第190毒 デカエース公爵、周囲を確認する
皆様お久しぶりでございます~。
大分エタッて申し訳ありません。
あ、あと、こっそりと更新した189毒を見てない方も多いと思いますので、宜しければそちらから先に確認してくださいね~。
東北東からの風、速度3.4m打ち颪ろし。
私……オンヲアダ・デカエース公爵は自然に吹く風と地熱・気圧を読みながら風魔法とともに薬を散布する。
同時にお祖父様……オンヲオン・デカエース……であった者の散布する薬品を中和し、更に相手の風魔法もねじ曲げる。
なるほど、確かに、流石はお祖父様であった者。
恐ろしい風魔法の魔力・操作力だ。
しかし、圧倒的な力で強引に薬をばらまこうとしているものの、気候の機微まで読んだ私の散布には、全く及ばない。
あらゆる力で劣っているはずの私が、薬師の積み重ねられた知識と言う一点のみで、お祖父様であった者を圧倒しているのだ。
そして、その積み重ねられた茫漠たる知識の土台を作った者こそ、我が祖父オンヲオン・デカエースと、父アダヲオン・デカエースであった。
100年前、薬師と言えば毒殺しかできない日陰の存在であった。
知識は個々人ごとで独占され、『薬学は、終わっている学問』とさえ揶揄された。
その固定観念を破壊したのが天才オンヲオン・デカエースである。
勇者チームの一員として魔族を撃退することで薬学の可能性を拓いただけでもその偉業は永劫讃えられてしかるべきものであったが。
彼はなんと、自分の発見した10万を越えるレシピその全てを一般に公開したのだ。
薬学の歴史は一変し、魔法に勝るとも劣らない力を秘めた分野であることを世に知らしめたのだ。
更に父アダヲオン・デカエースは風読み・気圧等の気候学や、ある一定の条件を満たしたものにしか効かない薬剤の開発を行った。
同時に薬師ギルドのシステムを構築し、薬師がオリジナルレシピをどんどん公開したくなるような現状を作り上げた。
今、かの天才であった者を追い込んでいるのは、私ではない。
私の後ろにある、天才が積み上げてきた多くの功績と、その上に乗った数多の薬師達なのだ。
私は、お祖父様へ対する誇らしさと、同時にお祖父様であった者へのこの仕打ちに対する怒りで、涙が零れ落ちる。
「……落ち着け、『薬師は冷静たれ』」
配合間違いや気候の読み間違いは、自身のみならずそれ以外の味方の全滅すら起こしかねない。
私は気を落ち着けるため、お祖父様であった者へ注意を払いながら、改めて辺りを見渡す。
画竜点睛と魔貴族2匹との闘いは、7:3程度で此方が不利のようだ。
戦闘補助の薬を撒きたいが、魔貴族2匹は薬どころか魔法の補助すら受けたことが無さそうな奴等だ。
こう言ったメンツは、変に戦闘補助をすると違和感のせいでいつもの力を十全に発揮できない。
仕方ないので、どこまで効くが解らないが画竜点睛への腐敗薬のみの散布としよう。
続いて大惨寺一殺軍とピッグテヰル公爵軍+魔族軍に目を向ける。
相変わらずワケがわからない。
恐らく100戦やったら100戦とも数秒で大惨寺一殺軍の勝利で決着する程の力量差なのに、未だに戦線が崩壊していない。
私は生者のみに効果を発揮する戦闘補助薬と、死者にのみ効果を発揮する能力低下薬を大量に散布した。
続いて元勇者対ピッグテヰル公爵の戦いへ視線を移す。
……まさかセルライト・ピッグテヰル公爵が、お祖父様の同胞であるメタボル公爵だったとは。
いや、それどころかその息子……と思っていたハチキレン・ピッグテヰルも同一人物だったとは。
私が見ていた幼い頃のセルライトは、幻影によるものか何かだったのだろう。
薬剤散布を行いたいところではあるが、何やら因縁の対決のようであるし、ピッグテヰル公爵の怒りを買ったらお尻の穴がいくつあっても足りはしない。
スルーしておこう。
そして、パラノイア・コロスキー対サイコパス・コロスキーの闘いは……お互い土魔法を練り込んだ土を鎧の一部に変えて魔装形態を取っている。
激しく剣で打ち合っているが……あのサイコパス・コロスキーが、防戦一方、か……。
当たり前だが、パラノイア・コロスキーは強大なのであろう。
私はある種の土魔法下でのみ土の硬さが強くなる薬品を撒いた。
「サイコパス・コロスキー公爵!
薬剤『歪克土』、撒いておいたぞ!」
「……!! 了解しました、感謝します!!」
もちろんサイコパス・コロスキーにはどの魔法で土が強化されるのか事前に教えてある。
なにしろ、彼専用の薬と言っても良いくらいの薬品だからな。
更に、アヘガヲ・ダブルピース対バイタビッチ・ダブルピースの戦闘は……此方もやはりというか、バイタビッチ・ダブルピースが押されている。
いや、しかしよく見ると……バイタビッチの美しい顔には、たくさんの傷がついてはいるが、鎧には一切傷がない。
対するアヘガヲには、顔に傷はないものの、鎧はギリギリ18禁手前なほど破壊されている。なんとか胸と股間に布切れが辛うじて残っているくらいだ。
……これは、勝っているのか?
ここで私は、以前バイタビッチが言っていた言葉を思い出す。
『姫騎士は、顔面に傷を負ってはならない!
負ったとしても1つか2つだ。
そして鎧は、ギリギリまで破壊されなくてはならない!
それこそが、姫騎士に求められたロマンだからだ!』
思い返しても、よく解らないロマンだな。
……。
ヤバい! つまり、ボロ負けじゃないか!
私は大急ぎで生者にのみ効果のある精力増強剤を散布した。
「う、ウオオオオ!」
バイタビッチは獣のような声を上げると、先程までとは比べ物にならないほどのスピードでアヘガヲに突進していった。
そして、最後はライオン・サヨナラー対ピッグテヰルの部下2名か。
……ダメだ、こちらもボコボコにやられている。
よし、薬剤を……。
……ふと、ここで、私は気付いた。
お祖父様であった者の薬剤の一部が風に舞い、敵陣地に届いているのだ。
驚いて、改めてお祖父様であった者を見る。
彼は、不完全ながらも、自然に吹く風と地熱・気圧を読みながら風魔法とともに薬を散布していた。
同時に私の散布する薬品を中和し、更に私の風魔法もねじ曲げている。
……進化しているのだ。
……このゾンビ達は、魂が宿らない、生前の条件反射で動いているはずである。
つまり、お祖父様であった者は……いや、お祖父様は、生前に。
条件反射のレベルで学習と実践を行っていたことになる。
天才が積み上げてきた多くの功績と、その上に乗った数多の薬師達を。
この場で越えようと言うのか……?
……化け物め……!!
「くそ、お祖父様め……どこまで貴方を誇りに思わせれば気が済むのだ……」
私は改めて、お祖父様であった者へと向き合う。
思わず声が震えたのは、喜びによるものだけでは、勿論無かった。
現在のまとめ
大惨寺一殺 対 ぼつりん&オーダー
画竜点睛 対 ベルゼバブ&剛力殺
大惨寺ゾンビ軍 対 ピッグテヰル軍&ニンニク&いけてるめんず
オンヲオン 対 オンヲアダ
アヘガヲ 対 バイタビッチ
パラノイア 対 サイコパス
ライオン 対 バトラー&シャーデンフロイデ
ストリー一世 対 ピッグテヰル
分かりにくいね(*´・ω・`)