第96毒 猛毒姫、勃発する
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さて。
ここからどれだけブックマークが下がるでしょうか。
「(ブックマークを)こっぱみじんにしてやる あの地球人のように!!!!」
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前回のあらすじ
あの地平線~
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離れにわーきゃー兄妹が遊びに来た。
「大姉さま、綺麗だったねー……」
「ねー……」
この間、サヨナラー公爵領で長女の結婚式が開かれたとのこと。
私を除いたトキシン家の皆はいつの間にか出席してきたようじゃ。
そのせいじゃろう、なんだか2人とも元気が無い。
「それで……持ってこれたの?
小兄様」
「ふっふっふー」
次女が突然不安そうに声を掛け。
三男が今度は得意げな顔になり、背中をごそごそし始めた。
なんのことじゃろう。
「じゃーーん!!」
シガテラが取り出したのは……
”とらんしーばー”じゃった。
これは、あれか。
”宝残骸”とか、”鉱族の落し物”とかなんじゃろう。
どちらにしても超希少で超高価、そこいらにほいほい落ちている物ではない。
「ど……どう言う事じゃ?」
「お父様の部屋からこっそり取ってきたんだよ!」
「大姉様と、約束したの!」
「ふむう?」
どうやらトキシン侯爵が、とらんしーばーの片割れをセレンの嫁入り道具として渡したらしい。
奴にしてはなかなか豪奢じゃあないか。
結婚式の日。
めでたい席なのにあまりにもわーきゃー兄妹が泣くものじゃから、セレンがこっそり泣き止むおまじないをしたとのこと。
「オーパーツを使ってお話するんだよー!」
「約束したもんねー!」
「ねー!」と2人は笑顔で顔を向けあう。
……セレンは結婚式から1月後……すなわち今日の12時、とらんしーばーでお話をしようと提案したとのこと。
なんとも優しいお姉ちゃんじゃ。
……というか、セレンの奴は喋れたんじゃのう。
「僕はね、大姉さまに報告出来る様に、ピーマン食べれるようになったんだよ!」
「私も私も、ニンジン食べてるもん!」
これは微笑ましい。
「む、そろそろ12時じゃあないか。
すいっちを入れてみてはどうかのう」
笑顔でとらんしーばーを囲む3人。
まずは代表で、シガテラが声を掛ける。
「ハロー、ハロー!
此方シガテラ・トキシン!
大姉さま、聞こえますか?
どうぞ」
『ザザ……こち……ザザザ……』
「……周波数、あっておるか?」
「あ、ちょっとずれてるよ!」
「背中に隠してたからねー!」
2人は呑気に周波数を合わせるが、私は不穏な空気を感じておった。
とらんしーばーの向こうの声は……明らかに、『男』、じゃった。
『こちらモブ・サヨナラー公爵。
応答願えますか、どうぞ!』
慌てた声で話しかけてくるのは、やはりセレンではなく。
5公の1人、モブ・サヨナラー公爵であった。
「あ、あれー?」
「お、大姉さまはー?」
2人は突然の事にわたわたしておる。
「すまん、変わるぞシガテラよ。
こちらトキシン侯爵領!
何か異常がありましたか?
どうぞ!」
酷く嫌な予感がする。
ただの杞憂であってくれ……。
「こちらサヨナラー公爵だ!
たった今!
サヨナラー公爵領が!
魔族の軍に襲われた!
どうぞ!」
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いつかの話の続きじゃが。
この世界には、パンゲアという雪だるまを横倒しにしたような巨大な大陸がある。
大陸の西側を人族が、東を魔族が支配していたため。
それぞれ人間界、魔界と呼ばれておる。
我らがサーモン王国は、人間界の東。
即ち、魔界に最も近い人間界の領土なのじゃ。
雪だるまの首の部分にあたる人間界と魔界の国境線には、デリケート連峰と呼ばれる人族・魔族双方にとっての天然の要塞となる山脈が存在し。
通称デリケートラインと呼ばれておる。
2つの種族はお互いの領地に攻め入り過去に幾度もの戦争を起こしたが、その戦争地域はデリケート連峰周囲の限られた領土内で止まっていたため。
山脈に並行して人間界・魔界双方に帯状に拡がるその準戦争地域を。
人々はモラトリアム緩衝帯と呼んだ。
その緩衝帯に接する様に存在する5つの公爵領がある。
彼らは王国の最大戦力にして魔族から人族を守る最強の防護壁……。
通称”王国の5公”。
モブ・サヨナラー公爵はその5公の1人。
公爵領が破られかけているという事は。
人間界に、魔族が侵攻する、ということじゃ。
そして、サヨナラー公爵領がやられた暁には。
……次に狙われるのは、ほぼ間違いなくトキシン侯爵領じゃろう。
私はとらんしーばーをシガテラに渡し、急いでトキシン侯爵に伝える様に話をした。
事は急を要する。
場合によっては、あちらに援軍を送るなどの対処も必要じゃろう。
……じゃが、そういうのは私以外のトキシン家の皆様が考えれば良い事。
私は私のやるべきことをせねばならぬ。
「ハンドよ、出来るだけ上等な羊皮紙を2枚、母家からくすねて持ってきてくれ!
