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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
70/205

第69毒 猛毒姫、なんか貰える

ブックマーク50になりました!

有難う御座います!!


体が軽い……。

こんな幸せな気持ちで小説を書くなんて初めて……。



もう何も恐くない━━━!

******************


 前回までのあらすじ


 おお ぼつりぬすよ しんでしまうとは なさけない


******************



 ……目が覚めると、ベッドの上で寝かされておった。


「ぼ、ぼづりぬずぢゃんー!!」


 マホウツカイを始め、ユウシャぱーてぃーの面々が横で待機しておった。


「……私、死ななかったのか。

 正直、回復が間に合うとは思わなんだぞ」


 率直に感想を言うと。

 若干涙目のユウシャ一同が話し始める。


「か、軽いなぁ、ボツリヌスは」


「いや、普通なら死んでましたよ。

 フヨウ皇女が半狂乱になって、ガクシャと一緒に、皇国の技術の粋を集めたであろう、訳の分からない回復アイテムや蘇生魔法をガンガンにぶち込んでましたからね」


「そうなのか。

 後で有難うしとかんとのう……あれから、どのくらい過ぎたのかのう?」


「まだ、2時間と言ったところだ」


 2時間か。

 とりあえず起きようとすると、マホウツカイが押さえつけた。


「寝てなさい、ボツリヌスちゃん」


「それにしても、本当に例の『聖女様』なんですねぇ。

 とっさに、人のために命を掛けることが出来るなんて」


「僕は……ユウシャ失格だ……」


「……」


 なんだか、全員反省しておる様じゃ。

 あの状態で、すかさず行動出来るのは只の馬鹿だからなんじゃが。


 ……只まあ、ユウシャ達はそれが出来んといけんからの、特に突っ込まないで置こうか。



 ガチャリ



 突然開かれた扉に視線を向けると。



 丁髷(ちょんまげ)に細身の体の侍が現れた。

 厳しそうに細められた目が怖いのう。


「おお、確か……『ハヤサ』様ですかね。

 どうされました?」


 とりあえず敬語で聞いてみると。

 ハヤサはゆっくりと口を開いた。


「どもー。

 ハヤサゆいます。

 ちょっとボツリヌスはんお借りしても?」


 なんか軽薄な言葉が返ってきた。


「ダメです。

 ボツリヌスちゃんは療養中です。

 リョウヨウィング」


 ソウリョが私を庇ってくれた。

 此奴の性格(きゃら)は、やっぱりわからぬ。

 しかし、ハヤサの方も眉を吊り上げ、静かに怒ったような表情を作る。



「んー、そんなんゆーても、例の4人様のご意向なんですわー。

 ゴイコウィング」


 ……ハヤサの性格(きゃら)は、もっと分からぬ。


「……まあ、行こうかのう。

 もしかしたら、何か良い物とか、呉れるかも知れんしの」


 私はべっどから飛び降りた。


*********************************


 

 廊下をハヤサと並んで歩いておる。

 後ろからはユウシャ一行(ぱーてぃー)が気を張りながら付いて来てくれておる。

 ……然しまさか、此の世界で丁髷を見る事に成ろうとはのう。

 折角の機会なので、私はハヤサと会話を試みる事にした。

 此奴はまあ、ため口で良いじゃろ。


「ハヤサよ、其れはもしかして、日本刀かの?」


「おお! 分かるぅ? ボッさん」


 ……ボッさん……。


「これは、武国(ウチ)でも最強の10本に数えられる名刀、『マンドラゴラ』ちゃん。

 とっても、可愛いんよー!!」


 相変わらず厳しそうな顔で、刀を軽く持ち上げる。

 何だか日本刀の割には、日本刀っぽくない名前じゃのう。

 ……『マンドラゴラ』か……。


「お、分かったぞ!

 『名刀・マンドラゴラが一度(ひとたび)引き抜かれれば、鳴き声を聞いた者は残らず命を落とす!』とか、其う言う台詞が或るのじゃな!!」


「え、バレた!?

 って言うか、分かっててもこっちが解説するまで言うなし!」


 ハヤサは相変わらず怖い顔で舌打ちをする。

 うむ。

 表情と喋りに差異(ぎゃっぷ)があるが、とりあえず喋りを優先して良いようじゃ。


「オッチャンがあんまし敵を皆殺しにするもんだから、刀にそんな名前が付いちゃった。

 ホントーは刀身がとーっても綺麗なんだけど、不吉だからあんまし人には見せられないんだよねー。

 御免ね!!」


「ふむ、残念じゃのう……所で、日本刀の『日本』って、どういう意味なんじゃ?」


 ちょっと鎌を掛けてみたが。


「知らんなー。

 太陽みたいに光るからかいねー?」


 全然無知じゃった。


「……ところで話は変わるけど、ボッさん。

 皇国の皇女さんのこと、なんで助けたん?」


「え?

 いや、理由を探していたら“しゃんでりあ”落っこちてたじゃろう。

 そんなの探す暇は無かったぞ」


「……そっか。

 ボッさん、ホントーに良え子やんなー!

 100点万点!!

 飴ちゃんあげる」


「わーい!」


 素直に飴ちゃんを受け取る私。

 うまうま。


「……それから、ボッさん、1つ、忠告しといたるよー。

 ……これから、もしかしたらショックな事が起こるかもしれん。

 でも、素直ォーに喋ったら、悪いようにはならん。

 オッチャンからの、アドバイス」


 なんだか悔しそうな顔をしながら、ハヤサは私に呟く。


「しょっくな事……?」


 私の疑問に答えず、ハヤサは廊下奥の扉の前で立ち止まる。


「失礼します、『武国3本の矢』が1本、『速度のハヤサ』、参りました!」


 おお、此奴、意外とちゃんと喋ることが出来る様じゃ。


「入れ」


 中から許可を貰い扉を開けると、そこには円卓を半分にした机に座る4人がいた。

 4人とはもちろん、皇国王(フヨウ)武国王(ショーバイ)王国王(ストリー)帝国王(セッカイ)の4人じゃ。

 周りには、それぞれの用心棒(ぼでぃーがーど)も立っておる。

 ……なんだか大々的じゃな、一体何が貰えるのか知らん。


「ボツリヌスよ……貴様は、金魔法が使えるのだな……」


 喋りかけたのは、武国王ことショーバイ武王じゃ。


「……ええ。

 例の……絶食をしている間に、その力に目覚めました」


 嘘は言っておらん。

 ……塩が欲しくて作ったことは言わぬが。


「……そうか」


 4人の国の王が、気まずそうな、憐れむような顔をしたのが印象的じゃった。

 ……何か、貰えるんじゃないのか?


「それならば……。


 お前しかいないな」



 武王は鷹揚に頷くと、厳しい声で私に話しかけた。





「シャンデリアを落とした犯人は……貴様だな?」




 命を懸けて皇女を救った私がまず最初に貰ったものは。



 ……『皇女殺し』の濡れ衣じゃった。


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