第48毒 猛毒姫、浪漫を語る
仕事はまだ死の行進中です。(BGM:エル○絵本:笛吹き○とパレード)
今日、久しぶりにページを開くと、どう考えても減っているはずのブックマークが何故か増えてました。
そしてそして、なんとなんと、感想コメントが書かれていました!
滅茶苦茶嬉しいです、ありがとうございます。
と言うことで、今日だけ特別更新。
睡眠時間を削ろう。
11月になった。
大分寒くなってきたが雪も無く、まだまだ外で元気に走り回れる程度の物である。
特に、子供にとっては。
「聖女様! 僕の魔法を見てよー! ムニャムニャ(呪文)!」
「聖女様! 私の方が凄いんだからねー! ムニャムニャ(呪文)!」
「なんじゃ、どっちも大した魔法じゃないのう!」
ここは離れの裏庭、例の魔法を安全に使える設備の整っている場所じゃ。
前回の私の脅しが心的外傷になったはずの三男と次女であるが、それと私と遊ぶことの楽しさは別の様で、あの日からしばしば離れにきて皆で戯れるようになっておった。
最近は私に凄い魔法を見せようと二人が競い合う事が定番になっており微笑ましい。
魔法の調整がまだ甘い事を笑いながら指摘すると、二人はむーっとした。
「それなら、ムニャムニャムニャ、これはどーだ!」
「じゃあ、私も、ムニャムニャムニャ、えいやー!」
「おおっ、これはなかなか!」
水魔法と土魔法が飛び交う中。
私の横でオーダーががっつり厚着をして寒さに震えておる。
もこもこの耳当てと手袋が可愛らしい。
「うー、ぶるぶる……流石はお子様達、元気ですねえ……」
「全くじゃ、子供二人は元気じゃのう!」
私が呵呵大笑すると、オーダーに鼻で笑われた。何故じゃ。
「っていうかオーダーよ、お前、氷魔法使いじゃろう……。
なんでそんなに寒さに弱いのじゃ……」
「氷魔法使いはみんな寒さに強いというのは偏見ですよ。
その理論だと、教師はみんなロリコンです」
オーダーが謎の極論で私の意見を煙に巻いた。
そんな他愛のない会話をしておると、わーきゃー両名が此方に走ってくる。
「ところで、聖女様は凄い魔法とかってあるの?」
「きゃー! 教えて教えて!!」
ほう。
そうか、知りたいか。
私は腕を組んで胸を張り踏ん反り返る。
その状態から右腕を開放し、右手人差し指で自分の米噛みを軽く叩く。
「まあ、頭の中なら、あるかの」
「わぁ!!」
「きゃぁ!!」
子供は派手な魔法が好きじゃから、私の『開護摩』や『漂流者達』等は渋すぎて好まんじゃろ。
ここは、私の案を披露することにする。
「その案とは……、即ち浪漫魔法、『土石流』じゃ!!」
私が高らかに宣言すると、子供二人は目を輝かせてわーきゃー叫んだ。
ちなみにオーダーは私を暫く横目で見た後、ぼんやりと遠くへ視線を移し、手袋越しに自分の両手を吐息で温め始めた。
興味を失うのが早過ぎるじゃろ。
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「……更に土と水の比率はこれくらいで、運動割合はこれくらい……こうして、土の暴力的質量と水の変幻自在さを併せ持った圧倒的破壊力を持つ『土石流』が完成するのじゃ!!」
水使いの三男に土使いの次女。
二人の恐るべき魔力量と、双子特有の阿吽の呼吸があれば浪漫魔法も夢ではない、と言う判断で二人に『土石流』の説明をするが。
「確かに派手で格好良いけれど、魔力消費量が凄そうだよ!」
「魔法の調整も、とっても難しそうだわ!」
等と訳の分からんことを抜かし始めた。
無知なる哉!!
その馬鹿みたいな消費量と阿呆みたいな難易度を持ってして生まれる、絶対火力こそが浪漫魔法の魅力だと言うに!!
