お願い
「学生の夢を叶える事をお手伝い!」
私の所持品であるスマートフォンが通知を知らせる音に反応して、手に取り、ロックを解除された画面に表示されたコミュニケーションアプリのメッセージ画面の文字であった。
この手のメッセージは無視するに限ると、親に買ってもらった際に聞かされた。
無視しようとしても、心に何か引っかかる。
そのような、つっかかりが私を動かそうとしていた。
「私たちから簡単なお願いを完遂するだけで、プロスポーツ選手から億万長者。大統領でもあなたをご招待!」
理性は胡散臭いと発してはいるが、私の探究心は理性をねじ伏せた。
「どのようなお願いなのですか?」
後でブロックでも何でも出来る。そう心に言い聞かせる。
「あなたの望みによって変わります。しかし我々は違法行為を推奨することはありません。」
違法行為は無い…
「私は、世界で一番の学力を望みます」
冗談の積もりだった。
「あなたに “お願い” をします。」
「掃除です。」
掃除?簡単とは嘘ではなかった。 たとえ理想が叶わなくとも、奉仕行為とはなるだろう。
「詳細は後日お伝えします。」
後日、私の机の上に金属製のカバンが置かれていた。
中を開けると、B5のリングノートと缶入りのドロップ。
「これって、ナイフだよね…掃除って何の事?」
銀色に光る刃には私の目が覗く。
リングノートを開くと、ワードプロセッサで書かれたような文章が存在した。
「今回の掃除」
場所、中町公園
持ち物、ナイフ 缶入りドロップ
備考、クラスメイト「檜山 梨奈」を誘い、ドロップ一個を、掃除の前に口に入れる。
クラスメイトの名前、そして、家付近の公園の名前。
怖いという感情。そして、掃除という言葉。 私を鼓舞させるには十分であった。