嵐の夜-1-
初めまして。DreamMeterことドリメタと申します。
SS投稿速報にて書かせて頂いた「家出少女」を、なろう様でも執筆しようと思います。
雛ちゃんはとっても可愛い女の子なので、皆さんで是非とも育てましょう!
今回は、二人が巡り合いそうなまでのお話です。
{嵐の夜-1-}
ある日、仕事が嫌になった。
前は楽な仕事だと思っていたのに、今じゃとてつもなく苦痛に感じてしまう。
それでも、仕事を辞めた後の事を考えると、どうしても辞める事など出来ない。
言葉を発する事も無く、あの小奇麗な部屋へと帰る。
正直、ここに居るのも苦痛だ。
誰からも「おかえり」と言われる事も無く、そして仕事の忙しさで出会いもない。
今日も家に帰ってカップ麺。
ああ、実家に帰りたい…。
さて…風呂にでも…。と、風呂の扉を開けたタイミングで腹が鳴る。
先に飯にしよう…。手に持ったバスタオルを扉に引っ掛け、キッチンへと向かった。
戸棚横の段ボールに手を突っ込むと、カップ麺の買い置きが…無い!?
業務スーパーで箱買いするのが通例だが、どうやら昨日で終わっていたようだ…。
まぁ…明日は休み。洗濯、食器洗い、そして箱買い。それらを全部やれば良い。
きっと丸一日潰れるだろう…あれ?休みとはなんだったのか。
それよりも今日の食事が問題だ。
高くなるからと敬遠していたが、今日はコンビニで済ますしか無いだろう…。
徒歩5分。
これなら鍵を掛ける必要も無かろう。
だだっ!と走って、今日もカップ麺を食おうか。
食って、寝て、さあ…明日は休みだ。
あ…せっかくならコンビニ弁当も買おう。
そして、夜食でカップ麺だ。
{嵐の夜-1-}
家が嫌になった。
何人目かも分からない父が、今日も殴ってくるから。
酒に溺れていない時は、あんなにも真面目なのに。
母は、夜に出かける。
朝を越えても帰って来ない事すらある。
そんな時に限って、父は酒を飲んで私を殴る…。
今日、家出をした。
一言も喋らずに、眠る父の後ろを通り抜け、静かに靴を履いて、静かに扉を開けて…。
こんなにも自由を感じた事があっただろうか。
街の七色の光が、とてつもなく素敵に見えた。
そうだ、あんな場所にずっと居ても意味がない。
きっと、ここには自分の望むパパも居る。
きっときっと…きっと…。
でも、怖かった。
色々なパパが話しかけてきた。
訳の分からない事葉を投げかけて、私自身じゃなくて、私の身体をジロジロと眺めるような…。
そんな人達しか居なかった。
危うく肩を掴まれそうになって私は逃げた。
すると、その人は、私を鼻で笑って…また、七色の光の中に歩いて行った。
…たったの1時間。
それだけで、この場所の事が分かった。
ここにも私の居場所は無い。
その事実だけが、しっかりと分かった。
空が怖い音を鳴らしはじめる。
地面からはシタシタと音が鳴りだす。
折角、家出をしたのに…またあの場所に戻らないといけないの…?
…。
その答えなんて、見たくない。分かりたくない。
雨は、家のシャワーよりも強く降って来た。
顔に当たる雨粒が痛い。
空が光る度、怖くなって走り出す。
でも、疲れて歩きだす。
一歩一歩。
二歩三歩。
一分一秒。
二分三分。
ふと、オフィスビルが目に留まる。
二階は電気も付いていた。
そうだ、階段の中で雨宿りしよう。
それから逃げよう。
先なんて分からないけど、それでも逃げよう。
私は自由になりたい。
階段は、電気が付いていた。
これは嬉しい。
あの綺麗な光よりも、この白い光の方が安心が出来るから…。
…。
あれ?
オフィスビルじゃない?
一階には焼肉屋さんが入ってるけど・・・
二階には、表札が掛かっている。
それに、三階も誰かのお家みたい。
もしかしたら、タオル位は借りれるかも知れない。
でも…。
また、繁華街にいたような人が住んで居たら…。
…。
お腹空いた。
今日は学校も休みで、何も食べてない。
暖かいご飯…食べたいな。
…他の子は、皆しっかりと持ってる物を、なんで私は持ってないんだろう。
…優しさが欲しい。
…優しさってなんだろう。
…。
…私は、家出した。
だから、私がどこに行こうと誰も知らないし、誰も気にしない。
朝が来て家に戻れば誰も分からない。
…どうかタオルだけでも貸して下さい…。
お願い…。