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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
監禁編
45/205

第45毒 猛毒姫、指切りげんまんをする

※※※注意※※※


痛そうな描写あります。

 ……三男(シガテラ)次女(ダイオキシン)

 トキシン家の由緒正しい魔力血統を持つ二卵性の双子が彼奴(きゃつ)らである。

 年齢は私より上とは言え、まだ6歳。

 正直、秘密が守れる年齢ではない。


 とりあえず二人を離れの屋敷の部屋の一室へ案内して、めいど達と相談をした。


「あの二人は、秘密は守れそうか、ハンドよ」


「……大聖女様(ボツリヌス)様……2人は、本当に裏表のない、屈託のない方々なので御座います……」


 そうか、秘密を守るのは無理だと言う事か。


 いやいや、トキシン侯爵(ちちおや)にばれたら、企画したハンドを含め、めいどの数人は間違いなく処刑されるぞ。

 本人も分かっているようで、青い顔をしながら心なしか顎が震えておる。


 他のめいど達は2人の説得を試みておる。


「シガテラ様、ダイオキシン様、今回の事はくれぐれもご内密に……」


「うんー、分かったー!」


「任せてー!!」


 駄目じゃ。

 全然分かっておらん。


 めいど達も半ばあきらめの表情を浮かべており、何人かはしくしく泣き始めておる。


「……仕方あるまい。

 私が何とかしよう」


 私は2人に向かって歩き出した。


「初めまして、シガテラ様、ダイオキシン様。

 ボツリヌスと申します。

 先ほどの演劇の『貴族令嬢』は私を主題(もちーふ)とした物です」


 二人の顔が、ぱぁ……っと輝いた。


「ボツリヌス……?

 君があの聖女様?

 メイドを庇った所なんて……ああ、とってもかっこよかったよ!」


「キャー!

 本物の聖女様もお人形さんみたい!

 とっても可愛いー!!」


 シガテラは興奮したように手を上下させて必死に手話(じぇすちゃー)しており、ダイオキシンは(おもむろ)に私に抱き着いて来おった。

 成程、確かに、悪い子達では無いのじゃろうが。

 秘密は絶対に守れそうにないのう……。

 私が二人の妹であることには気づいていない様なので、これは隠しておいた方が良さそうじゃ。


「お二人とも、先程の話は聞いて頂けましたかの」


「ああ、秘密! 勿論守るよ! ねー」


「ねー」


 くすくす笑いあっておる二人。

 うむ。

 こりゃ駄目じゃ!

 私は頭をぼりぼりと掻いた。

 ……正直気は進まんが。

 このままでは2人が今回の事を誰かに悪気無く(・・・・)ばらすのは確定的に明らかであるため。

 子供に約束を守らせる最終手段。

 心的外傷的(とらうまてぃっく)な手段を取らせて貰うとするかのう。


「それでは二人とも、約束の証に私と指切りげんまんをして頂きますかの」


「? 良いよー」


 私は2人と指切りげんまんをする。

 光景だけを見れば子供同士の可愛い約束の交わし合いではある。

 めいど達も一連のやり取りを期待半分諦め半分で見ておる。


 二人と指切りを終えると、私は再度二人に尋ねる。


「さて、約束は守って頂けるじゃろうか」


「だからー、分かってるってー!」


「任せてー!!」


 ……相変わらず、二人の返事は軽過ぎた。

 仕方あるまい。


 心的外傷(とらうま)になっても、恨むなよ。


「所でお二方。

 指切りげんまんの『本当の意味』を御存じか」


「本当の意味?」


「『嘘を吐いた者は、指を切られて、拳骨を1万発殴られても仕方が無い』という意味じゃ」


 脅してみるが。


「げー! げんまんだー!」


「やー! 怖いー!」


 2人はけらけら笑い合っておる。



 ぼきん(・・・)



 2人はその音に、笑うのを止めて此方を見る。

 うむ。

 私は自分の左手の小指をへし折った。(・・・・・・)


 2人は目を大きくして、ぽかんと此方を見て……固まっておる。

 ……何だか、反応が薄いのう。

 ふむ、1本ではそんなに怖くは無いかもしれん。


「お2人とも、意味が知らなかったとはいえ、約束は約束」


 ぼきん(・・・)

 ぼきん(・・・)

 ぼきん(・・・)


 無言の部屋の中に響き渡る快音。

 私は薬指、中指、人差し指と、軽快(りずみかる)にへし折って行った。

 折れた指からは骨や脂肪が見えており、一部血がぴゅーぴゅー吹いておる。

 2人は、曲がってはいけない方向に曲がった私の左手の指達を見て青ざめ始めていた。

 ……よし、流石に、びびっておるよな……?

 では、仕上げじゃ。

 


 最後に左手で唯一機能している親指を右手で掴むと。


「破ったら、私は本気で、こんな風に(・・・・・)指切りげんまん(・・・・・・・)』しますので、お忘れなく」


 2人に向けて可能な限りの最上級の笑顔を向け、親指をへし折っ……。


 ……むっ、親指、へし折りづらいのう……!

 っく、っくぬ!

 ぬ、親指が意外に強敵じゃった!

 や、やばい、格好がつかぬぞこのままでは!!


「「ぎゃああああああぁぁあぁぁあぁぁーッッッ!!!!」」


 私が一生懸命親指をへし折ろうと頑張っておると、何故か三男(シガテラ)次女(ダイオキシン)は大声で叫びながら泡を吹いて卒倒した。

 ……最後に親指をへし折るところが見どころじゃったのじゃがのう……。

 私がしょんぼりしているとオーダーが傍にやって来た。


「ボツリヌス様。

 やり過ぎです。

 オーバーキルです」


 ……オーダーの話では、小指1本の時点で既に2人には十分心的外傷(とらうま)になっておった様じゃ。


「そうか。

 まあ、これで何とかならんかったら何ともならんかの。

 ……ふん、ふーん!」


「そうですね……って、何しているんですかボツリヌス様、早く左手を治させて下さい」


「うむ、その前に、ここまで来たら、せっかくじゃし親指も折って置こうと思っての。

 ふん、ふんぬー!」


「馬鹿な事は止めなさい。

 捻じ切られたいですか」


 私は素直に左手をオーダーの前に出した。

 ……私の親指は心配する癖に、私の首は容易にへし折ろうとする此奴は一体何なんじゃ!


 ……目を覚ました二人の兄妹はがたがた震えながら「絶対に約束は守ります! 指切り怖いい!」「げんまんいやだあ!」と叫んでいたとの事である。

 いい感じに心的外傷(とらうま)になってくれた様で、めいど達も一安心しておったそうじゃ。

 この調子で、離れにももう来ないで欲しい物であるがの。


 ちなみに、今回の事件についてもハンドが謎の脚色をしておった。

『聖女の体を張った切なる願いに幼き子供たちも心を打たれた』とか何とかでその場にいなかった他のめいど達に伝わっておった。

 ……もう、勝手にしておくれ……。

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