第67毒 猛毒姫、胃に穴が空く
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前回までのあらすじ
キャラとか、めっさ増えた。
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重々しい空気の中。
各国の頂点たちが、部屋の中央に集まった。
4人は各々の用心棒達から、おそらく葡萄酒と思われる杯を受け取る。
「我ら4国に、栄光あれ!」
歓待役のセッカイ帝王がそう叫びながら杯を掲げると。
「「「栄光あれ!!」」」
他の3国が続けるように杯を打ち合わせた。
ああ、しかし、なんという宴会じゃろう。
……誰1人、目が笑ってない……。
「……まあ、各国のお国事情などどうでも良い。
乾杯も済んだようじゃし。
あの”ばいきんぐ風”の食事は、もう食べても良いのかのう」
流石に拷問+絶食3日目でお腹がすいたぞ。
「「「「あっはっはっは!!」」」」
……何故か勇者一行に爆笑された。
「ボディーガードの僕たちが、ご飯を食べて良いわけ無いじゃないか。
馬鹿だなあボツリヌスは」
「ふむ、そういえばそうじゃな。
……え。
ぬなななな!?」
本気か!
え? ご飯無し?
私はなんでこの宴会に参加したんじゃろ?
……まあしかし、確かに、あんなお偉いさんたちに混じっての食事など、食べても味がせんじゃろうし。
宴会終了後に、残り物に有り付くとしようか。
涎を垂らしながら偉い4人がちょこちょこ食べてる肉や魚たちを見ておると。
……何やら爺やがこそこそ動き出して。
ストリー王にぼそぼそ話しかけておる。
ストリー王は驚いたように此方を見つめて。
「ボ……ボ ツ リ ヌ ス・ト キ シ ン !?
何故、貴様がここに!?」
と驚愕の悲鳴を上げた。
大声で恥ずかしいのう。
声を掛けられたからには、一応、挨拶した方が良いのかしらん。
などと思っておると、周囲の何人かが、ざわつき出した。
なんじゃ、なんじゃ?
「え……?
ボツリヌス・トキシンって!
もしかして、もしかして!
『王様と貴族令嬢』の主人公の……『聖女様』?」
皇国、フヨウ皇女が目を輝かせながら呟く。
聖女様は、お前じゃ。
「……おお、おお!
どこかで聞いたことがある名前だと思えば!
いやあ、あれは感動的な話でしたなあ……。
御恩と奉公、ウチの者にも見習わせてやりたいもんですわい!」
武国、ショーバイ武王が豪快に笑いながら此方に目を向ける。
……あれは、御恩と奉公の話ではないのじゃが。
「あ、うう。
……失敬、驚きのあまり突然叫んでしまいました」
王国、ストリー国王が3人に向けて頭を下げる。
というか、私にも謝れ、どきっとしたわ。
「おお……まさかアイツが……。
って言うか実話だったのか……」
帝国、セッカイ帝王はいつも通り、ぼーっとしておる。
なんと凄いぞ『王様と貴族令嬢』、国の頂点4人全員見てるとは。
ここで、先程まで目をきらきらさせていたフヨウ皇女が我に返ったようで、ごほんと咳払いをする。
「ええっと。
私から皆様に提案があるのですが。
4か国の話し合いも重要ですが、ここはパーティー。
無礼講の場。
もともとは我々が個人的に交流を深め、楽しむ場であると認識しております」
皇国、フヨウ皇女が真面目な顔をしながらちらっ、ちらっとこっちを見ておる。
「その通りですな!
ここは国の政の話をする場ではなく。
我々の交流を深めるための話をするべきでしょう。
例えば、演劇の話とか、ですかのう!」
武国、ショーバイ武王が何やら外堀を埋めてきおった。
「……なるほど、そうであれば、ちょうど良い。
我々の会話を盛り上げてくれる、うってつけの人材がいますよ」
王国、ストリー王は、流れに逆らえず、仕方なく相槌を打った。
もう、嫌な予感しかせぬ。
「ボツリヌス・トキシン……こっちへ、来い」
帝国、セッカイ帝王が手招きをした。
……胃に、穴が空きそうじゃ。
「僭越ながら、皇女猊下、武国殿下、国王陛下、帝王閣下のお話の一助をさせて頂きます。
トキシン家が3女、ボツリヌス・トキシンに御座います。
大変拙い語り部で御座いますが、どうか宜しくお願いいたします」
私は諦めて、4人に向かって挨拶をする。
その背後で。
「え、ボツリヌスちゃんって、あの演劇の女の子のモチーフ!?
ああ、でも!
演劇の子よりも、ボツリヌスちゃんの方が、可愛い!!」
とかいう声も聞こえたが、無視した。
……ついこの間の話じゃぞ?
どんだけ見られてるんじゃ、あの演劇……。
演劇が開始して、まだ半年くらいしか経ってないのにね。