表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
74/205

第73毒 猛毒姫、盆に返す

******************


 前回までのあらすじ


 ゲザリストが、土下座されるという屈辱。


******************


 皇女と、国王と、帝王が、雁首揃えて、土下座しておる。


「ふむ……3人は、こうして謝っておるが……武王は謝る気は、あるかのう?」


 武王は「笑止!」と叫ぶと「ガハハハ」と笑った。

 ……え、今、笑止って言わんかったか?

 笑いが止まっておらんぞ。


「ボツリヌス殿の覚悟を不意にするような真似はしませんわい!

 命を賭しての覚悟には、命を賭しての覚悟で答えねば。

 例えその結果、儂の首が飛ぼうと、我が国が亡ぼうと!

 ま、ボツリヌス殿の前では、それすらも塵芥の様な覚悟ですがな!」


 ……やはり、此奴、私の事を英雄か何かと思っている嫌いがある様じゃ。

 最後まで謝る気は無さそうじゃのう……と思ったら、横の用心棒(ぼでぃーがーど)であるはずの、ツヨサとハヤサに何故か頭を殴られていた。


「武王殿下……。

 国益をご考慮下さい。

 貴方がすべきことは、此処で頭を下げる事でしょう」


「オヤッサン……空気読んでや……」


 と言う訳で、武国王もぶつぶつ言いながら3人に並んで土下座をした。



 ……いやいや、許す気は無いんじゃがのう……。

 などと思っておったが、落ち着いてみると、先程の悔しさや怒りは、すっかり収まっていた。

 5歳児の怒りなぞ、こんな物なのじゃろうか。


 ……そして、落ち着いて考えると。

 この状況は、流石にやり過ぎたかもしれんのう。

 ……ふむ。


「よーし、分かった。

 許す!!


 三方一両損じゃ!!」


 三方一両損どころか、私だけ一方三両損しておるのじゃが、まあ良い。

 私は、机の上にある零れた水を、『水操(ウォータームーブ)』を用いて、全て(こっぷ)の中に戻す。 

 足元の4人は、元に戻っていく水を無言で見つめておった。


「……さて、覆水も返った事じゃし(・・・・・・・・・・)

 一連の事件はこれにて終まいじゃ。

 今日のことは、ぜーんぶ、無し!


 しゃんでりあも落ちなかったし。

 私はフヨウ皇女を助けなかったし。

 皆は私に罪を押し付けなかったし。

 私も罪を認めて自己解体をしなかった。

 

 何も(・・)無かった(・・・・)


 は い 、 解 散 !!」



 私は笑顔を浮かべて振り返り、扉から出ようとする。



「ちょ、ちょっと待て、ボツリヌス・トキシン!

 お前……その体で……どこへ行くつもりだ?」


「おお、ストリー王か。

 別に、どこへ行くつもりも何も。

 5体は不満足とはいえ、まだまだ動けるからのう。

 適当に生きていくさ。

 ひとまずは、物乞いからでも始めるかのう」


「……え?

 お前、その体で生きていく事を受け入れた上で……俺たちを許したのか?」


「……ん?

 そりゃあそうじゃよ?

 ……どういう意味じゃ、セッカイ帝王?」


「……ガハハハ!

 流石はボツリヌス殿!!

 最後の最後に、器の大きさまで見せてつけてくれる!!」


 ショーバイ武王も笑っておる。

 ……なんで、笑われておるんじゃろ。


「ボツリヌス……いえ、聖女様。

 ……私にも、貴女の傷を癒すために、魔法を使う事をお許し頂けないでしょうか」


 フヨウ皇女が何故かそんな事を言い出した。

 ……そうは言っても、既に大体はマホウツカイに治して貰えたから大丈夫なんじゃがのう。


 いや、良く考えたら左手親指の付け根は火傷のまんまじゃな。

 これだって別にマホウツカイに頼んで治して貰えば良いんじゃが、フヨウ皇女も罪滅ぼしの1つでもしたいのかもしれん。

 ……まあ、良いじゃろ。


「じゃあ、お願いしようかの」


 フヨウ皇女はほっとした顔をした後、聞いた事も無い呪文を唱え始めた。

 流石は1国の皇女、超上級の回復魔法なのかしらん。

 ……成程、これは凄いのう、体中から生気が満ち溢れてくるようじゃ。


 フヨウ皇女が呪文を唱え終わる頃には、すっかり体の調子が元に戻っておった。


「ふむ、流石は皇女か。

 体が軽い。

 まるで、指やら腕やらがもとに戻ったかのようじゃ!」


 フヨウ皇女は罪を償えた犯罪者の様に、疲れた笑顔を浮かべておる。

 

「そう、ですか……うまくいって、良かった、です」


「「「「ボツリヌス(ちゃん)ー!!」」」」


 皇女と話しておる最中なのに、後ろからユウシャ一行(ぱーてぃー)が抱き着いてきおった。


「なんじゃお主ら!

 今はフヨウ皇女と話している所であるに!」


「もどにもどっで、よがっだ、よがっだよー、ぼづりぬずぢゃんー、うえええええええええ」


「ええい、マホウツカイよ、離すのじゃ!」



 私は問答無用で抱き着いてくるマホウツカイを両手で押しのけた(・・・・・・・・)







「……両手?」


 あれ? 右手が戻っておる。

 ……良く見たら、左手親指も、左目も、髪の毛も、元に戻っておった。


「あれ? あれ? あれ? なんでじゃ?」



 混乱する頭でフヨウ皇女を見つめる。





 ……あっ。


 そうか!



 皇国の皇女というのは、世襲制ではなく、実は一般市民から選ばれる。


 皇女になるための資格は只1つ。


 『特殊魔法 光魔法が使えること』


 恐らく世界でも1人か2人しか使い手のいない稀少魔法。

 勇者の『雷魔法』や魔王の『闇魔法』とも並んで比されるその能力は。




 ……死亡以外の、全ての状態(すてーたす)異常の完全回復、じゃった。



 フヨウ皇女は、ぎこちない笑顔で、此方を見返す。



「今日は何もなかった、ですものね。

 私も、覆水を元に戻させて(・・・・・・・・・)貰いました(・・・・・)



 他の奴らもなんだか嫌な笑みを浮かべておる。


 なんじゃ、此奴ら、こうなる事を知っておったのか。


「成程、これは一本取られたのう!」


 ちょっと恥ずかしかったので、私は呵々大笑して誤魔化すことにした。

というわけで、胸糞回と思いきや、光魔法説明回でした。

……怒らないでね、テヘペロ☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