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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
77/205

第76毒 猛毒姫、酒を勧める

ブックマーク60になりました!


「我はNiO!全宇宙の始まりにして、絶対不可避の理!

 ブックマーク?ポイントだと?

 そんな質量も熱量も持たぬ物にどれ程の確実性があるというのだ!

 残らず食らいつくしてやるるるるっ!!」


(まさかブックマーク60まで行くとは思わず、前回ので有名な死亡フラグは使い切った模様)

******************


 前回までのあらすじ


 ボツリヌス・トキシン

 空を飛ぶ程度の能力をもつ侯爵令嬢。

 当たり判定小さい幼女。


******************


 『鉱国の象牙壁』からの景色を見ていたら1日が終わってた。


 朝は朝日に染まる象牙壁を。

 昼は雲海の彼方に広がる青い空を。

 夕は夕日に燃える道の先を。

 夜は月の下に広がる満点の星空を。

 

 前世を含めてもこれほどの景色を見たことは無い。


 ……一度此処を離れたら、恐らくもう二度と戻って来れないことを考えると、『今夜も此処で露営(びばーく)するっちょ』と言う気持ちになる。

 少しでも此処に長く居たい。

 既に7日の夜を過ごしたが、全然飽きないのう。


 ちびちびとじゃむを舐めながら夕日を眺めておると。


「……ん、誰じゃ?」


 遥か遠く、象牙壁の道をこちらに向かって歩いてくる人影があった。




 …… こ ん な と こ ろ に 、 人 影 ????




 私は鑑定技術(すきる)を使用する。


*************

 ????? ???


???、???????????????????!????、??????????。

???????、????????????????。??????????????。


*************


 おお?

 ……全部、ばぐっておる。


 鑑定が妨害されておるのか?

 いや、そんな感じはしない。


 これは、以前もあった、あれか。

 世界樹(ゆぐどらしる)を鑑定した時のあれ。

 『人間の知性で理解するのが烏滸がましい』れべるの奴なのかもしれん。


 人影が軽く手を上げる。

 私も手を振りかえした。

 良かった。

 少なくとも、すぐに殺される事は無いようじゃ。

 

 次第に近づいてくる影を観察する。

 ……どうやら、15歳程度の少年の様じゃ。

 まあ、実年齢なんぞ分かったものではないが。

 少年は真っ黒い髪に真っ黒い目、そしてたった今火斗(あいろん)を当てたような、きっちりとした洋服と半ずぼんを着ておる。


 考えられる事は3つ。

 ①鉱人

 壁を守護している鉱人の可能性がある。

 しかし、鉱人の体は金属であると聞く。

 見る限り金属製ではなさそうじゃし違うじゃろう。

 

 ②神様

 鑑定を見る限り、十分考えられるが。

 ただ、流石にこの世界でも神様は人前に姿を現さぬ様じゃしのう。

 存在しない、とは言わぬが。


 そして3つ目が……。



「おお……、これが若干5歳のボツリヌス・トキシンか……まだ幼い」



 私が思考を巡らしている横で、5m程度の距離まで近づいた少年がそう呟く。

 私はその台詞を聞いて、確信した。


「……初めまして、賢者様(・・・)

 トキシン侯爵家令嬢、ボツリヌス・トキシンにございます」


 少年は、少し驚いた様な顔をして声を上げる。


「おお……。

 流石はボツリヌス・トキシン……この寒くて息苦しい、わけの分からない環境状態でも……。

 頭の回転が相変わらずズバ抜けているなあ……。

 でも、半分正解で、半分間違いかな……僕は賢者じゃあないよ……。



 ただの、時魔法使い(・・・・・)だ……」


 私が挨拶(かてーしー)から直って顔を上げると。



 そこには、どこまでも深く死んで腐り切った(・・・・・・・・)眼を持つ少年がいた。




 時魔法使い。

 特殊魔法の1つとされておるが、詳細が分かっておらぬ魔法である。

 詳細が分かっておらぬのに特殊魔法扱いされておる理由は。


 ……最低でも(・・・・)特殊魔法程度の魔法で(・・・・・・・・・・)あることが解っている(・・・・・・・・・・)からじゃ。


 まず、時を遡ることで、どんな傷でも治すことができる。

 それどころか、死者すら蘇生できる。


 ……この時点で、光魔法の上位互換じゃ。

 

 そして、これは私の憶測じゃが。

 時間遡行も(・・・・・)出来る(・・・)

 

 先ほどの少年の会話は、恐らく5歳以降の私(・・・・・・)を知っていることから出た言葉なのじゃろう。


 時魔法を使える者はどの国でも重要視され、いつでも『賢者』という国王に次いで2位の地位に就くことが出来る。

 魔法を使わないことで有名なあの武国ですら、『3本の矢』の上位に『賢者』の地位が存在する。

 しかし、今まで賢者の地位に付いた人間など聞いたことが無い。

 私の予想通り時間遡行が可能なのであればさもありなん、多分1人で世界を滅ぼすことも出来るくらいの魔法なんじゃから。


「それで、時魔法使いの方。

 こんなところまで一体、何のご用でしょうか」


「別に……。

 何でもないよ……」


 時魔法使いはそういうと、私の真横に腰を下ろした。


 ……おお?

