プロローグ その2
「というわけよ。わかった!?」
彼女が言うには、魔法少女的なアニメやマンガや小説を見るに、昔なら魔法少女になったよー。よーし子供のままじゃできない素敵なことをアレやコレや。魔法の力で実現しちゃうよ! かなえちゃうよ! って具合に好き放題に魔法を使いたい放題だった。
けれど、この頃のその手の話は魔法少女の力を使ったのなら代償が必要だよね。人知を超えた力がタダで使えると思ったの? 残念でした! って話が多くて、引き替えにその力でもって死ぬほどの辛いバトルをさせられたり、素敵なできごとと引き替えに嫌なできごとを同じくらい背負わされたり、はたまた挙げ句の果てに力を持つモノとして全人類を見守る神様にさせられたりするらしい。
ああ、魔法少女の世にまで適用されるノーブレスオブリージュ。そんなのは絶対嫌! なのだけど、かといってせっかく手に入れた力を使わないのも絶対嫌! という話だった。
つまり、端的に言うと、魔法少女の義務が存在するとしたら、ソレを果たさずに権利だけをネコババするにはどうしたらいいのかしらね。という相談なわけだ。
「なんていうか、キミって、色々、残念だよね……」
「うっさい! 残念とか言うな。もっかい殴るわよ!」
両手でスティックを構えながらすごい目で睨んでくる。待って殴らないでと、こちらも目で牽制しつつ。
「うん、ここまではわかった。とりあえずもう一度はじめからやり直そう。魔法を使って魔法少女だって証明できない理由は理解したよ。でも、他に魔法少女だって証明する方法はないの? 魔法少女に免許証はー、あるわけないよね。そうだな変身を一度解いて、もう一度目の前で変身してみせ、っ!」
唐突にマジカルな一撃が繰り出され、再度すんでのところでかわすが、続けざまにマジカルな連撃がこれでもかと繰り出される。
「デリカシーがっ、ないの? 変身シーン、なんてっ、見せられるっ、わけが、ないでしょ!?」
真っ赤な顔で一言話すたびにぶんぶんとスティックを振り回し続ける。
「ちょっと! どうして?」
「魔法少女の変身シーンなのよ!? 途中で裸になるに決まってるじゃない!」
「そういうものなの!? 知らなかった。謝るからやめて振り下ろさないで」
脚がもつれてこけたところに、理子が両手持ちで大きく頭上に振り上げたマジカル振り下ろしによるマジカル追い打ちが炸裂しようとしていた。やめて炸裂させないでマジカル要素がなくてもそれは死んじゃう。