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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
84/205

第83毒 猛毒姫、挑戦する

******************


 前回までのあらすじ


 漫画とかでロボットやアンドロイドについている例の耳のアレにはそろそろ名前が必要だと思います。


******************


 馬車に揺られる事、数日。

 王国へ着くのはまだ先になるようじゃ。

 アコギ達はあちこちの集落に立ち寄って物品を売り捌くとの事。

 私としては連れて帰って貰う身であるし、勿論文句をつける気もない。

 だらだら参ろうぞ。


 ちなみに本当はこの後妖精の里へ顔を出し、獣族の集落へも向かう予定であったが、『拉致篇』が長くなりすぎたのでかっとになると作者が言っておる。


 すまぬ、妖精王に獣族のケモノよ。


 残念ながら貴様らの活躍の場は、もう無い。


「ところでここはどの辺りじゃ?」


「そうですね……名目上は王国領土、実際は帝国との緩衝帯となっている地域です。

 ……そういえば、アレが近くに或るんですけど、ボツリヌス様は見た事ありますか?」



 あれとは、なんじゃろうか。

 アコギが楽しそうに話を続けた。



「聖剣『ヘキレキ』の刀身ですよ」



 なんと、勇者の聖剣か。


「勇者一行が力を付けている様で、そろそろ刀身を回収するとかしないとか。

 聖剣を見る事が出来るタイミングとしては、今回が最初で最後かも知れませんよ」


 ……そう言えばユウシャの奴ら、世界樹の枝を手に入れたりと着々と準備をしておる様じゃったしのう。

 

「もしよかったら、寄り道して欲しいのじゃが」


「畏まりました」


 アコギは笑いながらブコツに進路変更を指示する。


「アコギ、良いのか」


「良いさ、ボツリヌス様も我々の行商についてきて下さるのだ。

 我々としても、少しは観光めいた事くらいさせてあげなくては」


「……まあ、そうだな」


「2人とも、すまんのう」


 ブコツがぴしりと鞭を振るうと、馬はゆっくりと左の道へ曲がった。



************************************


「お1人様、1万ゴールドになります」


「高ァッ!!」


 辿り着いたのは『聖剣博物館』と言われる博物館じゃった。

 まさか聖剣のある場所が博物館になっておるとは思わなんだ。

 確かに非常に価値があるのは分かるが、それでも1万ゴールドというと、日本円で1万円である。

 高すぎるぞ、どうする商売人(アコギ)


「申し訳ありません、私、アコギと言う者ですが……」


「あ、アコギ様ですか、申し訳ございません!

 どうぞ、お通り下さい!」


 受付嬢は慌てて入場券を3枚手渡した。


「な、なんと、顔ぱすか……」


「いろいろと、持ちつ持たれつな商売ですからね」


 アコギは商人の笑顔をする。

 流石は阿漕な奴じゃ。



 博物館内には歴代勇者一行の歩んだ歴史の説明や、勝利品・遺品などが並んでおり、なかなかに興味深かった。



 そして博物館の最奥には。



「お、おおお。

 あれが聖剣ヘキレキか!!」


 まさに雷を思わせるような黄金の刀身が地面に突き刺さっておる。

 