 呼吸が楽になったぞ。

 しかも、空気も暖かい。


 此奴、自分の周囲にある空気の質を魔法で変えておる。


 恐らく時間を遡らせておるのじゃ。

 遥か太古の昔、酸素が濃かった時代の空気を持ってきておる。 

 なんじゃ時魔法、いんちき魔法じゃあないか。

  

「僕のことよりも……ボツリヌス・トキシンはどうするの?」


「む」


 話題を、私に移しおった、此奴。

 ……確かに、象牙壁の上で大分長い間過ごしてしまったのう。

 そろそろ決めねばならぬ。


 帝国側に降りるか。

 鉱国側に降りるか。


 ……と言うか、そんな事は私が勝手に決めることじゃし、大きなお世話じゃのう。


「そんな事はどっちでも良い」


 私は、敬語が不要であろうと判断する。


「こんなところで2人の人間が出会ったのじゃ」


 私は厳しい眼差しで、熊の袋を漁る。


「やる事なぞ、一つしかなかろう!!」


 そう言いながら、高々と。




 ……(ぐらす)を掲げた。




「美しい景色の前で酒を飲まぬと言うのは馬鹿のする事じゃ。

 しかし、独りで飲んでも空しい。

 時魔法の使い手じゃかなんじゃか知らんが、なんとも好都合。


 一緒に飯を食い、大いに酒を酌み交わそうぞ!」


 私の高らかな宣言を、少年はぼんやりと見ていた。

 ぬ、なんじゃ、なんじゃ。



「……僕は食事を食べなくても大丈夫だから……」


 すっかり腐った瞳をわずかに揺らして、彼は答える。


「そんな事は知っておる。

 時を遡らせれば飯を食わずとも夜に眠らずとも大丈夫じゃろう。


 ……じゃが、食べれない訳でもないし、飲めない訳でもなかろ?」


「……!!

 ボツリヌス・トキシン……。

 君は、どこまで時魔法を知っているんだい……?」


 ふむ。

 大分動揺しておるようじゃ。


「時魔法の時間遡行。

 ……これは私のただの仮説じゃが。


 もし本当に可能であれば……何とも残酷な魔法(・・・・・・・・)じゃのう(・・・・)


 何回でもやり直しが(・・・・・・・・・)出来るし(・・・・)

 何度でも生き返る事が(・・・・・・・・・・)出来る(・・・)



 お主はいろんな時代を、いろんな形で、いくつもの人生を、何千年も過ごして来たのじゃろう?

 ある時は王の横で賢者として。

 ある時は王自身となって。

 ある時は商人として名を馳せ。

 ある時は教会の頂点に立ち。

 まさに如何様(ちーと)


 そしていろんな生を過ごすうちに。

 あまりにも何でもできる自分に気が付いて。


 ……飽きちゃったんじゃろ(・・・・・・・・・・)?」 


 少年は激しく動揺しておる。


 図星か。


「何千年も何万年もたくさんの生を過ごして来たお主は、『すてーたす』も『すきる』も『称号』も、きっと滅茶苦茶なんじゃろう。

 すっかり神に近い生き物になってしまっておるんじゃろう。

 


 じゃが、神よ(・・)

 この景色を見てみよ(・・・・・・・・・)

 これに心が動かぬなど、動物や植物以下じゃぞ(・・・・・・・・・・)!!」


 私は立ち上がると、両手両足を力いっぱい広げる。

 少年はしばらく目を瞬かせた後、(おもむろ)に立ち上がりあたりを見渡す。


 雲平線に沈む夕焼け。

 今初めてその風景に気が付いたかの様に、その目は好奇心の様な物を取り戻しておった。

 ゆるりと、風が優しく頬を撫でる。


「……そうだな……。

 すっかり忘れていたけど……。

 此処は……良い景色だ……」



 腐っておった目が、多少は見れるようになっておる。

 気を許してくれたようじゃのう。


 ……くくく、掛かりおった。

 独りで酒を飲むのは寂しいから、言葉巧みに無理矢理誘っただけなんじゃが。

 なんか勝手に感動してくれておるし、らっきーじゃ。


 私は2つの(こっぷ)を取り出して、そこに持って来た葡萄酒を注ぐ。


「……ボツリヌス・トキシンはお酒を飲むの?」


「飲んだことは無い!

 今日が初めてじゃ!!」


 正確には前世では呑兵衛だったんじゃがの。

 一口位なら、大丈夫じゃろ。


「……呆れた」


 そういう割には優しい目をしながら、私から並々と注がれた(こっぷ)を受け取る時魔法使い。




「それじゃあ、えーっと……」


 時魔法使いは、ぐるりと周囲を見渡して、声を発する。



 まるで王を諌める賢者の様な。

 まるで民を(かしず)かせる王の様な。

 まるで相手に(おもね)る商人の様な。

 まるで信者を魅了する司祭の様な。


 いろいろな人生が入り混じった、それが、彼の、本当の(きもち)であったようじゃ。



「この美しい景色に、乾杯」

 一応宣伝……。

 短編書きました。

 人気はありません。


「この辺りの武闘派893達が幼馴染の委員長を拉致したので、ヤボ用が重なった俺とたまたま出くわしたDQNとオタクとで彼らを制圧する事にした」

http://ncode.syosetu.com/n9841cv/


 コレの続き物。

「凶悪なテロリスト達が中学校の全校集会の最中に乱入して立て篭もりを始めたので、屋上でサボっていた俺とたまたま一緒だったDQNとオタクとで彼らを殲滅する事にした」

http://ncode.syosetu.com/n6987cq/


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[良い点] 鑑定しても不確定名で人型のナニカなのに噴いた。
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