第64毒 猛毒姫、拷問を語る
うああ、ポイント有難うございます!
あ、あと、『ブレーメンの屠殺場』も、見にきてね!
しばらくは、あっちにかかりっきりだよ!
******************
前回までのあらすじ
なんだか新キャラが続々増えてるけど。
第3部は『風呂敷広げ回』なので。
登場人物はまだまだ増えますよ。
あ、あと、割とどうでも良いけどボツリヌス様が拷問されるみたい。
******************
なんか私、拷問される様じゃ。
「こんなことになって申し訳ありませんが……貴女様が怪しい人物であることも事実」
帝王御付きの者が申し訳なさそうに頭を下げた。
「ふむ、ふむ! 仕方が無いのう!
仕方が無いから、拷問部屋へ、案内せい!
仕方が無いから!」
なるべく興奮しているのを悟られ無い様に御付きの者に話しかけると、何故かぽかんとしておった。
何故じゃ。
地下室へ降りながら、御付きの者が話しかける。
「これから拷問を担当する者は、この国でも最もおぞましい拷問を行うことが出来る者です。
もし、隠し事が御座いましたら、早めにお話しいただくことをお勧めします」
「この国で、最もおぞましい拷問を行う者、じゃと!?」
私の食いつきに、御付きの者が若干引いておる。
「つまり、特級! 特級拷問士、というわけじゃな!」
「え? ま、まあ、そうとも言える……のかな?」
私はわくわくを抑えきれずに拷問室の扉を開ける。
無機質な分厚い金属の扉を開いたその先にいたのは……
……じぇ○そんの仮面を被った、むきむきの男じゃった。
「彼が、拷問士のゴウモンです」
「」
「……あれ、何か?」
「なにこれ、“がん萎え”なんですけど」
「え? 何か、駄目でしたか?」
「特級拷問士なら、美少女と決まっておろう!
なんでこんな、『オレ オマエ マルカジリ』きゃらが出てくるのじゃあああ」
期待を裏切られた私は床に崩れ落ちると、地面に向かってだんだんと拳を振り下ろした。
「え、いや、そんなことは」
「オレ オマエ マルカジリ」
「ほれ、言っておるし!」
御付きの者は苦笑いを浮かべて早々に拷問室を後にした。
打ちひしがれている私に少し同情するかのように、やや引き気味にゴウモンが私に声をかけた。
「ジャア ハジメルゾ。
カクシテイル コトガ アッタラ イマノウチニ イッテオケ」
ぬう。
がっかりしてしまったが、此奴も腕は確かなようじゃ。
「くっ、殺せ!」
じゃからとりあえず、そんな言葉を吐いてみた。
*********************************
「……5サイジ ノ クセニ ヨク ガンバッタナ……
キョウハ コレデ オワリ ダ」
「ぐぐぐ……おお……さすがは特級。
素晴らしい腕前じゃったぞ!!」
多彩な拷問に加えて魔法を使っての繊細な回復。
これは成程、さすがは特級と言わざるを得まい。
私を散々打ちのめすと、ゴウモンは部屋から引き上げようとした。
「……おい、ゴウモンよ、ちょっとここに座れ」
私はなるべく威圧感を出してゴウモンに話しかけた。
「ナンダ マダ ゴウモン サレタリナイノカ」
「……まあ、ぶっちゃけ言うと、その通りじゃ」
「……!?」
ゴウモンがびびっておる。
「ゴウモンよ。
貴様、今の自分の腕前に満足か?
更に上を目指す気は無いのか?」
「……ハ? ソレハドウイウ……」
「指を【ノクターン】する拷問をしたが……何故その前に、爪を【ノクターン】しなかった!」
「……!! ソ、ソレハ」
「瞼を【ノクターン】するのは、なかなか新鮮な経験じゃった。
だが、お主はその後、水攻めをしたな。
乾いていた眼球が潤ってしまうじゃろう!!」
「ウ、グ、グ」
「あと、水をくすこで飲ませた後に更に水攻めを加えたな……
あれ、私じゃなかったら溺水で死んでたぞ?
