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家出少女の帰る場所  作者: Dream Meter.inc「優」
2/16

嵐の夜-2-

{嵐の夜2}



しまった。

まさかこんな事になるとは…。

コンビニに着いて、ふと週間漫画誌が目に止まってしまった。

おや、俺が学生の頃からやってる漫画は、未だに続いているのか…なんて、手に取ってしまったのが運の尽き。

昔の方が面白かったなー…なんて考えていると、空が唸りを上げ始めた。

あぁ、今日は雨が降るのか…。やっちまった…。


急いで弁当を決める。

おお、大盛り焼肉弁当とは嬉しい限り。

そうだ、どうせ貯金ばっかりで金はあるんだ。たまには贅沢しても良いだろう。

よし、カップ麺も大盛りを買おう。あと、ストレス社会の為のチョコレート。

うん。

うん。

いいね。


会計、1000円チョイ越えた。やはり高くついてしまったか…。

しかも、電気代を浮かせたいからって、弁当をコンビニで暖めるんじゃなかった…。

外は本降り。

たまに稲妻。

…ふと思う…。

俺は何をしてるんだろう…と。


ため息一つ、全力疾走で家に戻る。

と、言うか、家の鍵を開けっぱなしだったではないか…!

あぁ…人間の意識とは、こんなにも簡単に散漫となってしまうのか。

ああ、怖いもんだ…。


よし、ネオン街を抜けてすぐ、俺の部屋が見えてきた。

と言っても、友達が貸し出してくれたオフィスビルの二階。

広さなんてものは大して無い。

そして暖かさは、あるようで無い場所へ…。

今日も俺は、そこに戻る。


走った勢いのまま、階段を駆け上がる。

が…!

背筋が凍った!

階段には、足跡が付いている。そしてそれは、俺の部屋へと続く…!

待て、待て待て待て待て!!

…この時ばっかりは、20分前の自分をぶん殴りたい。

ぶん殴って、鍵を閉めるべきだと力説したい。

俺の手にはコンビニ弁当+α。

空き巣や泥棒に対抗できる手段など、持っていない…。

かくなる上は…!


もう一度、大雨の中に飛び出した。

目の前の自販機で、缶ジュースをいくつか買う。

次に、せっかく分けたチョコレートだが、弁当とカップ麺の上に放り込み、一つの空き袋を作る。

そして、缶を入れて…!

振りまわす!


…よし、自衛策は出来た。

開けた瞬間に来やがれ!

俺はいつだって準備出来てる!

さあ…さあ…!


俺は、ゆっくりとドアノブを捻る。

…。

電気は付いたままだった。

そして、出て行った時の足跡も確認出来ない。

つまり…まだ、奴は居る。

…足が震えだす!

それでも進む…。

コンビニ袋を握り締め、ゆっくりと進む。

どんな絵面じゃ…。


…リビング、良し。

…キッチン、良し。

っつか、全部見えるわ!

誰も居ない…。半分ほっとした。

だが、可能性は十二分。

音を立てずに進め…!俺!


カタンっ…!

音がした。

…?

風呂場か…?…風呂場!?

え…?ど、泥棒に入った挙句に風呂…?

厚かましいなド畜生…!

そう考えると、むしゃくしゃと腹が立つ。

どんな野郎が居ようと、俺はこのコンビニ袋を振り降ろすまでだ…!


…よし!

覚悟は決まった…!

後は…!行くぞ!


ガチャン!!


男「うおおおおおおおおお↑泥棒めええええええええ!!」


…。

…。

…。

驚いた。

いや、振り上げた武器が止まるレベルには驚いた。

そこに居たのは…。


少女「え…!?」


タオルで頭を拭く、小学生の女の子だったからだ。


…。

これが、彼女との出会いだった。



{嵐の夜2}



私は、二回ノックした。

コンコン、コンコン…と。


少女「ごめんくだ…さい…」


…とも言った。

電気が付いてるんだから…多分、誰か居るはず。

もう一度ノックする。

コンコン…。

…誰も出て来ない。

…ああ、誰も居ないんだ…。

半分嬉しくて、半分哀しかった。


また、元の階段下へと戻ろう…と思った時!足をすべらせてしまった!


少女「きゃっ!」


思わず大きな声を上げて、手すりへとしがみ付く!

でも!何故か手すりも一緒に斜めへと動く!


少女「やぁっ…!?」


両手で手すりを掴む…!

…ようやく、今度は止まってくれた…。

顔を上げる…すると…。


掴んでいたのは手すりじゃなくてドアノブだった…!

さらに、扉も少しだけ開いてしまった!


私は、一瞬背筋が凍る。

自分のやっている事の大きさに、驚いてしまったから…。

このままじゃ、泥棒のように見えるかも知れない。

このままじゃ、指紋とか、そう言うので私だって分かっちゃうかも知れない…!


…後になって考えれば、そのまま閉めれば良いだけだったんだけど…。

私は怖くなって謝った。


少女「ごめんなさい!!」


…声が階段に響く。

寂しい。

その返事も、全く帰って来ない。


少女「あ、あの…!」


今度は顔だけ突っ込んで中を見渡す…。

すると、私の考えていた部屋とは全く違っていた…。


テレビ、ソファ、大きな机、パソコン…。

見ただけで、住みたくなるような部屋…。

…私が、さっきまで居た場所とは大違いだ。

そして、我に帰って中を見渡す。

誰かが居たら謝らないと…。

そして、泥棒ではないと言わないと…!


…だが、いつまでも声は返って来ない。


そのまま、閉めて帰ろう…と思った時。

扉に掛けられた大きなタオルが目に留まってしまった…。


少女「あっ…!」


…。

自分の身体を、もう一度見てみる。

上から下までびしょ濡れ…。

夏ではあるけど、夜だからちょっとだけ寒い。

…もしも、あのタオルを借りれたら…。

本当に、本当にちょっとだけ…。


そう思ったら、私は動いてしまっていた。


扉のタオル掛けから、大きなタオルを引っ張る。

ふかふかで…とってもふかふかで…!真っ白いタオル。

手に持った瞬間、本当に顔を埋めたくなった。

ごめんなさい・・・!と、心の中で一声。

私は、全力でタオルの感触を楽しみ始めた…。


嬉しい肌触り…。

ふっかふかで…嫌な臭いが一つもしない…。

…。

…幸せ。

…あの家に居たら…ごわごわで薄っぺらいタオルだけで…。

…。

お風呂。いいなぁ…。

最近…と言うか、最後に入ったのは何時だっけ…?

…お風呂…。あんまり入らせてもらえなかったな…。

…。

なんだか、マッチ売りの少女を思い出す。

…鏡。

ちょっと、今の自分を見たいな…。


と、タオルでくまなく頭を拭いていたら…!

ガチャン!って大きな音がした!

びっくりして振り向く!

すると、身長の高い男の人が…!


男「うおおおおおおおおお↑泥棒めええええええええ!!」


…と、白い袋を掲げて怒鳴ってきた…。

本当にびっくりした。

でも、この人もびっくりしてる…。


少女「え…!?」



…これが、彼との出会いでした。

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