました。
『何を見ているの?』
スフィアの顔を覗いてやっと気付いてくれた。
『ん?ああ、すまないな、こんな所にギルドがあったから気になってな』
『ギルド?』
スフィアの視線の先にある建物を見てみると、
看板には剣と盾を目印にしたマークが描かれており、
いかにも騎士や戦士が集まりそうな建物です。
スフィアがその建物について説明してくれた。
『この建物はギルド会場といって、色んな依頼を自分で選んで受けれる所なんだ。
例えばモンスターの討伐、薬草探しの依頼があるんだけど、
それを実行して達成出来ると報酬が貰えるんだ。
冒険をする前に良く通っていてね、お小遣いを稼いでいたよ』
ほーそれは気になりますね、薬草探しなら私でも出来そう。
『ねぇースフィア、ギルド会場で依頼を受けてみましょう!』
『いいのかい?』
『うん!凄く気になるの!でも、私でも入れるのかな?』
『戦士や騎士じゃなくても大丈夫だよ、ただし危険な依頼は受けれないけどね』
『入れるなら入ろうー!』
『凄いやる気だね、リリー』
私はスフィアの手を引っ張りながら入りました。
周りを見渡すと、彼方此方に武器を持っている人達がいました。
やっぱり男性の方が多いですね。
テーブルも多数あって、宴会を楽しんでいる人もいます。
スフィアに掲示板に依頼が貼ってあるので、その場所に連れて行かれました。
『んー、リリーがいるから安全な依頼じゃないと・・・。
と言っても薬草を探しは地味だから・・・あっ、これなら!』
スフィアが手に取った依頼の紙を見ると、スライムの討伐と書いていました。
『スライム?』
スフィアが簡単に説明をしてくれました。
スライムとはゼリー状のモンスターで、触るとドロッとして気持ち悪いみたいです。
簡単に討伐が出来るけど苦手な人が多いみたいです。
依頼の内容は町外れにある畑にスライムが発生して、
討伐をしてほしいという依頼でした。
『リリーはこの依頼で平気?』
『んー、大丈夫かな?』
『じゃあ、これにするね』
『はーい!!』
スフィアがそう言って依頼書を剥がし、
申し込みをする為に受付の場所に行きました。
暇を持て余していると、後ろから声を掛けてきた人がいました。
『お嬢ちゃん、可愛いなー。こんな所で何しているんだ?』
『ここよりも楽しい場所を知っているぜ?一緒に来ないかい?』
こう言う男性にははっきりと断らないと駄目ですね。
私は強気で断りました。
『すいませんが友達と来ているのでお断りします』
そう言うと、青髪の男性は私の肩を触ってきました。
『女性の友達?なら、丁度良いじゃねーか』
『だな。四人で何処かに行こうぜ』
『いやっ!触らないでよ!!』
言い合いをして騒ぎになり、
周りは『何だ?トラブルか?』『おいおい、誰か辞めさせろよ』
と他人事で見ているだけでした。
そんな時にスフィアが怒鳴っている声が聞こえてきました。
『貴様ら!私の友達に何をしているんだ!』
青髪の男性と紫髪の男性はスフィアに視線を向け、標的を変えていました。
『お前がこのお嬢ちゃんの友達か?』
『どーう?四人でデートしようぜー。何でも奢ってあー・・・』
スフィアはセリフを言わせる前に紫髪の男性の顔を殴っていました。
凄い吹っ飛んでいました。
周りは『おー!女騎士ちゃん大したもんだ!』『もっとやれー!』
『そいつら嫌いだから痛い目に合わせろー!』とやっぱり他人事でした。
ビールも飲んでいる人がいるので酔っ払っていますね。
青髪の男性は仇を取る為に立ち向かってやり返そうとしていましたが、
スフィアはすんなりと身体を右へ避け、今度は蹴りを腹部に入れてました。
さらに、追加攻撃で顔に回し蹴りをお見舞いしていました。
『ぐぶあっ!!!!』
これも先程の男性と同様に吹っ飛んでいました。
『くそ!なんだこの女!!!』
『強すぎるだろう!逃げろ!!!』
戦意喪失した男性達は物凄い勢いでギルド会場から去って行きました。
その瞬間に観戦をしている人達は拍手喝采をしていました。
改めて思うとスフィアって本当に強いですよね。
ちょっとだけトラブルがあったものの、
無事に依頼を受けてスライム討伐をする為に出現地に向かいました。
○
そう、こういう流れで私はスライムを討伐しています。
『くらえー!!』
投げつけたダガーナイフで一撃で倒せました。
『おー、さすがリリー!私も負けないよ!!』
スフィアは槍を振り回して、スライムを真っ二つにしていた。
『ね、弱いから大丈夫でしょ?』
『うんっ、これなら私でも倒せるね!
