第98毒 猛毒姫、譲渡する
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ポイント、ブックマーク、誠に誠にありがとうございます!
いろいろ思うところがありまして。
話の内容を胸糞から大幅変更中です。
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前回までのあらすじ
SMTェ……。
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部屋に戻ってくると、先程とは打って変わって皆が忙しそうにぱたぱたやっておる。
どうしたんじゃろうか。
部屋の中で1人だけ、動きを止めている人物に詳細を聞いてみることにした。
「どうしたんじゃ、次男よ」
なんだか眉間を押さえて難しい顔をしていたニコチンは、私の物言いに突っ込む気力もないのか、自分自身で事実確認するかのように呟いた。
「トキシン侯爵と、長男兄様が、逃げ出した、らしい」
うむ、知っておる。
「良いじゃないか、あんな無能達、いない方が」
「そういうわけにもいかん。
侯爵の権力が無いと、この屋敷を回すことだって無理だ。
もちろん、それ以上のこともだ」
うむ、知っておる。
「そうじゃな。
ニコチンも大変じゃのう。
あんまり独りで抱え込んでは駄目じゃぞ。
ほれ、これをやろう」
「お前に心配されるとはな……。
ん? なんだこれは」
「侯爵代行権利書」
「…………は?」
「侯爵代行権利書」
「……」
こうして。
ボツリヌス・トキシン侯爵代行は。
速攻でボツリヌス・トキシン侯爵令嬢へ逆戻りしたのじゃった。
短い春じゃった‼︎
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「長女を助けに、行かぬのか!?」
「ああ……残念ながら、無理だ。
いや、無理ではないが……。
そんなことをしたら、トキシン侯爵領は確実に滅びる。
セレンの命と、比べるべくもない」
……さもありなん。
これは、仕方のないことじゃ。
逃げることが出来るのに戦かうことを選択した者がいて。
その者を助けるために、大量に犠牲を出すなど、愚の骨頂じゃ。
その者もきっと望んではおらぬ。
分かっておる。
分かっておっても。
この体からは、涙が出るんじゃなあ。
ただ、5歳児になって涙もろくなった自分が、そんなに嫌いじゃあないが。
「……お前がセレンに会ったのは、ついこの間が初めてじゃないか」
私がぽろぽろ涙を零しておると、ニコチンが苦笑いしてそんな事を言った。
此奴なりの、慰めなのじゃろう。
「私もそう思っておったが、どうやら感情と言うのはそう言う物じゃないらしい」
じゃから私も、泣きながら笑ってそう返す。
ニコチンめ、「これだからお子様は」とでも言う様な顔をしおって。
お主もさっき、奥歯ばきばきやってたじゃあないか。
「所で、気になっていたんだが」
「うん?」
「お前……なんで前歯が全部折れてるんだ?」
「……えっと、乳歯が抜けて……」
「嘘を吐け!」
何だかやいやい言われたが、無視した。
「さて、ニコチンよ。
これからやる事を教えておくれ」
「……」
ニコチンは少し迷っておる。
まあ、幼女相手に今後の予定を話すなんて、壁に向かって話をするのと何も変わらぬ。
しかしニコチンは、壁に向かって話すよりはましだと考えたのじゃろう。
「実は、今後やっていくことは、それほど多くは無い」
「え?
隣の領に、兵を貸して貰う様打診をしたり。
借金して傭兵を雇う算段を算段をつけたり。
農民から有志を募ったりはせぬのか?」
「実は、もう既にやってある」
有能過ぎる。
「侯爵代行権利書いらなかったんじゃあないか」
「最終決定はトキシン侯爵にお願いするつもりであったし。
なかったら、これからある最終交渉もまとまらず瓦解していたさ。
感謝している」
「……ならば、良いのじゃが」
「……魔族軍が来るのは4日以上は後だろう。
それまでにはこちらの軍もある程度形になるはずだ」
「勝てるじゃろうか?」
「絶対勝てない」
「ぬな!?」
「勝つには、どうしても必要な物がある」
ニコチンは再度眉間を押さえて、難しい事の様に呟いた。
「5公の協力だ」
……?
「む?
5公って、そもそもその成り立ちからして、魔族退治を請け負っておるのじゃろう?
協力要請などせずとも、やっつけてくれそうじゃが……」
「ああ、やっつけてくれるだろうな。
……ただ、彼らにとって、トキシン侯爵領なんて蹂躙されようが滅ぼされようが、どうでも良いはずだ」
……ああ、成程。
魔族を退治するには退治するが。
もう1つくらい貴族領と戦って貰って。
弱ったところを4人で叩けば良いと。
5公達はそう考えておると言う事じゃな。
「実際はどうか分からないが、俺ならそうするだろう」
言われてみれば、確かに私でもそうするじゃろう。
自分のところの被害を最低限にするため、どこかの良く分からぬ貴族に滅びてもらう事など、全く心が痛まぬ。
「しかし、残念ながら、交渉する時間も無い。
5公……今は4公か。
彼らが、我らを手助けしてくれることを願いつつ、人事を尽くして天命を待つだけさ」
「そうか……
ところで。
……私が5公に協力要請に行っても、良いかの?」
ニコチンは呆れた様な顔をしておる。
「……お前は人の話を聞いていたのか?
彼らと交渉する時間は無い。
そもそも5公の公爵領まで、一体どれだけ離れていると思っているんだ。
馬を使ったとして、片道でも3日近く掛かる距離なんだぞ?
どうやってそこまで行くつもりだ」
どうやってって。
そりゃあ、もう。
「うむ。
魔石を1つ、貰えれば。
文字通り、飛んで」
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私の空魔法をみて、驚愕の表情を浮かべていたニコチンであったが。
すぐに気持ちを切り替えたのか、かなり立派な魔石を探し出して、私に預けてくれた。
「後は、侯爵代行権利書も持って行け。
でないと話も聞いてもらえんぞ」
「お主の方は、大丈夫なのか?」
「ああ、俺用にも1部、用意させて貰った。
偽物だけどな」
相変わらず仕事が早い。
「そんな物も作れるとなると。
いよいよもって、私が手に入れた侯爵代行権利書なんか、いらなかった気がするが」
「いや、お前が持ってきてくれなければ、そもそも思いつきもしなかったさ。
……すまんが、交渉の方は、頼んだぞ」
「幼児にそれを、頼むかのう」
「頼むさ。
お前は、規格外だ。
幼児として扱うべきでは無い
本当に、幼児か?」
私は呵々大笑しながら空に浮かぶと。
「……まあ確かに、そこいらのがきとは違うかのう。
せいぜい、期待しておれよ」
そう呟いて、一路公爵領へと向かう……。
暫く飛んで、気付いた。
「……あれ?
公爵領って、どっちじゃろう?」
詳しい場所とか、聞き忘れた。
がきの使いじゃった。
格好良い事言って飛んで来てしまった手前、屋敷に戻るのはめっちゃ恥ずかしいのじゃが。




