肌寒い夜
-肌寒い夜-
秋。
転機となる季節。
良いニュースと悪いニュースがある。
まずは良いニュースから。
…。
…。
…。
雛「お父さん!」
男「ん?」
最近、雛は俺の事を「お父さん」と呼ぶようになった。
まだまだぴょんぴょんしていて可愛い年頃の女の子が、だ。
一番疲れる育児の過程をすっとばして、一番可愛い時期の女の子。
それがお父さんと呼ぶのは、いささか嬉しい反面ちょっと複雑である。
雛「あのね…?」
男「どうした?」
雛「~~~~~///」
男「…え?何?何?」
男(…うわ、まさか…?)
男(お赤飯焚くような事か…?)
男(…まさか、俺がそう言う用品とかも買うのか…?)
雛「あ、あのね…?」
男「…うん」
雛「…が、学校でね?」
男「おう」
雛「…皆…」
雛「…///」
男「な、なんだよ…」
男「言い出し辛いなら、言わなくても…」
雛「…」
雛「み、皆…」
雛「お、お父さんと…」
雛「…お風呂入るの嫌なんだって…」
男「…」
男「…?」
まて。
俺は雛と一緒に風呂に入った事なんざねーよ。
なんだよ、急に俺が性犯罪者っぽい事を言うなよ…。
男「へ、へー」
雛「…でね…?」
男「ん」
雛「…わ、私…」
雛「…」
雛「お、お父さんと…」
雛「お、お風呂入った事…なくて…」
男「…ほー」
雛「…ど、どんな?なのかな?皆…」
男「…いや、知らんなぁ…それは流石に」
雛「わ、分からないよね!」
男「おう…」
雛「…でね…?」
雛「わ、私…そう言うの…」
雛「じ、実は、ちょっと憧れてたりー…して…?」
男「ふーん」
雛「…ね?お父さん?」
男「ん」
雛「一緒にお風呂入ろ…///?」
男「…」
男「~~~~~~~~!?!?!?!?」
れれれれれれれ冷静になれ。
今すぐパードゥン?って聞き返したいが、ちょっと待て!?
…おぅ!?
…んんんん!?
雛「わ!ご、ごめんなさい!」
男「…!?!?!?」
雛「と、突然…びっくりするよね?」
男「心臓が止まったわ…」
男「…」
男「え?聞き間違いじゃねーよな…?」
雛「う、うん…///」
男「…」
ああ、神様。
貴方はなんと無慈悲なのだろう。
この時ばかりはグッジョブ半分、畜生半分をくれてやる。
男「…で」
雛「…だ、ダメ…かな?」
男「…」
男「い、いや…逆に聞きたい…」
男「ひ、雛は…え?」
男「こ、こんな知らないお兄さんと一緒…でも良いの?」
雛「…」
男「じ、実際会って二ヶ月くらい…だぞ?」
雛「うん…」
男「が、ガオーって…襲っちゃうかもよ?」
雛「それは大丈夫!」
おい、何が大丈夫なんだ。
やめろ、その満面の笑みやめろ。
雛「雛は!おにい…お父さんの事!信頼してるから!」
やめろ。
本当に、その笑顔やめろ。
心を抉るような清々しい笑顔だよ。やめろや。
男「( ゜д゜)…」
雛「ね?ダメ?」
男「…」
考えてみろよ。
雛は、そう言う「普通の家庭」ってのを望んでるんだ。
つまり、ここで一緒に入ってやるのが男だろ?
それこそ、お父さんの役割だろ?
待て待て、考えてみろよ。
雛は小学五年生。
おまけにドストライクな可愛さだぞ?
完全に、クジラックス世界線に突入する事は間違い無しだ。
良いのか?お前襲っても?
こんなに可哀想で可愛い雛を襲って良いのか?
と、心の中の天使と悪魔が喧嘩しだす。
男「…あー…」
雛「ね!ね!」
男「あー…」
雛「ねー…」
男「うーん…」
雛「…おとーさん…」
ヤバイ。
何がヤバイって、雛が俺の扱い方を分かってきてる点だ。
そんなさ、「ねー?」とか言われてみろよ?
断れる訳ねーじゃんか?