でも・・・ダガーナイフがベトベトに・・・』
ダガーナイフをスライムに投げつけているので、
液体みたいなのがドロッと付いているので嫌です。
見た目もゼリー状で嫌です。
はっきり言いますと気持ち悪い。
まぁ、一撃で倒せるので安心して討伐が出来ます。
スフィアと合わせて10体は倒したでしょう。
『ふー、これぐらい倒せばいいかな?』
『そろそろ、帰りましょうか』
その時でした。
私の足元にスライムの液体があって、滑って転んでしまいました。
『きゃあ!!』
『あっ・・・』
うつ伏せになって転んでしまったので、顔も髪も衣服も、
スライムの液体でベトベトになってしまいました。
『リリー!大丈夫かい!?』
『あの・・・泣いていいかな・・・』
本気で泣きそうになってしまいました。
服を着替えてからギルド会場に戻った私達は、
ギルド員の討伐の確認が済んだ所で報酬が出ました。
『銅貨20枚になります』
『おー!!!』
これはなかなかのお小遣い稼ぎになりますね。
『ねぇースフィア、今日の夜は少し贅沢しない?』
『これだけあるなら少し贅沢するか!』
その夜、私達はレストランで高級なチーズケーキを頼んだせいで、
稼いだお金は全部使い切ってしまいました。
明日もギルドに行って、お小遣いを稼ぐのもいいかもしれません。
宿屋に戻ったらスフィアに相談してみました。
『ねぇー明日もギルド会場に行かない?』
『あんな事があったのに?』
私は少しだけ疑問に思ったのだ。
リリーがスライムのせいでベトベトになったからもう行かないと思っていたからだ。
まあ、洗ったらすぐに取れたんだけどね。
『んー・・・まぁ、なんだかんだで楽しかったから、
もう一回行きたいんだ!ダメかな?』
『リリーが行きたいなら、良いよ』
『やったー!ありがとうー!』
今日は早めに寝て、明日に備えましょう。
○
翌朝になり、軽食を食べてからギルド会場に向かいました。
今日も会場には武器を持っている方が沢山がいます、
やはり男性の方が多いですね。
『今日は何の依頼を受けようか?』
掲示板に貼っている依頼書には薬草取り、カーバンクルの保護、
クロコダイルの討伐、ゴブリン大量発生など極端な依頼しかありません。
あ、出来そうな依頼が一つありました、スライムの討伐です。
『あっ、スライムの討伐がある。これにしよう、スフィア』
スフィアは意外な言葉に少しだけ驚いていました。
『えっ、スライムで良いのかい・・・?』
『うん、昨日のリベンジがしたい』
『まぁ、リリーがいいなら良いけど・・・』
○
私達はその依頼を受けて、昨日と同じ場所に向かった。
スライムが目の前に現われると、リリーがダガーナイフ持って、
思いっきりスライムに投げつけていた。
『昨日は良くもやってくれたわねー!!!!』
私は少し遠くから見ていました。
『あー・・・やっぱり怒っているな・・・』
この時だけは、スライムが可哀想に思った。
まぁ、私もスライムを真っ二つに切っているから人の事は言えないか・・・。
今日のスライムを討伐した数は二人合わせて、20体を超えていた。
『ふー、スッキリしたわ!』
リリーが物凄く満足そうでした。
『そろそろ帰るか、リリー』
『そうね!』
すると、またもや昨日と同じ事が起きてしまった。
リリーがスライムの液体で足を滑らせて、転んでしまったのだ。
あ、これは明日もスライムの討伐をしようって言うな・・・。
まぁ、お小遣い稼ぎが出来るからいいか。
どうやら、リリーはスライムの液体で転ぶのが得意らしい。
あと何日スライムの討伐をすることになるかな?