第57毒 猛毒姫、ユグドラシる
1000pv突破しました!
嬉しいです。
「ユニークじゃなくてpvでしょ?
話数と更新頻度があれば誰だっていつか辿り着ける奴じゃん」
はははそう言うこと言わない。
NiOさん怒っちゃうぞー?
Vegeta「It's Over One Thousand !!」
あ、ベジータさんも!何度も有難う御座います。
と言う訳で、こっそり馬車から飛び降りることに成功した。
猫耳娘は全身の疲労で目覚める事も無く、長身ぽにーてーるは先ほどの約束もあり、まさかこんな短時間で逃げ出さないであろうという思考の盲点に気づけなかった。
なんとも御人好しの悪党達じゃのう。
このままオーダーに会いに行きたい所ではあるが、途中で私がいないことに彼女達が気付けば真っ先に来た道を引き返すじゃろうし、残念ながらここは急がば回れでゆっくりトキシン家に帰ることにしよう。
さっそく、森の中に入ったわけじゃが。
……良く考えると、猫耳娘が臭いを嗅いで私を追いかけるという可能性も十分考えられるのう。
と言う訳で、服は近くにあった沼の底に沈める。
現在私は、ぱんつ一丁と靴という変態紳士が大喜びしそうな格好になっておる。
後それと、服の中に隠していた魔力量300程度の魔石。
何かあった時の為に、以前から持ち歩いておいたのじゃ。
更に私は、体中に泥を擦り付けて、臭いを誤魔化すことにした。
ううう、恐ろしく寒いが、我慢じゃ。
さらに進むと獣道を見つけたので、同じく体を擦り付けて、森の臭いと一体化した。
靴の足跡が付かないところを選んで慎重に森の奥に進んでおると、私が歩いてきた方向から例の2人を思わせる話し声が聞こえてきた。
「彼奴、この獣道で体を擦って逃げたみたいだにゃ!
ううう、もう全然臭いが追えないにゃ……」
「これ以上の探索は困難ですか……」
息を殺して話を聞いていると、どうやらこれ以上の探索は諦めてくれるらしい。
私はふと体を見て、自分の血を吸って大きくなった無数の蛭に気が付いた。
「でも魔力も体力も無い5歳児が全裸で森の中を生き抜けるとはとても思えないにゃー」
「いえ……多分大丈夫ですよ、あの精神力。
多分今頃体中に付いたヒルでも食べているんじゃないですか」
私は生でぷちぷち食べていた蛭を思わず吹き出しそうになる。
な、なんでばれたんじゃ!?
「仕様がありませんね!
帰ったらシャーデンフロイデも一緒に、お仕置きしてもらいましょうね♪」
「うへぇー……彼奴に抱かれるのは正直勘弁願いたいんだけどにゃ……。
っていうか、バトラーがちょっと嬉しそうなのが腹立つにゃ」
ここに来て、長身ぽにーてーるの名前がバトラー、猫耳娘の名前がシャーデンフロイデであることが分かった。
まあ、今さらであるが。
「さあ、帰りますよ」
「あ、あれ? ちょっと待つにゃ!
ながーいと評判の『第三部 拉致編』の、所謂『拉致回』は、もう終わり?
私達の出番も、終わりなのかにゃ!?」
終わりじゃ。
早々に引っ込むが良い。
「うわーん、自分の不幸は飯マズだにゃー」
そんな事を叫びながら2人は帰って行った。
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森の中で寒さに震えて歩いていると。
熊さんに出会った。
熊さんじゃ。
「グオオオオオオオオオオ!」
「ぎゃぁぁぁああ――――!」
~♪~♪~♪~♪~
頭の中で、現実逃避するように例の童謡が流れ始める。
……やばい、今の私には勝てる術が無い!
とりあえず『金玉』を作り出し、熊の鼻先に『金操』でぶつけたが、全然堪えておらず。
むしろ怒り狂って前足を持ち上げ威嚇してきおった!
……ん?前足を持ち上げ……?
