第196毒 猛毒姫、鼻血る
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前回までのあらすじ
なにそのダイエット魔法、超欲しい
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どうしてこうなった!?(^ω^)
セルライトの奴が、目の前でやたらきらきらしておる。
立ち上る黄色い光のせいでそう見えるのではない、ただ単に、セルライト本人が美しすぎるのじゃ。
何と言う綺麗なセルライト!
そして何より恐ろしいのは、奴の外見的特徴が、でぶ以外全然変わっていないのに、かっこいいということ。
どういうことかというと、例えば。
綺麗なセルライトの頭は、相変わらずはげ散らかしたままじゃし。
口の中は金歯や虫歯だらけじゃし。
人を不愉快にさせる笑い方などは、そのまんま別に変っていないのじゃ。
なのに、かっこいい!
これだけまいなす要素を詰め込んでいるのに格好良いとか、訳が分からぬ。
多分、魔法とか、すきるとかも使っておらぬじゃろう、意味ないし。
即ちあれが素のセルライトであるいうことか。
まじでか。
……しかも、どうやら昔は、髪の毛が生えていて、金歯や虫歯とかなくて、素敵に笑える公爵だったんじゃろ?
その上勉強家で、魔導士としても大成していて、頭もよく、家柄も最高、と。
……絵にかいたような、王子様じゃあないか。
ええっ。
どうしてああなった!?(^ω^)
「ぶぶぶ」
「?」
横を見ると、オーダーが鼻血を出しておった。
無理もない、此奴の好みは細まっちょ。
すとらいくもすとらいく、どんぴしゃになる。
頭では拒否しても、あふれ出る鼻血を止められぬ。
体は正直じゃ。
……ぬお、いつの間にか私の鼻からも、血が吹き出しておった。
さもありなん、私の趣味はごりごりのまっちょ系なんじゃが、そこから随分外れているにも関わらず、この綺麗なセルライトっぷりには白旗を上げざるを得ない。
女子なら全員鼻血を出して倒れるんじゃあないか?
映像化できないのが残念です。
「に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!
う゛ぞだに゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
声の方向に目を向けると、いつの間にか気絶状態から回復したシャーデンフロイデが、鼻血を出しながら再度倒れこんでいた。
まあ、そうなるじゃろ、普通は……。
これ、長く一緒にいる人程ぎゃっぷによるだめーじで、やられるんじゃろうな……。
はっ!
バトラーは!?
こんな、綺麗なセルライトを見ちゃったら、バトラー出血多量で死んじゃう!!
……と思ったら、バトラーの奴は先程のライオン・サヨナラー戦で気絶したまんまじゃった。
世界で一番、綺麗なセルライトを見たかった人じゃろうに。
たぶん出血多量で死ぬけど、本望じゃろうに。
可哀想過ぎる。
南無南無。
……は!?
そそそ、そういえば!
よく考えたら、女子はもう一人おった!
普段から何気ない振りをしながらも、セルライトにちょっと気があるような仕草が絶えない、しかも何だかんだで付き合いの長い、バイタビッチ・ダブルピース公爵が!
慌ててダブルピース公爵の方向へ目を向けると。
「ふーん」(ホジホジ)
めっちゃ鼻糞ほじっておった。
何故じゃ。
あれっ。
綺麗なセルライトを見て鼻血を出さないなんて、『私の趣味は、オークです!』みたいな奴くらいだと思うぞ、仮にそんな奴がいたとして、じゃけど。
一体何故、あんなにも冷めた目が出来るのか。
謎は深まるばかりじゃ。
「ぶひょひょひょひょひょひょひょひょひょ!
手こずらせおって。
再度あれだけの脂肪を身にまとうのに、どれだけの時間がかかると思っておるのだ、阿呆ストリーめが!」
おっと、綺麗なセルライトが、汚い台詞を吐いておる。
此奴、わざと太っておったのか。
そして、怒っている風じゃが、実際は目をきらきらさせて喜びながらのこの台詞。
つんでれ属性まで完備しておるのか。
何と言う俺様王子様。
ふいっと、ストリーの方を見てみると、めっちゃ驚いた顔をしておった。
死体に吃驚されるとか、相当だと思うんじゃが。
いや、ストリー目線からすれば、今まで魔王と戦っておったと思っていたら、実は旧友だった、といったところなのかもしれぬ。
ぞんびだけど、びびるじゃろう。
……ぞんびだけど、びびるじゃろうか?
「よし、ちょうどいい。
せっかくなので、貴様には、新魔法のサンドバックになって貰うぞ」
綺麗なセルライトの奴、無茶を言い出しおる。
「『冥代の風』!」
勇者の周りを、突然赤い熱風が吹き荒れた。
お、おお、おおおお。
雷が……燃え上がっておる。
周囲の空気を丸ごと変化させたのじゃろう、体を雷化していようが、やばいものはやばい。
……それにしても、これ、以前、時魔法使いのトキが使っていた、『周囲の空気を昔の物に変える』魔法じゃよな?
本人は風魔法と思っていそうじゃが、たぶん違う気がする。
どこまで魔法の深淵に近づいておるんじゃ。
セルライトに時魔法とか、なんとかに刃物じゃろ、完全に。
「まだまだ死んでくれるなよ?
『縮退星』!」
勇者は、燃え上がっている状態から一転、くしゃ、と、ごるふぼーるくらいの大きさになった。
こらぷさー、といったら『ぶらっくほーる』になる前の自壊していく星のことか。
と言うことは恐らく圧力を操る魔法じゃが、風魔法とも、嵐魔法とも似ていて否なる、新たな魔法だと思われる。
多分本人は風魔法か嵐魔法と思ってそうじゃが。
これは流石の勇者も厳しいじゃろ……と思っておったのじゃが。
ぐぐ……ぐぐぐ……。
ごるふぼーるが、圧力に抗うかのようにぐにぐにと形を変えておる。
流石は雷化。
まだ生きておるのか!
死体じゃけど。
「よしよし、良いぞ、その調子で頑張れ!
『真空』!」
ぴちゅん!
勇者は、なにかのげーむのきゃらくたーみたいに。
ぴちゅった。