プロローグ その6
「だいたいわかったよ」
後ろから声をかけつつ、寝そべって読んでいたマンガを取り上げる。理子は大層不満そうな顔をこちらに向けてくる。誰の悩み相談なのかな。これ。
「どうかしらわたしが魔法少女だってのはわかったでしょ?」
「うん、そうみたいだね。グルミの話がどこまでホントなのかはわからないけど」
後半はグルミに聞こえないように声を落として返事をする。
「で、どうかしら、恭ちゃんはわたしが大変なことにならないように、魔法の力だけを有効活用する方法は考えついたかしら」
ああ、もうオブラートに包む気すらないんだな。気を遣ったのに、コレってグルミに聞こえまくってるよね。あーあ。
「うーん。どうも、グルミはむしろ派手にキミに力を使ってもらった方がうれしいみたいだね。そうした方がグルミの力が戻るとか」
「あなた、まさかそんな話を信じてるんじゃないわよね!? きっとグルミの力が戻ったあとに最後に力を取り戻すピースが必要グルミーとか言って、わたしを喰い殺して力を取り戻そうとしたりするに決まってるわよ。もしくはファンタジーの国から来たって言ってるけど、実は遊星からの物体Xだったりするのよ。力を使うたびにグルミと意識が同化していって、最後にはグルミがわたしか、わたしがグルミかよくわからない存在になっちゃうんだわ。わたし小さい頃から親切にしてくる知らない大人とかわいいぬいぐるみの言うことだけは信じるなって親に言われて育ってきたもの」
理子の親がそんなこと言ってるの聞いたことないけど……。
「とりあえず、僕も派手に力を使うのはオススメしないね。理子の言う通りのことにはならないまでも何が起こるかは保証ができないからね」
「そうでしょ。うんうん。あ、でも力を使わないって選択肢もなしよ。こんな面白い状況なんだから力を使わないなんてできっこないわ」
やっぱりそうなのか。んー、仕方ないけど、理子だしなあ。
「じゃあ、僕からも一つ提案しようかな」
「何かしら!」
顔をぱっと明るくして理子が身を乗り出す。こんな意味不明な相談とはいえ全面的に信頼してもらえるのは、まあ悪い気はしないでもない。
「じゃあちょっと相談するからグルミは外に出てもらおうかな?」
そう言って、グルミを抱え上げて部屋の外に持っていくことにする。いや、こいつが一番怪しいのに全部筒抜けだとダメでしょ。
「二人で相談グルミか? いいグルミよ? 十分相談して結論を出すといいグルミ。こちらには後ろめたいところなんて何もないグルミ」
うん。その発言さらにうさんくさいよ。