第63毒 猛毒姫、手厚い歓迎を受ける
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前回のあらすじ
歌劇団もない帝国に向かっている。
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相変わらず勇者一行とムカシヤンマ帝国へ向かっておる。
流石にぼちぼちと馴染んだと言って良いじゃろう。
今日も今日とて4人に守られながら歩く私。
「♪ 引き籠る~ 家の中~ 震えるニートに~ ♪」
「え、なになにボツリヌスちゃん、その歌、可愛い!
そして、それを歌っているボツリヌスちゃんも可愛い!! ぎゅ~!!」
「おお、マホウツカイ。
いや、なんか天啓が降りてきて、歌わされておった」
一番仲良しなのはマホウツカイじゃ。
いろいろ理由をつけて私に抱き着いてくるのが面白い。
なんだか歳の離れたお姉さん、と言う感じじゃ。
2人できゃっきゃっと話していると、ユウシャが声を掛けてきた。
「あ、ボツリヌス。
この辺はツルツル滑る木の根っこがあっちこっちから出ているから、気を付けて歩くんだよ」
「ありがとうの、ユウシャよ」
ユウシャは歳の近いお兄ちゃん、と言ったところか。
妹に一生懸命お兄ちゃんしているところが男の子じゃのう。
「まあ、根っこなんかにそうそう転ぶなんてことは……って、ぬおおお!?」
せっかく忠告してもらったのに、まるで『漂流者達』のように激しく滑ってこけた。
頭をぶつけそうになる瞬間、ごつごつした手が私の頭を掴む。
……センシじゃ。
「……気をつけろと言われただろう。ちゃんと人の話は聞くんだな」
ぴしゃりと私に忠告する。
まあ、でも、倒れる前に私を助けたということは。
私が転ばないか心配してずっと目をつけておったという事じゃし。
もはやどんな酷い言葉で罵られようと『つんでれか』としか思わんがの。
「ぬぬ、何と転ぶ姿まであざといとは。
なるほど、勉強になります」
ソウリョは未だに全然キャラが掴めぬ。
あざといって、なんか私が狙ってるみたいじゃあないか。
勉強になりますって、なんじゃ。
愉快な4人組と一緒に歩くこと数10日。
やっと、巨大な森を抜けて、人の往来する馬車道に出たのであった。
「ここからなら帝都まで歩いて3日くらいかな」
「はあ、疲れましたねえ」
「おい、帝都に付くまでが龍退治だぞ」
「センシくん、固~い」
「龍退治も、出来てないしのう」
私の台詞に、全員がどんよりと落ち込んだ。
おや、なんか私、地雷を踏んだ様じゃのう。
「はぁ……こんな調子で、本当に僕たちは魔王を倒すことが出来るのかなあ」
「むむ、そんなことか。
大丈夫じゃ、ユウシャよ。」
私が勇者の頭を撫でる。
……そういえばしょっちゅう頭を撫でられていたが、撫でたのは初めてかもしれぬ。
「私が保障しよう、ユウシャは強くなる!
そしていつかきっと、世界を救う日が来るはずじゃ!!」
「ぼ、ボツリヌス……」
ユウシャが赤くなって照れておる。
……まあ、そもそも此奴の技術を見たら、誰だってそう思うじゃろう。
改めてユウシャの現状を確認する。
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ユウシャ 男 12歳
二つ名:ユウシャ
体力:8888888 ↑up
魔力:8888888 ↑up
スキル:逆境LV 3↑up
限界突破LV 5↑up
戦闘民族LV 6↑up
片思いからの祝福LV 1 NEW!
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あれ。
現状が軒並み上がっておる。
そして謎の技術が増えておる。
どゆこと。
私が呆然としていると、1台の馬車がぱかぱかと道を走ってきて、私たちの前で止まった。
「勇者様方、よくぞ御無事で!
おお、ユグドラシルの枝も回収されましたか!!」
御者の人がこちらに向けて声を掛ける。
「ふう、馬車が来てくれたか」
「やったー!! 早く帝国に帰りましょー!」
「早くお風呂に入りたいです……」
「……おい、馬車じゃぞ。
そろそろこの手を離せ、ユウシャよ」
「……え? あ、あー!
ご、ご、ご、ごめん、ボツリヌス!!」
おいおい、ユウシャよ……私は5歳、貴様との歳の差は7つじゃぞ……?
……それどころか、実際は99+5歳じゃからな、正しい歳の差は92じゃがの。
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馬車での道のりは、あっという間じゃった。
帝国の関所では多少手間取ったものの、『勇者一行のお墨付き』とのことで問答無用でまかり通らせてもらった。
申し訳ないのう、関所の人……。
初めて見る帝都の街並みじゃが、これが非常に面白い。
見たことのない形の建物が、まるで無造作に、全然統一性もなく立ち並んでおる。
「普通の家もあれば、土でできた家もあり、木や石で出来た家もある様じゃのう。
なんじゃこの雑多な街は」
「帝国は多人種の住む街ですからね。
あそこにある湖や、向こうの街路樹も、実は水人種や妖人種達の家なんですよ」
「なんと!」
確かに馬車から見える人々は、身長が低かったり、耳が長かったり、羽があったりしておる。
なかなかに、懐が深い国なのじゃのう。
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帝都中央の巨大な城。
勇者一行と共に、私もついてきていた。
どうにかしてサーモン王国に帰る算段を付けねばのう。
「勇者様方は、あちらの方でお待ちください。
後ほどセッカイ帝王がいらっしゃいます」
「私はどうしようかの」
「とりあえず、応接室の方でお待ちになって頂いてよろしいですか?」
「そうじゃのう……」
「それが良いかもね。
ボツリヌスちゃんのことは、私達からも言っておくわ!!」
「んー……じゃあ、お言葉に甘えようかのう」
私は1人で応接間で待つことにした。
「こちらで御座います」
がちゃり、と開いた扉の向こうには。
「ふむ。
此奴が勇者一行に付いてきていた虫か」
やたら偉そうな奴が椅子に座って此方を値踏みし始めた。
金髪金眼、短髪をつんつんに逆立てており、しかもやたら豪華な服。
ちんぴらの兄ちゃんみたいじゃ。
そして、すらっとした鼻筋、黒色の肌、長い耳。
いろいろな人種が混ざっているように思える。
怒っているような物言いの割には、なんだかぼーっとしているように見えるのう。
いけめんが台無しじゃ。
「これはこれは、セッカイ帝王陛下。
お初にお目にかかります、サーモン王国 トキシン侯爵家の3女、ボツリヌス・トキシンに御座います」
まあ多分、此奴帝王じゃろうと勘で挨拶をすると。
「……やはりな。
5歳児とは思えない頭の回転に、身のこなし。
しかも龍の巣に住んでいたとの話ではないか!
なぜ勇者パーティーへ潜り込んだ。
貴様の目的はなんだ」
帝王はぼんやりとしたまま、厳しく問い詰める。
「えーっと……。
そ、その、た、たまたま、じゃよ?
私はサーモン王国に帰りたいだけで……」
自分で話しておいて『説得力がないのう』などと思っていると、帝王は、はぁ、と息を吐いて付き人に声を掛けた。
「面倒くさいな……もういい、拷問して、吐かせろ」
……この帝王、駄目な奴じゃないか?
ホラー小説、『ブレーメンの屠殺場』書いてます。
お話としては真ん中を少し超えたところ。
絶賛 不 人気更新中!
ぐ、ぐぬぬぅ、ど、どうしたら人気が出るんじゃ……。
絶対! 多分! 面白いのに!! (『絶対』は『多分』にかかっています)
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