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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
日常編
9/203

第9毒 猛毒姫、飲む

「それでは魔法について実際に練習をして行きたいと思います」

「ぱふぱふどんどんどん!」


 今、オーダーと私は離れの裏庭で動きやすい服に身を包んで相対しておる。

 ちなみにオーダーは教師モードでは無い。

 教師モードはやめてくれと懇願したら、渋々従ってくれた。


 さて、裏庭は前世で言うぐらうんど程度の広さを持ち、使用人達も魔法の訓練に使うと言う。

 魔法が外に漏れないようにする裏庭用の防御結界もあるらしく、練習を始める前にオーダーは四隅にある魔法陣に向かって魔力の注入に向かったので、私もその見学をする事にした。

 オーダーが魔力を流し込むと、魔法陣の周りがぼうっと薄暗く光り輝いて綺麗だ。

 ふむ、私も魔法陣に魔力を注入してみようかの、と手を差し出そうとしたらオーダーに止められた。

 裏庭の魔法陣一つを稼働させるのに500以上の魔力が必要であるとの事だ。

 私などが魔法陣に魔力注入をしたら一瞬で干物が出来上がる。


「これは魔法全般に言える事ですが、距離が離れた場所へ魔法を発動させようとすると更に膨大に魔力を使います。

 例えば、対角線の向こうにある離れた魔法陣に魔力を注入するとしたら、104000以上の魔力が必要です」


「ここからあそこの対角線までか。(距離は100めーとると言ったところか)

 多少離れておるにしても、通常の200倍以上も魔力必要なのか……。

 それにしても必要とする魔力の数字がやけに具体的じゃの」


「実際ここから魔力を注入していたこともありますので」


「なぬ!?」


 久しぶりにやってみましょう、そういうとオーダーは対角線の魔法陣に魔力を注ぎ込む。

 対角線の魔法陣が、こちらからでも見える程に強く青い光を放たせておる。

 魔力量10の私でも解るほどの大量の魔力の奔流は、前世に一度だけ参加したらいぶこんさーとで体中に音の波がぶつけられる衝撃と似ておった。

 オーダーはわざわざ四隅に歩いて行くのが面倒臭くなったのか、その場所から他の二隅の魔法陣にも同じように魔力を注ぎ込むと


「では、始めましょうか」


 と、ぐらうんどの中央へ歩き出した。

 あまりの魔力量の差に、ぐったりである。



「さて、改めて確認しますけど、ボツリヌス様は基礎四源全て習得したいとの事ですね」


「うむ。通常は基礎四源のうち一種類のみ使う一源特化が世の流れなのは知っておる。

 確か、発展四源を目指すためであるらしいの」


 まあ、私には発展四源なぞ使える日は永遠に来ないのであるから、一種類にこだわる必要は無い。

 模範的解答にオーダーは頷くと私に向かって手でV(ぴーす)さいんを作った。

 私もそれに応えて笑顔でV(ぴーす)さいんを返す。


「追加すると、一源特化が好まれるのは更に二つの理由があります。

 一つは使う魔法を絞った方が詠唱短縮が可能になりやすいという事です。」


 オーダーは無表情でピースサインを作った二本の指のうち中指を折る。

 なんとぴーすさいんではなく単に『2つ』と言うことを示していた様じゃ。

 未だ笑顔でぴーすを返し続ける私は馬鹿みたいでは無いか。

 オーダーも絶対勘違いすると解ってやっているのが腹立たしいが、教師モードよりはずっとましなので、耐えることにした。


「常人の魔力量は300程度、一源特化したとして使える魔法の数は30程度、基礎四源全てを習得となるとその数は四倍の120程度でしょうか」


 オーダーの魔力量と努力量を持ってしても詠唱短縮に成功した魔法は42個。いろんな魔法を齧っても大成はしないと言いたいのじゃろう。


「たくさんの魔法を中途半端に覚えるくらいであれば、少しの魔法を実際に使える物にした方が実践的と言う事か。

 それはそうなのじゃろうが、私の場合は魔力量は10、一源特化したとして使える魔法は2~3個、基礎四源全てを合計しても10個程度であるし、問題無いかと思うがの」


「……むぅ、確かにそうですね」


 オーダーは少し不満そうにしながら、気を取り直してもう一本の指を折った。


「そしてもう一つは、一源特化すると体がその魔法を出し易くなるという事が挙げられます。

 例えば私は水・氷特化でそればかり使っていますが、魔法を習い始めた時と比べて、水・氷魔法の威力自体が増え、消費する魔力量が減り、今まで魔力量の関係で使えなかった更に上位の水魔法も使用可能になりました。

 逆にその時と比べると、他の魔法は使いにくい体になっていると思いますが」


「それは確かにメリットがあるのう。

 しかし、私の使う魔法の消費魔力は少な過ぎて、これ以上減るかは微妙なところじゃ。

 威力自体もほとんど無いのでそれが二倍になったとしても微々たる物。

 今より上位魔法が使える様になるのは魅力的であるが……魔力消費50の魔法が25になったところで、その魔法を実践で使えるとは思えんしのう。

 何せ私の魔力量は10じゃ」


 オーダーは考え込んでしまった。

 オーダーと常人、そして私とではそれぞれ魔力量が違い過ぎる。

 魔力量が違うなら魔法の使い方が違って当然だと思うのだが、この世界では十把一絡げに一源特化を推奨しているのが不思議で仕様が無い。

 オーダーはぶつぶつ言ってはいるものの、納得はした様じゃ。


「ボツリヌス様がそうおっしゃるのなら、私ももう止めません。

 それでは、練習を始めましょう」


「では、オーダーの使う水魔法からやってみるかの」


「では、レベル1、消費魔力2の水玉からいきますか」


「水玉模様は好きじゃしの!」


「ボツリヌス様は気味の悪い水玉模様が好きですからね」


 今、さらっと毒を吐かれた気がするが、まあいい。


「では、まずは本を読んで詠唱してみてください。

 右手には本、左手にはコップを持ってください。

 あと、呪文は間違えたら最初からなので、間違えずに詠唱して覚えて下さいね」


「もう覚えておるから大丈夫じゃ……行くぞ。『果てなる命へ連なる赤き水よ!迂遠(うえん)の果てに故郷にたどり着く青き水よ!今こそその偉大なる循環の一滴をここに示し給え!水玉(ウォーターボール)』」


「魔力の流れをもっとイメージして下さい!放出準備のされている魔力量が大き過ぎています!」


 おっと、そうじゃった。

 魔力はもっと少量を出す想像(いめーじ)で。魔力量2か……このくらいかのう?


「……!!良いですよ、ちょうど今放出しているのが2の魔力量です!」


 目の前の空間を睨みつけておると、次第に全身が熱くなり空中に少しずつ水の玉が出来上がった。

 こっぷを差し出すと水の玉はぽちゃんとその中に落ちる。

 体を確かめてみるが、今度は前回の様な激痛は無い。


「素晴らしい。魔法は一発で成功、魔力量の捻出量も完璧でした。

 普通は何度かかかるんですが、うーん、ボツリヌス様には魔法の才能があるかもしれませんね!」


 オーダーは感心した様にそんな言葉を口にする。

 魔法関連で初めて褒められた気がするが、例え魔法を使う才能があったとしても魔力量が絶望的なのでこれ以上無駄な才能は無い。

 生み出した水であるが、呪文を唱えて喉が渇いたのでさっそく一息で飲み干した。

 初めて生み出した水はすぐに消えてなくなった。

 うむ、知っておるぞ。

 こう言う事を、まっちぽんぷと言うんじゃ。

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