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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
日常編
18/205

第18毒 猛毒姫、移動する

 トキシン侯爵家より徒歩5分の森の中に、ひっそりと佇む迷彩柄の掘立(ほったて)小屋があった。

 周囲に溶け込んだ小屋は、正確に場所が解らなければまず発見できないじゃろう。

 内部は4畳半を3つくっつけた広さとなっており、中央の4畳半のみ通常の部屋のように板が敷き詰められておった。

 右手の4畳半は地面がむき出しになっており、部屋の中で土魔法を使っても大丈夫なように出来ておる。

 同様に、左手の4畳半は小さな遊泳地(ぷーる)の様になっており、部屋の壁を動かすことで水を貯めることも小屋の外に排泄することも出来る仕組みとなっておった。

 もちろん、水魔法が使いやすいようにと言う配慮じゃ。

 私が屑魔石を買ったこと、私の魔力量が10しかないことなどから、小屋の中で魔法の練習をすると推測したアコギの頭の良さには恐れ入る。


「外付けで汲み取り式のトイレと簡単な浴槽も御座います。

 私は土魔法が使えますので、トイレは月一で対処させて頂きましょう」


「素晴らしいぞ、アコギよ。

 貴様にかかれば私の望む事など透けて見えるのじゃなあ」


「そんなことは御座いません。

 過分なご評価、有難う御座います、ボツリヌス様」


 アコギは慇懃(いんぎん)に一礼する。


「それでアコギよ、後ろの者は誰じゃ」


「ええ。

 彼はアコギ商店で働いている、信用でき、かつ口の堅い者です。

 名をブコツと言います。

 今後、屑魔石に関しても彼に運んで貰う予定です」


 ブコツと紹介された2m近い大男は私に一瞥をくれると言葉も喋らず頭を下げた。


「ところでボツリヌス様、お願いがあるのですが」


「奇遇じゃのう、私もお願いがあるのじゃが」


二人は申し合わせたように白々しい会話を続ける。


「侯爵領の目と鼻の先にこんな小屋を建てたなんて知られたら、私の首が飛びます」


「侯爵令嬢が護衛も立てず、こんな小屋に入り浸っているなんて知られたら、拉致やら何やら面倒臭くて敵わん」


「「どうかこのことは、くれぐれも御内密に」」


二人で声を合わせた後、お互いがちらりとブコツへ目を移す。


「……無論だ」


 その後なにか言葉が続くものとしばらく待っていたが、ブコツはそれ以上何も言わなかった。

 此奴、ちょいと武骨過ぎやしないか……いや、これくらいが良いのかも知れぬ。


「ところで屑魔石20000個をどうやって運ぶつもりじゃ?

 馬車が3~4台は必要になると思うが……」


「それは心配に及びません。

 毎月1回、トキシン公爵邸へ魔石販売と屑魔石回収を行っております。

 その際大きな商いがあっても良いように、馬車2台は必ずつけておりますので。

 魔石販売のルートが増えたとでも話をすれば、3~4台の馬車が出入りしても納得して貰えるでしょう」


私はアコギと固く握手をする。


「感謝するぞアコギ、貴様を信用して良かった」


「有難う御座います。

 借りたお金も、商店を大きくして必ず何倍にもしてお返しいたします」


「期待せんで待っておるぞ」


 二人を見送ると、13畳半の小屋には私と大量の屑魔石が残されておった。


「さてと、では始めるとするかのう」


 私は右手に魔石を握って左手を前に出す。


「『生きとし生ける者の証明たる内熱よ!

 生きとし生ける者に降り注ぐ外熱よ!

 今こそその放散されし熱量をここに導け!

 熱玉(ヒートボール)』!」


 魔法を唱えると。

 魔石から吸収した魔力が右手を通り左手に伝わっていくのが解る。

 『熱玉(ヒートボール)』が発動したのじゃ。

 自分は魔力を消費しないため、全く疲れぬ。

 調子に乗って30分ほど魔法を唱え続けると、魔石は粉々に砕け散って消えてしまった。

 魔石内の魔力を使い切ったようじゃ。

 ようし、この調子でどんどん使っていくぞ!!


 振り返ると、残り19999個の魔石と目が合った。


 う……うむ……使い切れるかのう、これ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 身体を単に導体として魔力が流れていくのであれば、 魔石の残存量によってはもっと魔力消費量の大きい魔法も使えるのでしょうか? もしくは本人の基準魔力量以上を扱おうとすると主人公の身体がボトルネ…
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