「あ、幸運。 『漂流者達』」
滑って転ぶ熊の姿はまさに笑劇。
転んだ先には尖った岩を用意したため、熊は一撃で死んでくれた。
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「いやあ、たまたま倒せて幸運じゃった。
毛皮も手に入って一心地じゃが、出来ればもう熊さんには会いたく無いのう」
熊の毛皮を魔法で処理して体に纏い、ぬくぬくしながら熊肉をもきゅもきゅしておると、あることに気が付いた。
「おお、そうじゃ。
魔力流量感知があったわ
ちょっと感度を落として。
……ふんぬー」
森の中にはぽつりぽつりと大きな魔力が感じられる場所があり、遠目で覗くと虎や熊の様な危険な動物を確認することが出来た。
此奴らを避ければなんとか森を抜けることが出来よう。
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森の探索を始めて5日程が過ぎた。
初日はあんなにうざったく付いて回った藪蚊や蛭の数が減ってきておる。
なんというか、体の中の過剰な栄養や人工的な物が抜けてきて、より野生に近くなっておるのかもしれぬ。
ちなみに初日に手に入れた熊肉は燻製にして、余った毛皮で作った袋に入れて持ち運んでおる。
と言う訳で、今日も熊肉をもきゅもきゅ。
……なんだか私、この世界で熊肉ばっかり食べておる気がする。
「……おや? あちらに大量に魔力が確認出来るのう……」
肉を食んでいると、10㎞程先に、複数の大きな魔力が感じられる地点を見つけた。
複数確認出来るということは、社会性を持っていると言う事じゃ。
勿論、巨大怪物蟻とかオークの根城だとかの可能性も無くは無いが、もしかすると。
「森の中の集落……エルフ、かもしれぬな」
もし、エルフの集落ならば。
ちょっと見ていたい。
「よし、遠目で見て、怪物の集落じゃない事を確認してから近づくことにするか」
私はその地点へ歩を進めることにする。
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エルフの里(仮)まで後5㎞程度と迫った頃から、違和感を感じ始める。
「な、なんじゃこれは。 魔法の類なのじゃろうか」
自分の体がそこに向かいたくないと言う様に、強烈な気分不良が私を襲う。
それを無視してさらにしばらく進んで行くと、症状は更に強くなってきた。
「恐らく考えられるのは2ぱたーん。
魔法技術の進んだ、例えばエルフなどが里の周囲に人を来にくくする結界を張っている可能性。
もしくは、物凄い最強生物の棲家で、体がそこに向かうのを嫌がっている可能性。
……とは言っても、いつかのベルゼバブに至近距離で会話しても大丈夫じゃった私が、5㎞先から気分不良を覚える怪物なんて、そうそうおるわけ無いしのう」
普通に考えて、前者じゃろう。
高度の魔法を使っていることから、やはり蟻やオークなどでは無く、高い知性を持っていると思われる。
「精神を失調させる程度の魔法では、私は止まらぬぞ!」
私は呵呵大笑すると、更に森の奥へ進んでいった。
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と言う訳で、エルフの里(仮)についた。
ここに付くまでそれなりに大変で、精神力ががりがりに削れた。
多分、一般人は絶対に来れない場所じゃないかのう。
まあ、いつかの魔力枯渇と比べると全然問題ない、むしろ楽ちんなくらいじゃが。
「ほあーーー……」
私が思わず間抜けな声を上げてしまったのには理由がある。
「なんと巨大で美しい樹じゃ……」
そこには信じられない程巨大な樹木が聳え立っておった。
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世界樹 ???
???、???????????????????!????、??????????。
???????、????????????????。??????????????。
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思わず鑑定してみたが、全部ばぐっておる。
さもありなん、これを人間の知性で理解しようなどと烏滸がましいと思わんかね。
しばらくぽけーっと見呆けておった私じゃが、あることに気づく。
未だに魔法によるものと思われる気分の悪さは無くならない。
此処がエルフの里だとすれば、居住地はもうすぐのはずである。
何故この段階でも結界が効果を発しておるのじゃ?
……もしかして、私は物凄い考え違いをしておるのではないか?
つまり、先程考えた2ぱたーん目の可能性も……。
私が改めて自分の考えを反芻しておると。
突然、空に雲がさした。
『ほう、こんな所まで脆弱な人間族が来るとは……珍しい』
否、雲がさしたのではなかった。
遥か天井から神々しく聞こえるその声の持ち主を見るため、私は空を見上げる。
巨大な体をその翼と魔法で浮かせながら、その生物は一度雄叫びを上げて話を続ける。
『我らを滅ぼしに来たか……宜しい、屠ってやろう』
あばばばばば誤解じゃ違うんじゃ。
だ、誰じゃ! ここがエルフの里などと言った馬鹿は!!
物凄い最強生物の棲家……ここは、 龍 の 巣 じゃあないか!!