第5毒 猛毒姫、唱える
今日も今日とて引き篭る私である。
ただし、今日は趣を変えてみることにした。
手に持つのは『はじめての まほうにゅうもん しょきゅう』という本。
子供用の魔法導入本じゃ。
魔力量10の私でもできる魔法はいくつかあるようで、今日はそれを試してみようと思っておる。
しかし入門書があるとはわかりやすい。
この本の通りにやれば安心、安全ということじゃしの。
※※※ちゅうい!※※※
まほうを はじめて つかうときは ぼうそう することが あるよ!
つかうときは かならず ひろい ばしょで!
かならず まほうが つかえる おとなのひとと いっしょに つかってね!!※※※
……ふむ。魔力量10では暴走してもたかが知れてるしの。無視で良いじゃろ。
ところで魔法を使う前に話をしておくと、この世界では魔法は5種類に分けられる。
5種とは基礎、発展、補助、種族、特殊の5つである。
誰にでも使える、いわゆる生活魔法と呼ばれる基礎魔法。
基礎魔法を完璧に体得できたものが手に入れられるとされる発展魔法。
オーダーの使用した『回復』など、戦闘の補助になる補助魔法。
龍族・獣族など、特定の種族のみが使用できる種族魔法。
そして使える時点で『勇者』や『魔王』と言った称号がつくほど稀有な特殊魔法。
私が関係があるのは一番最初にある基礎魔法のみじゃ。
基礎魔法は『水』『熱』『風』『土』の4つに分類される。
それら4つを合わせて『基礎四源』と呼び、それらを極めることで『発展四源』へと至る。
発展四源は『氷』『火』『嵐』『金』で、水は『氷』、熱は『火』、風は『嵐』、そして土は『金』へとそれぞれ発展するようじゃ。
基礎四源から発展四源へ至る道は非常に険しいらしく、一万人に一人くらいの割合じゃと。
発展魔法を使える者は一人で兵士千人に値するとの文献も少なからず見受けられる。
ちなみにオーダーは『氷』魔法の使い手である。
全く人は見かけに依らない。
さて、説明は長くなったが私が使おうと思っているのは基礎4源の『土』の中でも消費魔力2の『土玉』である。
※※※ちゅうい!※※※
まほうを つかうときは それぞれの せいれいに かんしゃ しながら つかおう!!
※※※
それぞれの魔法にはそれを司る精霊がそれぞれ存在するとのことであるが、まあ面倒臭いし、これも無視でいいじゃろう。
私は右手を前に掲げると、手を鉤爪の様にして呪文を唱える。気分じゃ、気分。
「生の源にして死の源よ!再生と腐敗を司りし魂よ!今こそ其の一塊を我が前に現し給え!土玉!!」
かっくいー詠唱であるが、消費魔力2の土玉である。念のため。
うむ、体の中で熱い何かが回転しているのがわかる。それが右手に伝って……握り拳大の土の球が右手の前にふよふよ現れた。
初めて魔法を使えて感動する以上に思ったことがあった。
魔法を使うって、おもっくそ気分が悪いのう……。
ちなみに今のところ
基礎四源 “風・土・熱・水”、
発展四源 “嵐・金・火・氷”、
特殊四源 “雷・闇・光・時”、
種族四源 “獣族の勘・鋼族の石・龍族の空・魔族の元”、
補助四源 “回復・防御・解毒・強化”
で考えています。
途中で変わる可能性大。