しかも、若干潤んだ瞳で見てくるのもえげつない。
そして、俺の心の弱さも半端ない。
男「…は」
雛「…?」
男「入りたい…のか?」
雛「…うん」
男「…」
男「…はぁ」
男「分かった」
雛「~~~!!!」
雛「やったー!!」
雛「おとうさ~ん!ありがとー!」
男(ああ…なんて微笑ましい)
男(そして俺の理性よ、持ってくれ…)
…。
…。
…。
カポーン…
男「…なぁ、一つ良いか?」
雛「は、はい…」
男「…この浴槽に二人はダメだろ」
雛「だ、大丈夫です!なんとかなりますよ!」
男(この自信はどっから湧いてくるのか)
雛「じゃ、じゃあ…!失礼します!」
男「…お、おう」
勿論、雛にはバスタオルを巻かせている。
これならば、少なからずあんし…見えてる見えてる見えてる見えてる!!!
チラッチラ見えてる!!タオルの隙間!少しは気にしてくれ!!
ナチュラルに目逸らすと、余計意識してるってバレるわ!
…安心できない。
…後ろから抱きかかえる形になろう。
で、目をどこかに逸らす…と。
ちゃぽん…
雛「ふぃ~…」
男「…」
雛「あったかいね…お父さん…」
男「おう…そうだな…」
男(平常心平常心…)
男「…あ」
雛「?」
男「えーっと…アレだ」
男「…お父さんと風呂入って…どうだ?」
男「…な、なんか嫌な感じ…するか?」
雛「あー…」
雛「…」
雛「全然!」
マジかぁ…。
俺も嫌な感じじゃないけど涙が出てくるよ。
雛「楽しいよ!」
マジかぁ…。
俺も楽しいけど、血涙が出てくるよ。
雛「すごく…幸せだし」
幸せかぁ…。
…良かった。
雛「いっつも一人だけだったし…それに、家のお風呂は暗くてイヤ…」
男「…」
雛「…本当に、すっごく幸せだな~…」
男「…」
雛「ね!」
男「…そっか」
男「良かった」
雛「えへへ…!」
男「…そーいや、最近はアレだな?随分と俺ん家を出る時間が遅いな~…」
雛「…!」
男「お家の人も心配するし、やっぱり7時頃には帰った方が…」
雛「お、お父さん!」
ザバッ!
男「!?」
雛は、あろうことか体勢を変えてきた。
俺に覆いかぶさる形…とでも言おうか。
顔と顔が向かい合う。
近い近い近い!
それに…!
なんか、「当ててんのよ」的な感じになってる!!
男「ななな…!」
雛「お、お父さんさ…」
男「お、おう」
雛「あんまり、お部屋の掃除してないよね?」
男「…あー…」
男「大体、休みの日にまとめて…」
雛「休みの日、いっつも雛と居るじゃん」
男「…あ」
雛「…掃除、してないよね?」
男「あー…確かに」
雛「…でね?」
男「んー」
雛「こ、この間…」
男「んー?」
雛「か、勝手だとは思ったんだけど…」
雛「…そ、掃除。しちゃいました…」
男「おー!それはありがたい!」
男「サンキュー」
雛「あ…うん」
男「…ん?」
雛「で、でね…?」
男「んー」
雛「く、クローゼットの中も…ちょっとだけ…」
男「あー…あそこ、魔窟だからなー」
雛「うん…」
男「なんか適当な物が大量にあったべ?」
男「正直、あそこは片付ける気になれん…」
雛「…そっか」
男「…?」
男「どうした?さっきから」
雛「…じ、実は…ね?」
雛「く、クローゼット掃除した時…」
雛「…///」
男「?」
雛「え、えっちな本…出てきて…」
男「…!」
~~回想~~
まぁ…それよりも肝心な事がある。
きっと彼女には見られていないだろうけど…。
ロリ物のエロ本を隠さなければ!!!
何がやばいって、色々やばい!!
クジラックスだろ?岡田コウだろ?ねんどだろ?
…見られたら、本当に死ぬ。
特にクジラックスはヤバイ。
このシチュエーションに似た奴が、いくつあっただろうか!?
はやく!早く隠せ!
