第174毒 猛毒姫、四面楚歌る
『豚公爵と猛毒姫』、レビューを頂きました!
しかも御2方からです!
もはや大作家ですね(増長)。
猪子馬七様、芥子庵様、この度はレビュー頂き、誠にありがとうございました~!
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前回のあらすじ
セルライト・ピッグテヰル公爵とニンニクによるぼつりんの奪い合いが始まったよ!
ぼつりん「私のために、争わないで!」
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「「「「あっ」」」」
思わず声を上げたのは、もちろん魔族側の皆様じゃ。
そういえば私、トレントにぼこぼこにされたんじゃった。
流石に肉塊にまでなれば、敗北だろうと評価されたのじゃろう。
……誰に評価されたのかは良くわからぬが。
NiOさんかな?
ということは、トレント……世界樹の奴が魔貴族になったということか。
鑑定できなかったから気づかなかったぞ。
……まあ、奴の場合は今さら13魔貴族なんて肩書はいらぬじゃろう。
もうすでに、唯一無二……じゃあなかった、唯二無三の存在じゃからの。
そんなことを、ぽつぽつと考えておると、ニンニクがセルライトに向かって声をかけた。
「……公爵、相談があるんだけど」
「……」
「それ、いらないから引き取ってくれないかな?」
ニンニクが私を指さすと、冷たい言葉を放った。
先ほどまでとは大違いじゃ。
「い、いらん。
ど、どうせ、戦闘後に接収するから、な」
セルライトのやつも、冷たい言葉を放つ。
あれっ。
先ほどまで2人の男が私を求めて争っていたというのに。
熱い手の平返しじゃった。
「そ、そんな、唐突過ぎるぞ!」
「え、誰この人怖い」
「いつまでご主人様面してるのかなあ?」
「(カーッ)とろけるようだよ子猫ちゃん(ペッ)」
酒池肉林のめんばーからもそんな言葉を浴びせられる。
こ、これが魔貴族から落ちるということなのか!
まさかここにいる全員が私の敵に回るとは!
ここは口八丁でなんとかどちらかの陣営に入れてもらえなくては、命が無い……!
そんなことを考えていると。
「に、ニンニク様!」
魔貴族宅に住む、魔族の1人が飛び込んできた。
「なに?
いま、忙しいんだけど」
「ま、魔貴族様がいらっしゃいました!
……大山寺 一殺様です!!」
大山寺、とな?
どこかで聞いたような……あ、あれか!
魔貴族の中で私以外唯一の人種、じゃったか。
いや、もう私は魔貴族ではないんじゃが。
「……困ったなあ。
今来客中なんだけど。
魔貴族様ともなると、断るわけにもいかないし……」
「なんでも、ボツリヌス様、ニンニク様。
そして、セルライト様に、お話があるとか!」
「ぶひょ?」
セルライトが間抜けな声を上げた。
確かに、(元)魔貴族の私や、ニンニクに用事というならわかるが。
セルライトに用事って、意味が分からぬぞ。
一体、なんじゃ?
「だってさ。
どうする、セルライト公爵?」
「ふ、ふむ。
面白い、通せ」
セルライトの奴、笑いながら余裕ぶっておるが。
訳が分からず超高速で頭を回転させているのが分かった。
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「やあやあ皆々様お揃いで~どもども~!」
やってきたのは、禿坊主じゃった。
よれよれになった袈裟を着て、背中に巨大な桶を背負っておる。
……というかこれ、先ほど東から歩いてきていた坊主じゃな。
「うへへ~突然ごみんに~。
みなさん初めまして、わたくし、大山寺一殺とゆいます。
気軽に、『イチコロさ~ん』って呼んでねい」
……なんだか、軽い感じじゃのう。
武国のハヤサを思い出す。
「イチコロさんは、武国出身者かのう」
思わず聞いてしまった。
イチコロさんは、笑いながら答える。
「うっはー、バレバレかな~。
わたくし、武国出身の輩でございます。
なんでバレるのかな~。
自分では普通にしているつもりなんだけどねい」
うん。
ばればれじゃ。
「き、貴様は、ろ、『ロシュツ教』の坊主、か」
「お、おお、ビンゴー!」
ばきゅーん、とイチコロさんはセルライトに人差し指を向け、拳銃で撃ったようなポーズをする。
ロシュツ教の坊主、か。
そういえば、宗教については今まで説明していなかったのう。
魔界は基本的に魔王を頂点とする、ある意味宗教じみた法が存在するが。
人間界には、大きく国に分けて3つの大宗教が存在する。
ペンギン皇国と、その派生であるサーモン王国で支持される、神の子ヘンシュウを一神教とするヘンシュウ教。
前世で例えると、キリスト教みたいな感じじゃ。
バッタ武国で支持される、ありのままの自分を大事にする多神教のロシュツ教。
前世で言えば、仏教かのう。
そして。
ムカシヤンマ帝国で支持される、妖精や獣族に至るまで全てを愛するシキジョウを頂点とした八百万の神によるシキジョウ教。
前世で例えると、神道が近いか。
「そして、最後に。
邪神ボツリヌスを崇め奉る土着の邪教、ボツリヌス教……」
「な、無いからの!」
オーダーが最後にボツリヌス教をぶち込んできた。
や、やめい!
ボツリヌス教を、3大宗教と同じれべるで語るでないぞ!
て、ていうか、な、なぜ私の心の中を読まれたのじゃ!?
オーダーやばい。
「……売僧か」
「あーちがうちがう!
ちゃんと私にも言い分があるから、聞~てほし~なあ~」
げたげた笑うイチコロさん。
調子が狂うのう。
しかし、悪い奴ではなさそう。
少なくとも、話は通じそうじゃ。
「……貴様の言い分など、ど、どうでもいい。
……そ、それで。
用事とは、な、なんだ」
「あ~、公爵はん、それなそれな!
実は実は~」
大山寺一殺は、にこにこ笑いながら、私を指さして叫ぶ。
「そこの、ボツリヌスちゃん?
邪魔だから、殺しても良~い?」
前言撤回。
流石は魔貴族、気狂いじゃったか。