第41毒 猛毒姫、「絶対猛毒姫なんかに負けたりしない(キリッ)」をされる
監禁事件から2ヶ月以上が過ぎた。
弱り切っていた私であるが、そこは小児の回復力で今ではすっかり元通りじゃ。
監禁事件で変わったことと言えば、めいど達の対応の変化じゃろう。
今までは無視をしていためいど達も、今ではむしろ積極的に私に話しかける様になった。
そして、私が少しの間でも館からいなくなると、どこからともなく「ボツリヌス様は?」の声が聞かれるようになったらしい。
この前久しぶりに小屋の中で一日中魔法の練習をして帰ってくると、離れのめいど達が号泣しながら捜索隊を組んで私を探しておった。
もう、あの小屋へはいけんの……。
これでは魔法の練習が出来ないとオーダーに嘆いておると。
「じゃあ、アコギさん達に直接自室へ魔石を運んでもらっては?」
と提案された。
……オーダーよ、天才か貴様……。
ということで、離れのめいど達からも承諾を得て、トキシン侯爵に内緒で私の自室に魔石を送って貰う事となった。
これは楽じゃ。
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「成程のう……ここは、こうなっておるのか……」
「……ボツリヌス様、何をやってるんですか」
庭の防御結界魔法陣を土下座するようにまじまじと見つめながら帳面に書き写していると、オーダーがやってきた。
「オーダーか。
ふむ。
私の将来の夢が決まったぞ」
将来が奴隷位しか無い私であるが、夢を見るくらい良かろ。
オーダーも少し驚いているようであるが、笑顔で聞き返してくる
「それは良い事ですね。
土下座師ですか?」
「なにそれ? 職業!?」
私は立ち上がり埃を払うと宣言した。
「私は、魔法学者になりたいのじゃ」
「まほう……学者?」
そう、魔法学者。
今、私が作った言葉なんじゃがの。
この世界の魔法は素晴らしいものであるが、魔法についての学問が完全に欠如しておる。
どこにでも存在し、何にも考えなくとも使え、とても便利。
空気と同じじゃ。
余りにも当たり前すぎて、誰も研究をして来なかった。
しかし、ちゃんとした研究をすれば、その効能効果は圧倒的じゃと思う。
今やっている魔法陣研究はその第一歩じゃ。
魔法陣の効率化は研究結果としては一番分かり易いしの。
そんなことを取りとめもなくオーダーに話していると。
「ボツリヌス様は魔力以外は大魔術師の素養がありますから、きっとなれますよ」
奴が珍しく私を褒めた。
どうやら、本気でそう思ってくれておる様じゃ。
……なんだか、こっ恥ずかしいのう。
「魔法陣の詠唱代替文字と周辺防御図に魔力が流れる仕組みを知りたいのじゃが。
オーダーよ、手伝いをお願いできるか?」
「えーっと……要は、発動すれば良いんですね?」
オーダーが手をかざすと、魔法陣が青く輝きだした。
私は『魔力流量感知』を使用し、魔法陣の活動する様を忘れない様に両の眼に刻み付けた。
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「どうですか、ボツリヌス様」
「ふむ。
防御結界魔法陣は、魔法学初心者の私でも分かるくらい無駄があるのう。
ここの詠唱文字はいらんし、ここに魔力を貯めると逆に危ないのじゃが。
更には……おや」
離れの廊下を歩きながら帳面を眺めてそんなことをぶつぶつ言っておると。
廊下の先に、新しくストリー王から下賜された宝玉を磨くテーラーの姿が見えた。
「テーラーよ、元気かな」
「……」
無視された。
なんでじゃ。
……ふむ。
もしかしたら此奴にとって親密さは『邪険→無視→日常会話』の順なのかもしれん。
流石に好感度は上がっているはずじゃしの。
此奴にとってはそれなりの敬意を示しておるのかもしれんが。
私としては会話要員が減って、寂しい限りじゃ。
そういえば、他のめいどは全員私の事を思って泣いてくれた様じゃが、此奴は少なくと私の前では1回も泣かなかったしの……。
『絶対にボツリヌス様に負けたりしない(キッ)』
と言う事か、愛い奴め。
……ならば。
ようし。
泣かしてやるか。
本当にすみません……リアルが忙しすぎて、投稿はしばらく週1くらいになります……
申し訳ありませんが見捨てないでやって下さい……




