第72毒 猛毒姫、嘲笑う
※※※注意※※※
グロいよ〜。
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前回までのあらすじ
もぅマヂ無理。
濡れ衣、着せらレタ。。。
ぃま手首灼いた。
身が焦げ、燻っている。
一死を以って大悪を誅す。
破動の96 「一刃火葬」
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帝国の部屋の一室。
中は、血の臭いで充満しておる。
ストリー王の目の前にうずたかく積まれた、私の髪の毛と、皮膚。
国王は顔色を青から白に代えて、小刻みに震えておった。
自分の仕出かした事の恐ろしさに、今頃気づいたようじゃ。
貴様は、国王じゃ。
子供だということでは、許されはしない。
私の後ろではマホウツカイが、「ぐぐうっ……うぐぐふうぐうっ、ぼ、ぼづり、ぐうう、ぢゃんの、が、がみのげがああ」とか何とか、呻きながら回復魔法を掛けてくれておる。
……残念ながら、毛根からいったからのう、髪の毛ももう、生えてこない部分の方が多いじゃろう。
「さて」
私は視線を移して話しかける。
「皇女猊下。
『けじめ』についての御所望はありますでしょうか。
もちろん、1番被害を被った猊下にこそ、1番大きな『けじめ』を付けて頂くのが当然でしょう。
それこそ、脳でも、心臓でも」
「わ、私は……こ、こんな事になるとは……」
「思いもしなかったのでしょうね。
ですが、そんな事は、関係ありません。
さあ、ご決断を」
「い、嫌です! 私には、けじめなど、いりません!」
余りにも往生際が悪い女じゃ。
「おい……皇女よ。
吐いた唾は、飲み込めないのじゃ……。
諦めて、一生十字架を背負え」
「うう……ぐぐぐううう……」
「フヨウ!!」
「ぐ、ぐうう……こ、こ、この者の!
右腕を!
は、刎ねなさい!!」
命の恩人の利き腕を失わせると言う、目も眩むような悪行。
皇女はその言葉を口にした後。
地面に這い蹲って、耐え切れずに、吐いた。
「ふむ。
流石に、右腕は自分では無理じゃからのう。
お、そうじゃ、ハヤサよ。
お前が美しいと称賛したその日本刀の刀身、見てみたいんじゃが」
武王の隣に侍っていたハヤサは、あからさまに顔を歪めながら此方に話しかけた。
「俺に振るかよ、それをよぉ。
……ボッさん……アンタも、女だてらに武士だったんだなぁ。
いや、武士でもこんなことは出来ないなぁ。
オッチャンにも、ちょっと真似できないよ……多分、ウチのオヤッサンも、感動してると思うわ」
「黙れ、ハヤサよ。
ボツリヌス殿が、御待ちだ。
早く切って差し上げろ……成るべく、痛くないようにな」
ハヤサの軽口を、武王が窘めた。
おやっさんって、多分、武王の事じゃな。
武王は他の3人が顔色を青くする中、唯一私の行動と決意に敬意を表しておった様じゃからのう。
感動しているかどうか分からぬが、先程よりも言葉遣いが丁寧になっておる。
認めてくれはした様じゃな。
「りょーかいです。
それじゃボッさん、一瞬だから、良ーく見といてなー」
などと、とろ臭く喋っているかと思うと、「みといてなー」の「て」の辺りで「ヒョウ」と音がして、私の右腕が落ちた。
おお、流石は『速度のハヤサ』。
全然、見えんかったわ。
「どう?
可愛いやろ、ウチのマンドラゴラちゃん。
鳴き声を聞いて死なんかったのは、ボッさんが初めてかもなー」
私は脇の下の動脈を押さえながら、笑顔を作る。
「うむ、有難うの、ハヤサよ。
そっちの引っ込み思案で可愛い娘っ子にも、後でお礼を言っておいておくれ」
私は最後に右腕の切り口をマホウツカイに回復してもらうと。
4人に向かって挨拶をする。
右腕も、左親指も無いので、殆ど只の礼なんじゃが。
「皇女猊下、武王殿下、国王陛下、帝王閣下。
大変拙い語り部で御座いましたが、お楽しみ遊ばされましたでしょうか。
それではまた、お互い、生き延びる事が出来ましたらお会いしましょう」
「……おい、ちょっと待て、ボツリヌス」
私の挨拶を、セッカイ帝王が邪魔した。
「お互い、生き延びることが出来たら?
いや、お前は、……その、分かるが。
どういう意味だ?」
「おや、分かってなかったのかのう?
私の復讐が、これからだという事を」
セッカイ帝王は、何が何だか分からぬ顔をしておる。
ああ、面白い。
すっかり安心しきっている顔が、これから歪むことを、考えると、のう?
「ところで。
『王様と貴族令嬢』の上演は、これ以上は続けられないじゃろう。
何しろ主人公が、犯罪者なのじゃから。
国ごとに規制に持っていかんとのう」
4人は阿呆面して頷いておる。
うむ、これは決定事項じゃろう。
「民衆は思うじゃろう。
『何故、突然?』と。
そして、誰かが辿り着くはずじゃ。
密室で、4人の国の頂点に蹂躙された5歳児の話に。
指を落とされ、目をくり抜かれ、髪を引き千切られ、腕を落とされた、哀れな聖女の話に、のう」
「……それは、貴様が自分で犯罪者だと自白して、自分でやったことだろう!」
「そうじゃな。
では、民衆にそう説明するが良い。
5歳児が皇女殺害を企んだので、4人で『けじめ』を付けてやったと。
これは、『正しい行為』であったと。
……果たして、何人が信じてくれるかのう?」
そこまで話をすると、ショーバイ武王が「ガハハハ」と高笑いをした。
「なんと!
ボツリヌス殿は、そこまで考えておったのですか!
今までの行為、そして、その体の代償は……我々4人の首と、4つの国、と言う訳ですな!!」
「えっ? えっ?」
ストリー王が?マークを浮かべて、まだ理解できていない様なので、改めて説明する。
「事実がどうであるかは別として。
普通に考えたら。
『聖女とすら謳われた5歳の少女に、無実の罪を押し付けて瀕死の重傷を負わせた王達』じゃろう。
勿論、私も頑張って、その様に喧伝させて頂く。
こんな体じゃし、同情票はいくらでも貰えるはずじゃ。
旗印くらいには、ならせてもらおうかのう。
恐らく、良くて首のすげ替え。
悪ければ、国家転覆も有り得るじゃろうなあ」
そして、必ず4つの国家、その全てを転覆させて見せよう。
私と弁舌で戦うなぞ、B29 と竹槍の戦いであることを思い知らせてやる。
私が呵呵大笑していると。
青白い顔をした皇女と、国王と、帝王が。
……雁首揃えて、土下座した。