第175毒 猛毒姫、庇われる
卯月リリト様よりレビューを頂きました!
嬉しいなあもう!
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前回のあらすじ
ロシュツきょうの人がぼつりんの前に登場しました。
一殺「ほらほらほらー」
ぼつりん「きゃー!」
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「そこの、ボツリヌスちゃん?
邪魔だから、殺しても良~い?」
え。
駄目じゃよ?
「く、詳しく、聞こうか」
セルライトの奴が、嬉しそうに会話を続ける。
きょ、拒否しておくれ……。
……はっ。
よく考えたらここにいる中で、私を助けてくれそうな奴が誰もおらぬ!
セルライト陣も、ニンニク陣も、私の敵となってしまっておる!
……あ、剛力がおったの。
あと、うんこ好き。
「んー。
ピッグテヰルはんは、ロシュツ教について、どのくらいしってはります~?」
相変わらずのにこにこっぷりで、いちころさんは笑って居る。
「大体、知っている」
「うへへ~、流石はピッグテヰルはん」
いちころさんは嬉しそうに拍手をすると、話を続けた。
「要は末法の世になった人間界を救うアンゴルモア大権現。
それが私だと、最近気づいたんですわ~」
「……ふむ、な、なるほど、な」
……?
あ、あんごるもあ?
あんごるもあって、恐怖の大王が蘇らせる奴じゃなかったっけ。
仏さまではなかったと思うのじゃが。
……多分、転生者の情報がめちゃくちゃにかき混ざった結果なんじゃろう。
それにしても、あんごるもあの奴、大権現様にまでなって、何をするつもりなんじゃろう。
元ねたじゃと、世界を滅ぼしたりする奴じゃったが。
「あ、アンゴルモア大権現と言えば。
じ、人類を殲滅させ、真のロシュツ教徒のみを蘇らせる破壊の神、だったな」
ほう。
それは凄い。
まさか、そのまんまじゃったとは。
ロシュツ教、大分危険な宗教じゃのう。
「そそ。
この度、北真倉ちゃんが無事死亡したので。
やっぱりわたくしがアンゴルモア大権現だと理解した次第でありんす」
「き、北真倉は、邪魔だったか」
「魔貴族の13番目ではあるけれど、実際は1番厄介な相手だと思うけどねい~」
セルライトは、笑いながら頷いておる。
北真倉のことも知っておるようじゃ。
まあ、当然か。
「な、なぜ、ボツリヌスを殺そうとする」
「ああ、わたくし、別に強い奴は怖くないんですわ。
そこの鬼のあんちゃんも、蠅のあんちゃんも。
ただ強いだけ。
ただ速いだけ」
「な、なるほど。
わけのわからない強さ。
ボツリヌスという不確定要素を取り除きたい、と言うことか」
「さっすがー!
話が早いなーピッグテヰルはん!!」
あっはっは、と笑いあう坊主とセルライト。
横で剛力とうんこ好きが怒った顔をしておる。
……なんとなく、話が読めたぞ。
いちころさんは、今から人間界を攻め滅ぼして、あんごるもあ大権現の言い伝えを実現させるつもりなのじゃ。
それを邪魔する敵……例えば、力が強いであるとか、速さが速いであるとか。
そんな奴らは、どうでも良い、と言って居る。
……多分、そんな奴には負けない、ということなんじゃろう。
そして、逆に。
私のように、体力も魔力も無いくせに、何故か魔貴族になったようないれぎゅらーをどうにかしたい、といったところなのじゃろう。
なんとも、恐ろしい会話じゃ。
セルライトは、どうでるじゃろう。
自領の安寧のために、私を差し出すじゃろうか。
「こ、断る。
ボツリヌスは、わ、吾輩の、穴奴隷になるのだ」
流石はセルライト。
良い意味でも悪い意味でも、ぶれないのう。
セルライトの発言に、いちころさんは笑いを止めた。
「うーむ、そかそかー。
それは残念。
でも、まあ、関係ないかなあ」
いちころさんは、私に向かって、でこぴんのような手の形を作った。
……?
いちころさんの中指が、ぴんと、弾かれて。
ギャリリリリリッリリイッリ!
私の前で、何故か火花が散った。
なな、なんじゃ!?
お、恐らく、いちころさんが私を殺すために何かを弾いたと思われる。
し、しかし、ばりあの様な何かがそれを阻んだ……。
「い、いきなり何をするんですか!」
「おいおい、まったく、そんな早いんじゃあ、女の子に愛想をつかされちゃうよ?」
「そいつぁ、とろけないぜぇ、小僧ちゃん」
驚愕する私を守るかの様に。
酒池肉林のめんばーが立ちはだかったのじゃった。
え、こ、此奴ら。
さっきまで、私を見限って……あれ?
……ああ、そうか。
多分、私と剛力がセルライトと話をしている時に、ニンニクと話をしておったのじゃろう。
私がピッグテイル領に帰りやすいように、冷たく当たるように、とか、そんな話をしておったのか。
なんと恥ずかしい。
周囲がみんな敵だと思って居ったが。
周囲はみんな、私の味方じゃった。
「あれ。
聞き耳を立てた限りでは、こんなはずじゃあなかったんだけどなー」
いちころさんは、頭を掻く。
「えーと。
改めて聞くけど。
わたくしと、戦うと言うことですかねぃ?
……『嗤う頭蓋骨』ことこの、『大山寺一殺』に、牙を剥く、と言うことで。
良いのかねぃ?」
ここに来て、辺りの気温が急激に下がった。
魔貴族のぷれっしゃーを前にして。
「ま、まったく五月蝿い死体だ。
頭蓋骨が、喋るな」
セルライトが、嗤う。
そして、それに呼応するかの様に。
「んー。
思ってたのと違うけど。
ま、いっか。
焦らない焦らない。
ひとごろし、ひとごろし」
大山寺一殺が、嗤った。
というわけで魔貴族編、終了です。
続きまして、誰も望まない閑話。
はっじまっるよ~!