プロローグ その4
「ん、僕の頭がおかしくなっていないのなら、確かに、ぬいぐるみがテレパシーをするくらいなのだし、理子が魔法少女でもおかしくないのかもしれないね」
「んふふー! そうでしょ。そうでしょ!」
喜色満面といった風に僕の顔を見ながらうなずく。対する僕は、僕の頭がおかしくなったのかもしれないという疑いが絶賛急上昇中だ。大丈夫か僕。
「とりあえず、魔法少女の説明をこのぬいぐるみ。えと名前は、グルミってわたしは呼んでるんだけど。ぬいぐるみだからグルミね。細かいことはグルミから聞いてちょうだい。いいわね」
そこまで話したところで、理子が掴んでいた手を離してぬいぐるみを床に落とすと、倒れることなく四本脚をしっかりと立てて地面に着地した。こいつ、動けたんだな。
「こっちも心の中で話しかければいいの?」
「声に出しても、心の中でもどっちでも大丈夫なはずよ。そうよねグルミ?」
「大丈夫グルミー!」
心の中に声が響く。いや、さっきまで語尾にそんなの付けてなかったでしょ。思いの他、冗談のわかるぬいぐるみだな。
「じゃ、任せたわね。グルミ」
と言うやいなや、理子は勝手に本棚からマンガを一冊手にとり、クッションを枕にして我関せずとくつろぎだした。キミは何しにきたんだよ。魔法少女の服ってそんなにフリフリなのにうつぶせになって寝てて大丈夫? シワとか気になる。
「では、魔法少女のことについて説明させてもらうグルミー!」
グルミがテレパシーを送ってくる。って、その語尾続けるの? まあ、いいけど、とにもかくにもまずは情報の把握だ。
「まず、理子は「グルミってわたしは呼んでる」って言ってたけど、グルミって名前でいいの?」
「リコは教えても正しく呼んでくれないからもうグルミでいいグルミー……」
「そうか……。悪いことを聞いたね。ところでこれは理子には聞こえてるのかい?」
「リコには聞こえてないグルミー。でもリコにも聞こえるようにできるグルミよ」
「いや、いい。大丈夫だよ」
理子の方に目をやると、こちらに気づきお見合い中の二人を見守る仲人のような笑みを返してきた。うん、なるほど。完全に聞く気もないんだな。