調整もまともに出来ておらんではないか!!」
「ナ、ナンダト!」
「お前の拷問から、拷問に対する愛を感じた……。
……じゃからこの際、はっきり言っておこう。
お前の拷問には、話筋性が無い!!」
「ストーリーセイ!?」
「しかも、拷問に対する性格が立っていない!!」
「キャラクター!?」
「拷問とは、拷問士と被拷問士とが奏でる芸術!
貴様は、芸術を理解していない!!」
「ウ、グ、グ!?
ナ、ナンナンダ キサマハ!」
ゴウモンはいくつか自覚があるらしく、図星をつかれたところもあった様じゃ。
悔しそうに私に向かって声を張り上げた。
「ジャア キサマナラ ドンナ ゴウモンヲ スルンダ!!
ドンナ “げいじゅつてき”ナ ゴウモンヲ!?」
私は、ふむ、と考え込む。
「まずは手始めに、先ほど言ったように手の爪から【ノクターン】するじゃろうな。
更に指を第一関節から順序良く【ノクターン】し、更に手関節、肘関節、肩関節と【ノクターン】する。
次は足じゃ。
そう思い込ませたままで目を【ノクターン】する。
その上で足の指に刺激を与えて、まるで足が【ノクターン】されているかの様に思い込ませる。順序良く、足関節、膝関節、股関節へと。
そこまで来たら、ねたばらし。
実は足はまだ残っていると説明しよう。
ホッとしたのを見計らったら、改めて足の爪から【ノクターン】していく。
さあ、達磨になったら次は体じゃ。
熱魔法を使い、じっくり弱火でことこと【ノクターン】して行こう。
全身が真っ赤になったら【ノクターン】を【ノクターン】して、そこから【ノクターン】を【ノクタ------------------------------------------------―――――――――――――ン】」
私が放送禁止用語のように夜想曲を歌っておると、ゴウモンが泣き出した。
「ど、どうしたのじゃ、ゴウモンよ」
……ちょ、ちょっとやり過ぎたか。
「オ、オレ カンドウシタ。
マ、マルデ ショウセツヲ ヨンデイルミタイナ ウツクシイ ゴウモンダ。
オレハ コンナ ゴウモンヲ ウケテ シニタイ」
「お、おお!! 分かってくれるか、ゴウモンよ!!」
「アア センセイ!!
オレニ モット ゴウモンヲ オシエテクレ!!」
私とゴウモンは、ひし、と抱き合う。
拷問を愛する者同士が、心から分かり合えた瞬間じゃった。
***********************************
それから3日が過ぎた。
ゴウモンの拷問は力強くしなやかに洗練されていき、初日の力任せの拷問が嘘の様じゃ。
特に今日の拷問は、話筋性もしっかりしており、性格も立っておる。
これは、世界を狙えるじゃろう。
……私もいよいよ隠居かのう。
そんな事を思っておると、拷問部屋にセッカイ帝王が現れた。
「ゴウモンよ、何か自白させられたか?」
「……アッ」
ゴウモンはすっかり仕事内容を忘れておった様じゃ。
セッカイ帝王はその台詞を『出来なかった』と取ったようで。
「ふーん。
そうか、本当にただの貴族令嬢だったのか。
よし、良いぞ、拷問は終わりだ。
近々、ストリー王に会わせてやる」
相変わらずぼーっとした表情でそう呟くと、拷問室から出て行った。
私は、ゴウモンの回復を受けながら、最後の会話をしていく。
「ゴウモンよ、お主、すっかり化けたのう!」
「センセイ アリガトウ オレ オレ……!!」
「皆まで言うな、分かっておる……分かっておるから」
「ワ、ワーーーーーーーーン!!」
ムカシヤンマ帝国が滅びてもその人は残るとまで謳われた特級拷問士が、今この瞬間に産声を上げたのじゃが、それは、また、別の、話。
琴宮先生、『特級拷問士』使用許可を頂き、誠に有り難うございます!
あと、ゴウモン氏は、もう出てきません。