仕方が無いのでそれから3時間、空手正拳突き一撃神話から戦艦大和大鑑巨砲主義に至るまで、浪漫の何たるかを二人に熱烈に叩き込んだ。
遅い昼ご飯を食べる頃には、二人とも浪漫魔法の魅力を理解してくれるようになった。
「浪漫魔法ばんじゃーい∩(・ω・)∩!」
「土石流ばんじゃーい∩(・ω・)∩!」
「良かった……理解ってくれたか、二人とも!!」
「ボツリヌス様、涙ぐんでいるところ申し訳ありませんが……。
これは洗脳と言って、理解から最も遠い物ですよ」
オーダーが溜息交じりにぽつりと呟く。
「な、何をいうか、オーダーよ!
見よ、この二人のやる気満々っぷりを!」
「東亞共榮ばんじゃーい∩(・ω・)∩!」
「八紘一宇ばんじゃーい∩(・ω・)∩!」
……あれ?
なんか違う思想も一緒に吹き込んでしまった様じゃ。
この後オーダーのはりせん攻撃により二人の意識は元に戻った。
しかし、オーダーよ、不敬過ぎるぞ。
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子供二人は何だかんだで浪漫魔法を気に入ってくれたようで、裏庭で練習をするようになっておった。
まともな魔法になるまで何ヶ月掛かるかと思っていた私じゃったが。
「ムニャムニャ、えいやー!」
「ムニャムニャ、とおー!」
「ちょっと待って号」
数日もすると彼らの魔法は、無数の巨大な土の波が折り重なるように変幻自在に動くれべるにまで達していた。
私の想像していた魔法を軽々と飛び越えて行きおったぞ此奴等。
「ボツリヌス様、この人間兵器達をどうするつもりですか」
「違うぞオーダー、人間兵器なんかでは断じてない!
……これは、浪漫兵器じゃ!」
真面目に訂正すると、オーダーは思っ糞、私の両頬を抓って引っ張り始めた。
にゃにするんにゃ!
「見てよ聖女様ー!」
「凄いでしょー!」
「凄過ぎじゃぞ二人とも、流石の私も感服したわ!」
私は両手を上げて降参の格好をすると素直にそう褒めた。
二人は目をぱちくりした後、同じ時でにへらと顔を崩して、改めて私に話しかけた。
「ねえねえ聖女様、この魔法、ちゃんとした格好良い名前を付けてよ!」
「ねえねえ聖女様、私はそれより可愛い名前が良いな!」
「む。 名前、か」
確かに二人の魔法はもはや私の考えた『土石流』などとは一線を画し、二人にしか成し得ぬ唯一無二の別物になっておる。
別の名前に変えると言うことに異論は無い……が。
「私が名付けても、良いのか?」
「うん、だって3人の魔法だもの!」
「聖女様が考えて、小兄様と私で使うもの!」
「そ、そうか! じーん。
よし、じゃあ、格好良くて、可愛い名前を付けるぞ!」
早速私は頭を捻る。
無数にある巨大な土の触手が敵を丸呑みにするという魔法。
しかし、クラーケンとかリヴァイアサンとかは、あまり可愛い名前とは言えんしのう。
……ふむ。
「良し、決まったぞ!!」
私がそう叫ぶと、二人はいつかの様に目を輝かせた。
「名前はずばり、『バッカルコーン』じゃ!!」
「わ、格好良いー!」
「えー、あんまり可愛くないー!」
ダイオキシンは不満そうであるが。
「意味はのう、『天使の触手』じゃ!」
「『天使の触手』……!」
「きゃ、可愛いー!」
格好良くて、可愛い。
私の名付け力に二人は度肝を抜かれておる。
くくく、今日も絶叫調じゃの!
「んー。
こう言うのはなんて言うんですかねぇ……。
……幼2病?」
満足する私の横で、オーダーも負けじと新しい言葉を作っておるようじゃった。
それにしてもオーダーの奴、名付け力が絶望的じゃのう。
と言う訳で、浪漫という毒の前でキャラ崩壊するボツリヌス様でした。
ちなみに私は浪漫武器より物量による蹂躙が好きです。
米帝ばんじゃーい∩(・ω・)∩!
それではまた7月。