第21毒 猛毒姫、言い訳する
前回、ボツリヌス様の首を捻じ切ったら、総合評価が14pt増えました。
評価して頂いた方、ブックマークして頂いた方、有難う御座います。
がんばろ。
流石、有言実行のオーダーじゃ。
主が間違っていると思えば、諫言もするし、首も捻じ切る。
忠臣の鏡であるのう。
いや、言い過ぎた。
忠臣は主の首は捻じ切らんわ。
「今度こそ説明してもらいますよ、ボツリヌス様」
私の頸椎に回復魔法をかけながら、オーダーが私を睨みつける。
何故貴重な技術を削除するのか……と問いたいのじゃろう。
「うむ、説明するとじゃな……
所謂耐性系の技術が、私は怖いのじゃよ」
「怖い……と言いますと?」
「私は精神の痛みも、肉体の痛みも、大事な物じゃと思っておる。
それは自分の身を守るための危険信号であるからじゃ」
生まれつき痛覚を持たない者は、実在する。
痛みが解らない彼らは赤ん坊の時、手の甲で這い這いをしたり首から立ち上がったりして、致命傷を負うこともあるという。
そう、痛みとは、体を守るための信号なのじゃ。
「それに加えて痛みとは、生きる喜びにも繋がる大事な物であるはずじゃ。
痛みなくして得る物なしとも言うしの」
出産妊娠の痛みと喜びは例に出すまでもなく。
運動も学問も、肉体的・精神的に痛みを伴うからこそ、それを乗り越えた先に幸せがある。
「痛みを無くすることは、幸せを無くすることじゃ。
これ程、恐ろしいことは無い……と、私は、思う」
オーダーは思うところがあったのじゃろう、暫らく黙って俯いた後、納得がいったように顔を上げた。
「解りました、そこまでおっしゃるのであれば、耐性系のスキルを消去することに関しては納得します」
ほ。
何とか説得できたの。
まあ、今の話は完全に大嘘、なんじゃがの!
痛みなんて無い方が良いに決まっておろう、常識的に考えて!
私は前世における99年の似非イタコ生活で、苦行耐性と詐称話術と似非魅力に関しては負けないと自負しておる……というか、それ以外には何も無い。
今更どれ程優れた技術があろうとも、自力で何とかするのでそんな物は必要ないのじゃ。
つまり……うむ、本当の理由は……私の意地、かの。
そんな私の思考を中断させるようにオーダーが話しかけた。
「そういうちゃんとした理由があるなら、早く言って下さいよ。
私はてっきり、ボツリヌス様のつまらない意地で貴重なスキルを消去しているかと思ってましたよ」
……完全に、ばれておった。
「……あっはっはー。
そんなはずなかろうにー。
おーだーはばかだなあー」
「……うっふっふー。
そうですよねえー」
私とオーダーは乾いた笑いを浮かべる。
「ところでオーダーよ……
技術消去の理由が私の意地であった場合は、どうするつもりだったのじゃ?」
「それは勿論……
さっきは右回転でしたから、次は左回転の予定でした」
……私の頸椎が、修羅場過ぎる。