第56毒 猛毒姫が、うちに来る。
ポイントが100超えました。
ポイントを付けてくださった方、ブックマークして下さった方、有難う御座います。
Vegeta「It's Over one hundred !!」
あ、ベジータさんも!有難う御座います。
※※※前回までのあらすじ※※※
5歳児でもちゃんと自殺が出来るんだもん、ぷんすこ☆
と言う訳で舌を噛み千切ってやったら、周りがびっくりした。
※※※※※※※※※※※※※※※
「分かりました、オーダーさんにはこれ以上危害を加えません……」
私の動的自殺を見た長身ぽにーてーるは、げんなりしながら了承した。
「なんと言うか……くるみ割り人形を思い出させる、システマチックな自殺でしたね……」
ふむ、動的かつ、系統的自殺か。
褒め言葉と取っておこうかの。
さて、私は諦めて拉致られることにしたわけじゃが。
交渉の末、何とかオーダーの命乞いに成功したため……そうなってくると、今度は更に欲が出てくる。
長身ぽにーてーるに近づくと、倒れて動けないオーダーに聞こえないように耳打ちする。
「もういくつか頼みたいんじゃが。
オーダーの回復と、彼女の周囲に防御結界魔法陣を張って貰いたい」
「え、嫌ですよ。
意識がある状態で回復したら、彼女、絶対また私達に攻撃してきますし」
「ふむ、では意識を失わせたら考えてくれると」
「いやいやいや、そこまでする義理はありません。
お嬢様も、自分の命以外に交渉出来る物なんて持ってないでしょう?」
「彼女の助命の範疇には、当然そこまで含まれるはず……」
「含まれません!」
くそ、駄目か。
「ならば、私は拉致されて目的地に到着するまで、逃げも隠れもせん。
これは、交渉材料にならんじゃろうか」
「ならないですね。
自殺云々に関してはともかく。
私がオーダーさんを治療したとして、その後お嬢様が約束を反故にする事が出来るのですから」
「確かにそうじゃな……こればかりは私を信じてくれとしか言えない。
いや、どうか信じて欲しい!」
長身ぽにーてーるは私の顔を見て。
そして、ちらりとオーダーを見た後。
「私もオーダーさんの様な人間は好ましく思いますし、出来れば死んで欲しくありません。
……良いでしょう、彼女を失神させることが出来たら、先ほどの条件でお話を受けましょう」
「有難う、長身ぽにーてーる!」
私はにぱっと笑顔で彼女にお礼を言うと、オーダーのもとに駆け寄った。
**************************************
「ボツリヌス様、奴は私をどうやって殺すと言っていましたか?
……出来れば、斬首にして欲しいと伝えて貰いたいのですが」
オーダーが不穏な事を言っておる。
此奴にはまだ助命の話をしておらぬからのう。
それにしても、オーダーから、とうとう自分の命を……私を諦める様な発言が出た。
状況が絶望的である事も理解しておるのじゃろう。
それにしても……。
「……なんで斬首が良いのじゃ」
なんでか分からぬ。
痛みが少ないからか?
「痺れて動かない体が邪魔だからです。
肩から上は喋れるくらいに回復しましたからね。
頸を刎ねられたら、頭だけで奴の喉元に噛みついて絶命させてやりますよ」
オーダーは歯を剥き出しにして笑う。
あ、私、その映画知っておる。
お前は山犬か。
此奴、死んでも祟り神になって馬車を追いかけてきそうじゃ。
前言撤回。
此奴はまだ諦めておらぬようじゃ。
……本当に。
本当に。
申し訳ない。
「私には、もっと良い案があるぞ。
オーダーよ、耳を貸せ」
「? なんですか?」
私はオーダーに耳打ちをする。
「……1年以内に必ず帰ってくると約束する。
じゃから……トキシン家で、待っておれ」
「……? それはどうい」
私はそう言うと、無防備なオーダーの顎を殴りつけた。
*************************************
オーダーが失神したのを見計らって、長身ぽにーてーるがオーダーの回復をしてくれた。
千切れた右腕もくっつけてくれたのじゃが……残念ながら、完全に焦げてしまった手指は10本のうち5本、回復する事は出来ずに切断する事になった。
最後の仕上げとばかりに防御結界魔法陣をオーダーの周囲に設置し終えた長身ぽにーてーるは、私に改めて問いかける。
「約束通り、可能な限り回復も施しましたし、目覚めるまで野生の獣に襲われない様に防御結界魔法陣も敷きました。
まあ、多分オーダーさんも1時間位では目を覚ますでしょうし、問題ないとは思いますが。
……さて、では、お嬢様も、約束して下さい」
全く、頭が下がる思いである。
此奴も、基本的には良い奴なんじゃろう。
……うん、多分、雇い主が嫌な奴なだけじゃ。
「ああ……本当に有難う、長身ぽにーてーるよ、私も約束しよう!
私は拉致され、目的地に着くまでの間、決して逃げたり隠れたりしない!
偉大なるトキシン家の名と、聖女の名にかけて誓おう!」
曇り無き眼で長身ぽにーてーるを見つめると、彼女は肩を竦めて。
「……では、行きましょうか、お嬢様」
私を馬車へと案内した。
馬車のたらっぷを踏むと、最後にオーダーを見る。
既に空はうっすらと明るくなり始めており、真っ白な雪原の中に横たわる真っ赤に染まったオーダーは、悲しいくらいに1人じゃった。
「オーダーさんに愛されていましたね、お嬢様。
私の雷魔法すら予想した用心深い彼女が。
貴女が自分を殴るとは予想だにしなかったのですから」
長身ぽにーてーるの発言に、私は、はっとした。
オーダーがもしも、私の攻撃を予想出来ていたら。
私の電話してから攻撃などあの状態でも躱せておったじゃろう。
オーダーは、私が攻撃してくる等とは毛ほども考えてなかったことになる。
「……長身ぽにーてーるよ、なんでお前が、ちょっと泣いておるのじゃ」
「な、泣いてませんよ!
お、お嬢様こそ!
……ほら、出発しますよ」
「まあ、長い付き合いになるはずじゃからの、よろしく頼むぞ!」
私は呵呵大笑して馬車に乗り込むと、中では猫耳娘がすやすや寝ておった。
ほっぺたをぷにぷにしてみたが、起きずにむにゃむにゃしておる。
外で、ぴしっと鞭が撓る音がして、馬車ががたがたと出発した。
こうして、私は改めて拉致される事となった。
*************************************
……さて、オーダーを助けてもらったこともあるし、私は約束を破るつもりは無いぞ。
繰り返すが。
偉 大 な る ト キ シ ン 家 の 名 と 。
聖 女 の 名 に か け て!
……馬車が出発して2時間後。
空には太陽が昇り、雪が溶け始め、辺りに広大な森が広がり始めた頃。
私はさっそく、他2名に気づかれ無い様に。
……こっそり馬車から飛び降りたのじゃった。
く、くずぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
ちなみに『トキシン家の名にかけて』と『曇りなき眼で』は、基本的に嘘吐きフラグ。
嘘ついたら針千本飲ます
→針千本飲むなら嘘ついても良い
と言うスタンスなんです、ボツリヌス様。