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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
拉致編
69/205

第68毒 猛毒姫、助ける

******************


 前回までのあらすじ


 聖女様が、2人 !?


******************


「まず最初に、無礼を承知で申し上げます」


 とりあえず私はちょこんとお辞儀をして4人に向かって宣言する。


「私には、皆様にお教え出来ない事も多数あります。

 どうか、ご了承ください」


「ええ、聞かれたくないことがあれば、無理には聞かないわ。

 それで……聖女様の絶食期間は、本当は何日だったの?」


 私の無礼な発言も快く聞き流したフヨウ皇女は、わくわくを押し隠すように私に質問した。


「実際は、20日、ですね」


「「「 20日!? 」」」


 ストリー王以外の全員が驚いておる。


 む、しまった。

 説明不足じゃった。


「いえ、そのうち実際絶食だったのは、たった10日間だけでしたが」


「「「 たった!? 」」」


「え、ええ、そうです。

 実際は、投獄初日に脱獄して……」


「「「「 脱獄!? 」」」」


 今度はストリー王も驚きの輪に加わった。


「ええ。

 そして、たまたま熊を殺して」


「「「「 熊を!? 」」」」


 ……そんな感じで私は、今は懐かしき暖心拷問生活はとふるぼっこ・らいふを語った。

 もともと前世では語り部みたいなことをやっておったからのう。

 4人とも途中からは目を輝かせて無言で私の話を聞くような形になっておった。



「そして、とうとう運命の20日目が来ました。

 私は相も変わらず階段をぼーっと見つめておりますと。

 突然地下室に、見目麗しい美少年が現れたのです。

 髪の毛も目も大炎を思わせる様な燃える様な紅。


 そう!

 ご存知、我らが王国の主。

 ストリーⅢ世国王陛下、その人でした!!」


「「「 来るのが、遅すぎる!! 」」」


 私が思いっきりストリー王を持ち上げるような語り方をしたにも関わらず、他の3人は、ストリー王を責めるような突っ込みを見せた。

 ふむ。

 私の語り口に、完全に感情移入しておるようじゃな。


「そして、国王陛下は私に向かってこういったのです!」


 (ぐぎゅるるるるるる~)


「「「「 ぐぎゅるるるるるる~? 」」」」


 そんなこと言ったか?とストリー王は一瞬訝しんだ。

 違うんじゃ。

 これは、たまたま私の腹の音が鳴っただけじゃ。


「……おお、これは失敬。

 ボツリヌス嬢は、食事も取らずに話しておったのだな。

 ほれ、食べさしで悪いが……肉なんぞどうだ?」


「いえいえ。

 高貴なるお方達とご相伴に預かろうだなんて……」


 必死に断ろうとするが、4人とも自分たちの食べさしをぐいぐいと押し付けるので。

 しょうがないので、全部食べることにした。

 うまうま。

 私が必死に食事をかっ込む様子をにまにま見ていた4人であるが。


「ちょっと失礼しますね。

 あ、聖女様、私がいない間に続きの話をしないでくださいよ?」


 そんなことを言いながらフヨウ皇女が中座する。

 ……この聖女、なんか、軽くないか?

 口をもにゅもにゅ動かしながら、らじゃーの姿勢(ぽーず)をとったら、笑われた。

 何故じゃ。


 ひとしきり腹を膨らませると、私はフヨウ皇女の帰りを待ちながら、どうやってストリー王との出会いを劇画的(どらまてぃっく)に表現しようかと考えておった。


 ……うむ、やはり雷の使い手との出会いであるからの。

 『晴天の霹靂』?

 いや、陳腐じゃがここは『電撃が走った』で良いじゃろう。


 そんなことを考えていると、フヨウ皇女が御付きの……『皇国の両翼』の1人であるガクシャを連れて戻ってきた。


 フヨウ皇女が、私に向かって軽く手を振る。

 次の瞬間。





 メキメキメキメキメキ!!




 訳の分からない音が皇女の頭上から響いた。

 私が驚いて視線を上げると。





 巨大な“しゃんでりあ”が。

 聖女の頭上目がけて、落ちてきた。



 一瞬、私の中の時間が止まる感じがした。


 フヨウ皇女は全く気づいておらぬ。

 ガクシャはぽかんと上を見て固まっておる。

 ユウシャ一行も、驚きで全く動きを見せていなかった。

 他の用心棒(ぼでぃーがーど)達は、自分たちの主をとっさに守っておる。



 今動けるのは、私しかいない様じゃった。




金操(ゴールドムーブ)!!」





 私は魔法を唱えながら駆け出す。

 “しゃんでりあ”は一瞬動きを遅らせる物の、構わず落ちてくる。



金操(ゴールドムーブ)!!

 金操(ゴールドムーブ)!!

 金操(ゴールドムーブ)!!」


 魔法を唱え続けて、なんとか落下を食い止めながら、フヨウ皇女の元に辿り着くことが出来た。


「えっ」


 そのまま勢いに任せてフヨウ皇女に体ごとぶつかって吹き飛ばす。


金操(ゴールドムーブ)!!」


 再度金操(ゴールドムーブ)を使用し、“しゃんでりあ”の動きを止める。

 そして、同じく動けなくなっていたガクシャを、逆さいどに押し出す。


 2人が“しゃんでりあ”のぶつかる範囲にいないことを確認し、自分も脱出を図る。



「もいっちょ、金操(ゴールドムーブ)!!

 ……ぐうううう!?」



 再度魔法を唱えるも、いつかの様に、魔法が頭の中で歯車の様にがりがり言って発動せぬ。


 しまった、使い過ぎた。

 ……魔力切れか!



 魔力0による激しい倦怠感で動くこともままならない私の上に。

 相当な重量の“それ”は容赦なく落ちてきた。

 



 がしゃーーーーん!!





 全身が叩きのめされ、一気に力が抜けていく感覚。


 間違いなく、体力 0の、魔力 0。


 ああ、死んだな私……などと思いながら。

 唯一聞こえる耳で。



「ああああああああ! 聖女様!! お願い!

 この娘は、皇国の恩人です! 絶対死なさないで!! 

 ああああああああ!」



とかいう台詞が、遠くから、聞こえた。

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