第188毒 剛力殺、共闘する
「くくく……ふははははははあ!」
目の前には魔王をも凌駕するとも言われた最強の龍王の、しかも全盛期。
満身創痍の、此の如何ともし難い状況で哄笑できるのは、元来よりの性格に依るものなのか、それとも。
「剛力様……笑ってる暇があったら、攻撃してくださいよ……」
この、幼いながらに頼もしい共闘者に依るものなのか。
「済まんな、童よ。
いろいろと、面白くてな」
まさか此の我……“聳え立つ奈落”こと剛力殺とも有ろう者が、共闘することに為ろうとは。
数か月前の自分に『恥を知れ』とでも言われるだろうか。
面白い、自分が不甲斐無いにも関わらず、面白いぞ。
其れも此れも、ボツリヌス……彼の阿呆のせいだ。
力無く、姑息で、卑怯。
にも拘らず、彼の金剛石の様な精神力。
倶園薬踏台を超える精神力を持った者など居るかと思っていたが。
ボツリヌスに比ぶれば、倶園薬踏台など幼児の其れに等しい。
嗚呼、最早疑う可くも無く。
ボツリヌスは、精神力で、北真倉を捻じ伏せたのだ。
悔しいが、惚れたわ。
彼の、押せば壊れる『最強』は、壊しては為らん。
我の美徳など、取り敢えず他所に放ってしまおう。
此の龍王は、我と童で、確実に葬らねば為らん。
「GYYYYYYYYY!!」
吼える龍王は、既に我と童で幾太刀も与えているにも関わらず、堪えている様には、全く見えない。
「そ、それにしても、硬すぎますね……何か、弱点とか無いんですか?」
「……ふむ、弱点というか……奴の喉元に、他と流れの違う鱗が有ろう。
逆鱗と言ってな。
彼の下には血管やら呼吸器やらの中枢が在る」
「は、早く言ってくださいよ!」
ん?
どうやら勘違いしている様だな。
「逆鱗は、龍の体で最も硬い部分だぞ?
我が老いた龍王を屠った時も、結局逆鱗は破壊せしめなんだからな」
「……」
童は、何やら考え込んで居る。
「剛力殺、共闘ではアレに勝てません。
協力しましょう」
「……ふむ?」
童の言葉の意味を汲むよう努力するが、見当も付かぬ。
「龍王の逆鱗……私による音速の突貫でも、破壊は困難でしょう」
「であるな」
「そして、鬼神の一撃でも、破壊は困難です」
「……悔しいが、であるな」
「ならば」
童は、真っ直ぐ我を見た。
我と対等と思っている若さが眩しいわ。
「音速による、鬼神の一撃ならば、どうでしょうか」
ふ。
ふふふ。
ふははははははあ!
「終始、個を磨き続けた我には無い発想だ。
面白い、協力、してやる」
成る程、彼の『最強』の生き様を見ているので在れば、血の繋がりなど無くとも、関係無かろう。
蛙の子は蛙であり、鬼の子は鬼となり、そして。
『最強』の子は、『最強』、と言う訳か。