超特急じゃ!!」
「え、え、えええ?
わ、分りました!」
泥棒をさせるなど非常に心苦しいが、今は急を要する、すまぬ、ハンドよ。
私がぺんやらいんくやらの準備を終える頃に、ハンドが羊皮紙を持ってきてくれた。
「な、なんだか母家が騒がしいので、私、行ってきますね!」
めいど長であるハンドは紙を渡すとすぐにとんぼ返りしていった。
私は大急ぎで羊皮紙に文章を書いていく。
焦らず急げ。 焦らず急げ。
子供が書いた物とばれたら取り合ってもらえぬ。
誤字でもしようものなら目も当てられない。
息を止めて最後の文章まで丁寧に記載する。
しばらく乾かしながら、不備がないことを確認すると。
なるべく丁寧にくるくると巻いて、部屋を飛び出した。
「オーダーは……いないか!」
流石にサヨナラー公爵領の……ひいてはトキシン侯爵領の一大事。
メイドも全員、母家に行っておるのじゃろう。
私も母家へ向かう。
以前、家族会議を行った応接間は、トキシン一族とメイドたちでごった返しておった。
中央の席ではトキシン侯爵が頭を抱えておる。
「どういうことですか。
隣から軍隊を借りることが出来ると言うから、俺は父上の案を渋々了承したのではないですか」
「黙れ黙れ黙れ!」
次男が気勢を上げ、トキシン侯爵が逆切れしておる。
「お……オーダーよ、何があったのじゃ?」
「……公爵領が魔族の軍に襲われている様です。
たまたま結婚のお祭りで浮かれているタイミングの不意打ち。
何とか持ち堪えている様ですがもはや瓦解は時間の問題とのこと」
ふむ、そこまでは何と無く分かっておる。
「それで、此方から援軍は出さんのか?」
「……トキシン侯爵領には軍備がほとんど無いんですよ。
侯爵様は『いつでも隣から兵を借りられるようにしてあるから問題ない』と言っていたのですが……」
「……まさか……嘘、じゃったのか?」
隣領から兵隊を借りてくるという案自体も馬鹿げておるが。
まさかそれ以上に馬鹿だとは。
「ならば、即刻傭兵を雇うべきです。
緊急なので割高になるとは思いますが……早馬をギルドへ遣りましょう。
このくらいの金額を出せば、このくらいの人数が集まるはずです」
ニコチンはかりかりとぺんを走らせ、具体的な金額やぎるどとの交渉事などを必死に提示しておるが。
「そんな金があったら苦労はせんわ!」
トキシン侯爵は、まさかの……と言うか、私にとっては予想通りの言葉を吐いた。
ニコチンはぺんを落として、愕然としながらふらついておる。
「まさか……無いのですか?
これだけ重税をかけて……、これだけ軍備を疎かにして……。
それなのに、お金が、無いのですか……?」
ニコチンは辛うじてその台詞を吐くと、青い顔のまま、がたんと椅子に座った。
次の瞬間、机の上のとらんしーばーが大きな声で鳴いた。
『こちら、公爵領!
魔貴族が1人いる!!
繰り返す、敵には、魔貴族がいる!!』
魔貴族。
次期魔王候補とされる、13人の魔族の事じゃ。
ただでさえ人族と比べ、圧倒的に強い魔族の。
ほとんど頂点に近い存在である。
「終わりだ……」
部屋の中で誰ともなく、そんな言葉が呟かれた。




