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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
監禁編
32/205

第32毒 猛毒姫、間に合う

※※※注意※※※

今回もあれな感じです。

苦手な方は、あれな感じでお願いします。

 絶飲食拷問生活第20日目。

 尻から出る(うんこ)すら無くなり、お腹の中は空っぽじゃ。


 さて。

 牢番が交代となり、数日ぶりにマー坊がやってきた。

 やけにすっきりした顔で、彼女が持って来た物は……



 ……食べ物、じゃった。



「ボツリヌス様、侯爵様が赦して下さるそうですよ。

 本当に良かったです!

 はい、ご飯、食べてください!」


 公爵様が、赦して下さる、か。

 ……嘘発見器が無くても判るぞ、マー坊よ。


 私はゆっくり首を振った。


「……うーん、えへへ、演技下手ですね、私」


 マー坊は眉を八の字にして苦笑いした。


「えーっとですね、実は私、家族も親戚もいないんですよ。

 だからボツリヌス様、ご飯食べても、大丈夫ですよ!」


 重力を無視した緑色の長い髪の毛が、ぴょこんと跳ねた。

 家族も親戚もいないから、死ぬのは私だけですよ、とでも言いたいのか。

 再度、マー坊が牢屋の隙間から短い手を伸ばして、食事を渡そうとする。

 私は他の2名の牢番を顎で指した。


「ああ……大丈夫です、二人にも了承を取ってますよ。

 『頭がおかしくなった私が、二人のメイドを背後から襲って気絶させ、その隙にボツリヌス様に食事を与えた』

 という手はずになっています」


 二人は顔を逸らして口笛を吹いておる。

 ……此奴らも、無事では済まないじゃろうに。

 みんな良い奴らじゃのう。

 ……有難いことじゃ。




 まあ、じゃから、絶対食べぬがのう。




 私はまた、首を振った。 



「……どうして……どうしてっ……」



 また、泣くか。

 マー坊は泣き虫よの。

 そういえばマー坊がまともに話す声も最近になって初めて聞いたが、まるで海の中でふわふわしているようで心地良い声じゃ。

 私はマー坊に大丈夫であると言う様に、笑顔を向けた。

 表情筋はかっちかちじゃが、ちゃんと笑えてるかの。



「ぼっ……ぼづりぬず様ぁぁぁ」


「うぅ……聖女様ぁぁぁ……」



 ……ふぁっ!?

 マー坊の後ろのめいどが泣きながら変なことを呟いておる。

 

 聖女……。

 れいぷ目で糞を垂れ流す聖女……。

 それはもはや、ただの汚れ芸人なんじゃがのう。


 ……お、口元に(はえ)が。

 久しぶりの貴重な熱量(かろりー)じゃ。

 もぐもぐ。


###########################################


 さて、牢番は基本的に持ち回り制らしいが、閉じ込められた私にはまだ会っていない者が実は3人おった。


 1人目は、オーダーじゃ。

 ……まあ、奴は来れないじゃろう。

 何故なら、実は私が牢屋に閉じ込められた日からずっと。


 ……真上の部屋から牢屋に向けて、12時間毎に回復魔法を掛けて続けておるからじゃ。

 今も私に向かってかけ続けており、今まで体力が15以下になったことは無い。

 実際問題、相当助かっており、オーダーが魔法を掛け続けて無かったら死んでたかもしれん。

 ……と言うか、お前の方は大丈夫じゃよな、オーダーよ……。



 2人目は、コックじゃ。

 彼奴は多分、調味料の匂いがこびり付いた自分が牢屋に訪れても、絶食中の私の邪魔になるであろうとの配慮かと思われる。

 心配していても、相手のことを思って、逆に会わない。 

 そういう気遣いもあるんじゃの。



 3人目は、テーラーじゃ。

 まあ、これは当たり前じゃの。

 むしろ、私がこれだけ頑張っておるのじゃから、今更自分の罪を認めるとか勘弁して貰いたい。






「……!!……!?」


「!!……。……!!」



 ……ん?

 なんだか、地上との通路である階段の方向が、やけに騒がしいのう。



 最低限の動きで首を傾け、階段の方へ視線を向けると。


 10歳位の少年が階段から降りてきおった。

 髪の毛も目も大炎を思わせる様な燃えるような紅。

 幼さの残った顔に小さな背丈ではあるが、体からは重たい責任を背負った者のみが宿す風格が、微かにではあるが漂っておる。


 少年はお付の爺や(・・)と2、3言言葉を交わし。

 牢屋の中の私を見て一瞬顔を(しか)めるも、躊躇無く此方へ向かってくる。

 私は今、(うんこ)の匂いで凄い事になっておるはずじゃが。

 成程、人の上に立つ器を持つ者の様じゃの。



「貴様が、王家より賜りし壺を破壊した阿呆(あほう)であるところの、トキシン家令嬢だな」



 少年は鷹揚(おうよう)な態度で語りかける。

 ……やっと来おったか、『紅い稲妻』よ。

 稲妻の癖に遅過ぎるぞ、光の速さで来い。


 私は耐断食に使用していた技を全て解除する。

 体が少しずつ熱を取り戻し、頭の(もや)が晴れ、体に活力が(みなぎ)っていく。



「お声掛け頂き恐悦至極に存じます、ストリーⅢ世 国王陛下」


「なっ!?」


 自己紹介もまだであるのに自分が誰だか当てられて、少年は激しく狼狽えておる。

 私はすっかり筋力の落ちた足に精一杯力を込めて立ち上がると。

 鉄格子越しに王に向かい挨拶(かてーしー)を行う。


「トキシン侯爵が三女、ボツリヌス・トキシンめに御座います」


 成る可く優雅に行ったつもりであったが。

 尻にこびり付いた便が挨拶の(たいみんぐ)にぼとぼとと落ちたのはご愛嬌である。

読者(ブックマーク)7名と思っていましたら次の瞬間8名になりました。

有難う御座居ます。

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