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プロローグ その7

 一階にいた母にグルミを預けてきた後、僕は二階の自分の部屋に戻ってきた。理子以外の大人にはグルミはぬいぐるみにしか見えないらしいし、部屋の前に無造作に置いておくよりはいいだろうという判断だ。渡した瞬間、ソファに寝転んでいた母が枕にしようとしていたのは見ないことにした。


「で、力の使い方なんだけど」


 部屋に戻ってきた僕は、さっそく理子に話を切り出す。


「うんうん」

「基本の方針は一つだけ、日常的なことにしか魔法の力は使わない」

「どういうこと?」


 理子が不思議な顔をしている。


「つまり、魔法の力を使えば空を飛んだり、色々な人に変装したり、できるのかもしれないけれど、そういうことはしちゃダメだ。人に見つかったらそれこそ、理子が魔法少女だって認識されて、グルミの言っていた通りの状況になっちゃうからね」


 不思議な顔がみるみる不満そうな顔に変わっていく。


「そんなの魔法少女になった意味がないじゃない。力を使うなっていうのと一緒じゃないのよ!」

「それは違うよ。魔法少女の力は何も非日常を呼び起こすためだけに使うばかりじゃない。たとえば、理子は運動が苦手だったはずだけど、魔法の力でサポートして普通の人と同程度もしくは少し上くらいの動きをすることは可能になるよね。えーと、空を飛ぶのはダメだけど、高いところから飛び降りたときに上手く着地するのに能力を使うくらいはいいんじゃないかな」

「えー、そんな地味な使い方して何か意味があるのかしら」

「魔法をどれだけ使えば問題が起こるかわからないうちは少しずつ使って問題が発生する閾値を調べた方がいいと思うんだ。だから、日常で少しでもおかしいところがあったらすぐに僕に報告すること。なにもなければもっと力を使う範囲を広げてもいいかもしれないしね」


 理子は渋々といった形ではあるけれど、黙ってうなずいてる。


「次に、本当に神秘の力、と、グルミが言っていたけれど、それが人の目撃だけで認識されるのかはわからないからね。もしかしたら超常的な力が使われるだけで世界のバランスは崩れて、常識とする世界が変質する可能性だってあるのかもしれない。だって、今のところ僕の知る限りではこの世界のルールから外れた力を使えるのはグルミと理子だけなんだからね。だから、人に知られてはいけないだけでなく、不思議な力を持っていることをこの世界にも知られてはいけない。つまり理子は世界を欺かなければいけないんだ」


 一息置いてから、右手を理子の前に掲げ大仰なポーズを取って続ける。


「理子……。魔法少女である自分を騙せ。世界を騙せ!」

「世界を騙す……」


 理子は少し呆然としたように呟いたあと、急にテンションが上がったように話し始める。


「そ、そうね! 魔法少女の力が使えないのは残念、ああ、残念! でも、仕方ないわね。わたしが自分一人の行動で世界を変質させてしまうそんな可能性があるなら責任重大だものね。面白くない力しか使えないかもしれないけれど、恭ちゃんの提案したオペレーション。のってあげるわ」


 一息で勢いよくうれしそうに話す理子を眺めながら、部屋の隅に置かれたその幼なじみから借りたゲームのパッケージを確認する。そして、しみじみ僕は思うのだった。ホントに理子って、ゲームもゲームみたいな状況も好きなんだなあと。

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