第6毒 猛毒姫、使い果たす
初めて魔法を使ったのだが、なんだか非常に気分が悪い。
どのくらい気分が悪いかと言うと、イタコの私だから耐えられるものの、一般人だったら全身を掻き毟って頓死するれべるである。
例えていうと、頭蓋骨を切り開き脳味噌を取り出されて、余す所なく大量の針を刺された後、濃硫酸のたっぷりこってり入った水槽に沈められ、更にそれを取り出し100万頭の印度象に踏みつけられた後、うんこと特殊な技術で混ぜ合わされたような気分である。
魔法を使う者は皆こんな気持ちを毎回味わっているとは……。正直同じ人間とは思えん……。
※※※ちゅうい!※※※
きぶんが わるくなったら まりょく こかつの あいずかも!
まほうを つかうのを やめて おとなのひとに こえをかけてね!
※※※
ふむ。
魔力枯渇と言われても、流石に魔力消費2の魔法に全魔力を使う訳もないし、これも無視で良かろう。
よし、気分が悪いとは言っても魔法は使えるに越したことは無いしの。
皆もこの気分の悪さを克服して魔法使っているのだ、私もなんとか使っていかねば精神の鍛練者たるイタコの名が廃ると言う物。
それではさっそく、今日は土玉だけに絞って練習しよう。
「生の源にして死の源よ!
再生と腐敗を司りし魂よ!
今こそ其の一塊を我が前に現し給え!土玉!!」
……ぐががががががっが、いてててて!!!
油の切れた歯車ががりがり言うような不協和音が体の中で起こった。
先ほどを超えるような不快感。
しかも今回は土玉は出なかった。
「んん!?
くそ、失敗したか、もう一度じゃ!
生の源にして《略》『土玉』!!
がががががgがががががgg」
それ以降何度も何度も試しても土玉は出ない。
なんじゃ、この魔法初心者入門書、書いてある通りにやっているのに、全く使えないではないか!!
……仕方あるまい、なんとなく悔しいがオーダーに教えてもらいに行くとするか。
オーダーの部屋をのっくすると『はーい』と間抜けな声とともに彼女が姿を現した。
「オーダーよ、実は教えて欲しいことが「ええええ!?」」
ん?
オーダーが何故か突然逆切れしている。
……と思ったがそうではないらしい。
私の目の前まで顔を近づけて、何度も何度も瞬きをしている。
オーダーはもはや主従関係も忘れた様に叫んだ。
「ま……魔力量0……0ォ!?
……はああああああああああああ!!??」
私は何故かそのまま彼女の部屋のべっどに寝かされた。
オーダーは私の頭に手を置くと、脇目も振らず無心で唯只管に回復の魔法を唱え続けている。
「お……オーダー?
どうしたのじゃ?
だ……大丈夫じゃよ?
私はほれ、この通り元気じゃし」
「わかってますよボツリヌス様。
ちょっぴり、無茶をしてしまったんですね。
大丈夫ですよ。
ずっと付いていますから。
命に代えても、助けて見せますから。
絶対、絶対、死なせませんから。安心して、ゆっくり眠っていてくださいね」
オーダーは覚悟を決めた様な笑みを浮かべている。
なにこのオーダー、こわい。
オーダーは使命に駆られたように何度も何度も回復呪文を唱えて続けていた。
……いくら此奴でも、こんなに回復を連発して大丈夫か?
私は大丈夫じゃよ、とまた言おうとして、そして意識が喪失した。