なんとか魔窟に押し込んだ俺。
後で隠し場所を忘れなければ良いが…。
~~回想ここまで~~
コ ミ ッ ク L O
『COMICエルオー』(コミックエルオー、COMIC LO)は、茜新社から発行されている成人向け漫画雑誌。
2002年9月創刊。毎月21日発売。判型はB5判・平綴じ(無線綴じ)。
略称はLO。「ロリ漫画の灯を消すな」の考えから創刊された。
「ロリータオンリーコミックス」というコンセプト通り、幼い少女の性描写がメイン。
創刊号のキャッチコピーは「子供ですが、何か?」だった。
(Wikipediaより引用)
男「うおおおおおおおおおおおおお!!!!????」
雛「ご、ごめんなさい!!」
男「うっっっわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…↓」
雛「ご、ごめんね!ほ、本当に!ごめんなさい!」
雛「そ、掃除しようと入って…!」
男「いや…!いや!雛は悪くない…!」
男「うわぁぁぁぁ…それは辛い…!」
男「…//////////!!!」
男「…本当にごめん…」
雛「ち、違うよ!雛が勝手に…!」
男「いやいやいや…!俺が片付け忘れてた…って言うか…」
男「あぁ…多分、買った事自体がアウツ…」
雛「…」
男「…それは本当に申し訳無い…」
男「いや…本当にヤバイ…」
雛「…ううん」
男「…いや、正直…うん」
雛「…あ、で、でね?」
男「…うん」
雛「…そ、その本でね?」
男「…うん…」
雛「…お、お兄さん達は…きっと、こう言う事、喜ぶ…かな?…って」
男「…ぅん」
雛「…こ、こうやって…一緒にお風呂入ったり…とか…」
男「…」
男「はぁ…」
雛「わー!ごめんなさい!ごめんなさい!」
雛「…ひ、雛…こ、これぐらいしか…恩返し出来ない…から」
男「…!」
アレか。
突然一緒にお風呂入ろう!と言い出したかと思ったら…。
「エロ本に描かれてる事すれば、俺が喜ぶ」とでも思ってるのか…。
いや、喜ばしいよ。
嬉しいよ。
だけど…あれ?なんでかな?
涙が止まらないや。
男「…う、嬉しいけども…」
雛「うん…!」
男「…あ、あの本に描かれてること、もう、真似しないで…」
雛「で、でも!」
男「いや…!お願いします!」
雛「…」
男「十分恩返し…と言うか、幸せは貰ってるから…」
男「…ほんと、十二分に貰ってる」
雛「…う~…」
男「…あ」
男「いや、雛が「まだまだ恩返しし足りない」…って思っても…さ?」
男「お、俺的には本当~~~~~!に!満足してるから!」
雛「…ほ、本当?」
男「ほんと、ほんと」
雛「…絶対?」
男「絶対」
雛「…」
男「…」
雛「分かった」
男「…ほっ」
雛「じゃあ!」
男「…?」
雛「…今度、大きくなったら!」
雛「…雛にも、あの本の事教えてね…?」
教えられるか!!
どうすんだよ!?お前大きくなってから、俺がロリコンだって分かったらどうすんだよ!?
普通に考えて教えられねーよ!!
男「アー…エー…」
男「…あっ!」
男「そ、そうだ!そ、そう言う事はね?大きくなって、雛が結婚した相手から教わると良いよ!」
俺、GJ。
多分、見事な切り返し。
つか、見事な話題逸らし!
これなら、雛ちゃんも諦め…
雛「あ…!」
男「…ん?」
雛「じゃ、じゃあ…!」
雛「いつか!教えてね…///?」
男「…んん?」
雛「絶対!絶対!?」
男「…いや、着地点が見えない」
雛「…う~…」
男「…?」
雛「…にぶちん」
男「ガーン…」
雛「…つまり?だよ?」
雛「…///」
男「?」
雛「お、大きくなったら!」
雛「大きくなったら…!お、お兄さんのお嫁さんに…なりたいな…?」ボソッ…
雛「…///」
雛「…とか…!」
男「…」
男「…!」
雛「…優しくて、本当のお父さんみたいで…」
雛「…」
雛「…えへへ///」
男「…」
なんと言う事だろうか。
この感覚を、どう表現して良いのだろうか。
心の奥に、ずっしりと来る言葉だった。
今までに感じた事のある、「好き」と言う事葉とは、
まったく違うものを感じてしまった。
…つまりだ。
俺は、お兄さんであり、お父さんであり…。
お父さん…?に、なるのだろうか…。
…。
それから、お風呂を上がるまで。
俺達二人は、言葉少なげに過ごした…とさ。
…。
…。
…。
これが、良いニュース?である。
…では、悪いニュースも語らなければならないだろう。