「これは、もしやあれか。

 『抜けたら勇者』という奴か」


「そうですよ」


 そうだった。


「博物館の入館料が高いのも、このチャレンジ料がコミだからなんです。

 ちなみに以前ブコツも試してみましたが、無理でした」


「力任せにやって見たんだが、びくともしなかった」


 ……もしかして、私、抜けちゃったりするんじゃろうか。

 雷魔法、使えるし。


「せっかくじゃし、やってみるかのう」


 物は試し。

 万が一抜けても、戻せば良いし。


「えーっと。

 これって何処を捕まえて抜けば良いんじゃろう?」


「諸刃の部分を握っても大丈夫ですよ。

 勇者が斬ろうと思わない限り、絶対に物が切れないナマクラですので」


「それは凄いのう。

 よーし。

 では……」


 刃の部分を握って引っこ抜こうとするが。


「どうりゃー、とうー、全然抜けない」


「まあな」


「そりゃあそうですよ」


 私が、ふんぬー、と歯を食いしばっている様を。

 2人は可愛らしい物でも見るかのように笑っておる。

 くそう、馬鹿(たわけ)にしおってからに。

 やはり私では勇者にはなれぬのか。

 残念。



 ……いや待て、一応、雷魔法を流してみるか。



 ―――……パリパリ……―――



 魔力量1の雷玉(サンダーボール)を剣に流し込む。





 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!





 博物館が揺れる。

 アコギとブコツが笑った顔を引き攣らせる。

 入り口にいた博物館のお姉さんが飛んで来た。


「ちょ、え、え、えええ!?


 この聖剣の反応は……勇者様!? 」



 成程、この揺れは、聖剣が答えてくれたという事か。



『……雷魔法を使いし人族よ。

 貴様が次の勇者候補か?

 ……ほう、珍しい、女とは』


「ぬおあ!?」


 思わず諸刃から手を放そうとするが。


『驚くことはない、我こそは勇者を導きし聖剣・ヘキレキ。

 今、貴様の脳内に直接話しかけている』


 なんと、そんな事も出来るとは流石は聖剣様、凄いのう。


『ま、まあな。


 さて、まずは先に言っておこう。

 貴様は勇者では無い。

 単に、雷魔法が使えるだけのただの人間だ』


 そうじゃな。


『 !? 』


 なんで吃驚(びっくり)しておる。


『え、え、そ、そこは、だって、貴様。

 “ふざけるな、俺こそが勇者だ!”

 とブチ切れる所だろうが!! 』


 そ、そうなのか、申し訳ない。

 ……ごほん。


 ふざけるな、俺こそが勇者だ!


『その調子だ。


 ……ふん、笑止。


 それでは貴様には受け止められるか?

 勇者の苦悩、そして、その覚悟を!! 』


 聖剣がそう叫ぶと、突然私の頭に無数の記憶が駆け巡る。

 苦悩、迷い、絶望。

 決意、覚悟、希望。

 歴代勇者の栄光と挫折、その波乱万丈な生き様が脳内を駆け巡る。

 急激に情報を流し込まれたせいで、頭がくらっとした。


『さて、今日はこれで終わり……と』


 ん、何が終わりなんじゃ?


『ウ、ウワアアアアアアアアア!? 』


 え!?

 な、なんじゃ?


『き、き、貴様あああ!

 なんでこれだけの記憶量をぶち込まれて、失神しない!? 』


 失神?

 確かに、ちょっとくらっとしたが。


『普通はあまりの衝撃でその場で意識を失い、仲間に抱きかかえられて帰るんだよ!!


 そしてその後、“俺の覚悟が足りなかった”と心を入れ替え、鍛え直してから此処に戻ってくるのだ!!』


 ああ、そうなのか……。

 ……私もそうした方が、良いかのう?


『く、くそ、この餓鬼ィ……。

 良いだろう、確かに貴様は勇者になる覚悟を持っている様だ。


 ならば、そのステータスを見せてみよ!

 生半可なステータスでは勇者を続けることなど出来ぬぞ!! 』


 すてーたすか。

 確かに私のすてーたすは、生半可ではないが。


『くくく、成程、自信たっぷり、という訳か。

 言っておくが、我は歴代勇者のステータスを見てきた。

 貴様がどんなステータスだろうが今度こそ驚かんぞ!!』



 やっぱり、しょっちゅう驚いているのを気にしておる様じゃ。

 あと、どう見てもふらぐです、本当に有難うございました。



『ほざけ、貴様の力を見せてみよ、“鑑定”!!!!






 ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!! 』



 ……やっぱり、驚いておる。

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