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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
85/205

第84毒 猛毒姫、抜く

******************


 前回までのあらすじ


「ところでコレを見てくれ。コイツをどう思う?」

「凄く……聖剣です……」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。

 良い事思いついた、お前、コイツを抜いてみろよ

 女は度胸!何でも試してみるのさ」


******************



 ……そう言えばしばらく自分のすてーたすを見て無かったのう。

 久しぶりに見てみるか。


#################################


ボツリヌス・トキシン  女 5歳

二つ名:龍殺し(ドラゴン・キラー)・大聖女・聖女・毒女・毒舌娘

体力:86/100

魔力:9/10

スキル:鑑定LV3

魔力並列LV8

魔力流量感知LV8

覇気相殺LV1

神との対話LV1


#################################



 何これ(ごみ)

 あ、違った、私のすてーたすじゃった。


 最近見てきた能力表(すてーたす)が“いんふれーしょん”してるもんじゃから、私も何だか強くなった気がしておったが、勘違いじゃったか。

 ……それにしても体力は大分増えたのう。

 それなりに過酷な生活をしていたので、もっと増えて良い気もするのじゃが。


『ままままままま魔力10の勇者だとおおおおお!?

 ありえんありえんありえ――――ん!



 ダメダメダメ、貴様は勇者じゃありません。


 あーりーまーせーんー!!』



 むかっ。

 そんな言い方無いじゃろう。

 ……お、なんじゃ、この聖剣、雷魔法を使った時点で土台から取れかけておる。

 私の力でも抜けそうになっているではないか。

 どれどれ。



『こらこらこらこら、抜くな抜くな抜くなー!


 ええい、仕方ない、トラウマにしてやるぞ! 対象限定スキル “精神汚染”!!』



 聖剣が聖剣らしからぬ能力(すきる)を唱える。

 ……むむむ、なんだか、気分が悪くなってきた。

 龍族と対面した時くらいの気分の悪さじゃ。




 ……さて。

 抜くか。



『待て待て待て待て、抜くな抜くな抜くなー!


 ええい、殺したくはないが、止むを得ん! “精神汚染MAX”!!』



 ……ぬおおおお!

 こ、こ、これはあああああ!


 魔力を使い果たした時くらいの気分の悪さじゃ。

 聖剣め、本気で私を殺しに来ておるな。




 ……ふむ、まあ良い。

 抜くか。



『う、ウソだろウソだろウソだろ―――!? 抜くな抜くな抜くなー!


 畜生ォ、絶対抜かれんぞおおおお、“精神汚染”全力全開300%だあああああああ!!』



 ……こ、今度は魔力枯渇の気分の悪さを更に超えて来おった!

 ぐおおおおお、なんという苦しさじゃあああああ。



『そ、そうだろう、そうだろう!


 諦めて、その手を放すが良い!!


 って言うか、何故死なない⁉︎』



 精神的にこれほどの苦しみを得る日が来るとは、思わなんだぞ!








 ぐぬおおおおおおおおおおおお!









 さ あ、 盛 り 上 が っ て 参 り ま し た ! !





『 え 』




 それから30分間程、私は聖剣から精神攻撃を食らっておったのじゃが。



『ハァ、ハァ、ハァ……。

 ま、参った、我の負けだ……』



 聖剣が、降参した。



『し、信じられん……貴様、本当に生き物か?』


 うむ、生き物どころか、人間じゃ。

 ……本当じゃよ?



『こんな人間は、見たことが無い。


 ……成程、確かに。


 貴様の精神力があれば……或いは……』



 私が引っ張ると、土台からゆっくりと諸刃が持ち上がる。



『今まで、勇者に相応しい人間を、この我が選んできた。

 ……我の意志を超えて、自分から勇者になることが出来た人間は、貴様が初めてだ』


 すぽーん。

 小気味よい音がして、台座から聖剣が抜ける。


 私はそのまま仰向けにひっくり返った。


 後ろを見ると、アコギとブコツがぽかんとしておる。

 職員のお姉さんも同じ顔じゃ。






『我が認めよう!


 誇るが良い、貴様は、今日から勇者だ!! 』



「あ、すまぬ。

 そんな気は無いのじゃ」



 私は腰を(さす)りながら起き上がると、聖剣を台座に指し直した。



『え、え、ええええええええええええええ!? 』




「さて、アコギよ、ブコツよ。

 帰るか」





「「「え、え、えええええええええええええええええええ!?」」」




 3人が、声が枯れる程に大声を上げておる。

 お姉さんなんかは、そのまま泡を吹いて気を失った。

 なんじゃ、世話が焼けるのう。

 お姉さんを涼しいところに移動させて横向きに寝かせると、アコギとブコツは復活しておった。



「ぼ、ボツリヌス様、早く帰りましょう。

 聖剣を抜いたとなれば、一大事です。

 これは博物館の職員が見た白昼夢、という事にしておきましょう」



 アコギが私の肩を強くつかんでがくがく揺さぶる。


「そ、そうじゃな。

 そうしよう、さっさと立つのが吉じゃ」


 私達はすたすたと出口へと向かう。



『ほげええええええええ !? 』



 完全にきゃら崩壊した聖剣の声が聞こえたが、無視した。

 

************************************


 私たちは慌ただしく馬車に乗る。

 あのブコツですらわたわたしていて面白い。


 鞭の音がして、馬車が走りだした。


「あ、そうじゃ、アコギよ。

 ちゅーぶはあるかえ?」


「ちゅ、ちゅーぶ、ですか?」


「なんか、病人が鼻から通すやつじゃ」


「ああ、アレですか。

 荷馬車にありますよ……これですか?」


「すまんのう」


 私はするするとそれを鼻から胃へと通した。


「ぼ、ボツリヌス様、何を?

 いや、えーっと、と、というか、あれは、一体どういう事で……」


 アコギはいろいろ聞きたいことがあるようじゃが、残念ながら、時間切れじゃ。


「すまぬ、アコギよ、私は眠るぞ」


「……は?」


 私はアコギの言葉を遮った。


「そして、多分、1週間は目を覚まさぬ。

 大変申し訳ない」


 ぺこりと頭を下げた後。


 思った通り、私の意識はぶらっくあうとした。

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